第17話 報告
「──君、すまないがヨハネに繋いでくれ。マサムネが来たと言えば分かるはずだ」
俺はギルドに着くなり、早速受け付けに向かった。
こうしてヨハネに会うのも、一度や二度ではない。
職員も、俺がそう言うと「はいマサムネ様ですね、少々お待ちください」っと、通路の奥へと消えて行く。
「マサムネさん、ギルドマスターとはどんな仲なんですか? 今思えば、マスター直々に指名される時点でタダ者じゃないと気付くべきできでした」
「タダ者じゃないって、俺は別に大した者じゃ……ってまぁ良い。アイツとはただの昔馴染みだよ」
コアの残っているダンジョンでは、動く際にどのパーティーがどの辺りで採取、素材の収集、採掘作業をしているかなどを、担当と事前に話し、情報交換する決まりとなっている。
まぁ、俺達みたいに攻略をメインとしてきた者にはあまり関係なく聞こえるかもしれないが、それでも発見された魔物の種類、特性知っておくだけでも、準備する装備や道具も変わる。
「昔馴染みですか? なんか、また謎が一つ増えましたね……」
「いや、謎と言うほどのものでは──」
そして、ヨハネがこの町のマスターである理由は言うまでもないだろう。
彼が、ひとつ目のダンジョン攻略者の担当であり、その手腕と見る目を買われたからである。
まぁ事実、彼の人を見る目と発想は確かだ。
彼がマスターの任に着いてからは、ギルドに新たに制度が追加された。
コアの存在するダンジョンは、ギルドで資格を取ったものだけにする……っと。
それにより、死亡者数が激変したのである。
「──マサムネ様、ヨハネ様とご連絡が取れました。奥に通すようにと承っております」
んっ、サクラと話しているうちに、職員が帰ってきてたようだ。
「あぁ、分かった案内してくれ」
彼の後に着いて、カウンター脇の職員通路を進む。
通路の突き当たりまで進むと、職員はそこにある扉を開き、俺達を招き入れた。
「──やぁーお帰り、マサムネ。お勤めご苦労様」
書類の山に埋もれかけている机で、ヨハネは仕事をしていたようだ。
俺はその対面に当たるソファーに腰をかけた。
「よく言う、全部貴様が事の発端だろうに……危うく死ぬところだったぞ?」
ヨハネは「それすまない」と笑いながら、立ちっぱなしのサクラに座るよう、席を進めた。
おい、ここで無くてもいいだろ……。ヨハネ、何だその笑顔は!
出会った頃はさほど気にはしていなかったが、サクラにも多少なり緊張が見える。
その為なのかは知らないが、彼女はわざわざ、俺の隣に腰をかけたのだ。
「まぁいいか……。ヨハネ、聞きたいことがあるんだが……」
「ロキ少年の事かい? 大丈夫。今朝方無事にダンジョンから出てきたよ。その事について、君から報告を受けたいと思っていたんだ」
話が早くて助かる。
そうか、坊主は無事なのか……。これは店番をしているシャルには、良い土産話になりそうだ。
そんなことを思いつつも、俺はヨハネに今回の出来事を報告した──。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「──ふむ……二層でそんな事が」
一通り説明を終えると、サクラは「あのぉー」っと、控えめに手を上げて見せる。
「なんだい、サクラ君?」
「……ロキ君はその、ダンジョン内で私達を見殺しにしようとしました。もしかして、何かの罪に問われたりするのかな……っと。」
なるほど。確かに坊主は、怪我人や俺達を残して敵前逃亡を行った。
「いや、彼の行為を罪に問うことはないよ」
「そう……なんですか」
ほっしたような、そして複雑そうな顔をサクラは見せる。
まぁ、気持ちは分からなくもないがな?
「それはパーティー内の問題だからな。ただ、その事は噂にはなるだろうな。そんな坊主と、今後パーティーを組みたがる奴は居ると思うか?」
「いえ……私ならごめんね……」
「そう言うことだ。今回の一件で、彼が生きにくくなったのは間違いはないだろうな」
俺のサクラへの説明に、ヨハネは浮かない顔を見せ手に持ったペンで机を鳴らす。
「マサムネ、その事なんだけど。実は彼は、キルケーに保護されてダンジョンを出たらしい、そして今は一緒に行動を……」
「──なに、キルが一緒なのか!!」
俺は驚き、その場を立ち上がった。
まさか、その名をこんなタイミングで聞くことになろうとは、思いもしなかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます