第11話 魔剣アルマス

「──サクラ、聞こえるか!」


 ゴーレムとの交戦中の為、こちらに振り返る事の出来ない彼女は「なに!」っと一言だけ返事をした。


「いいか、そのままで良く聞け! 今から、俺がそいつを倒せる──起死回生きしかいせいの一振りを生む!」


 彼女は驚いたのか……もしくは何かしらの考えがあってだろうか? 一瞬だが足が止まってしまう。


 ──って、そのままでと言っただろ!?


 そしてそれを見たゴーレムは、手に持つ剣を振り落とした!

 サクラはそれを間一髪で回避し、奴の体を蹴り、宙を舞う。

 そして、着地と共にこちらを向いた──。


「──そんな事、本当に出来るの!?」

「大丈夫だ、死にたくなければ俺を信じろ!」


 俺が彼女の立場なら、信じれるわけもないか……。しかし、これは断言できる。


 強大な魔物だろうと、刃をまともに突き立てることができるのなら、間違いなく倒せる。それは経験済みだからな。


 それには、大きなリスクを抱えての話になるが……。でも、それを説明する時間は今は無いだろう。


「使うにあたって、これだけは約束してくれ! その刃を、なるべく早く奴に突き立て……すぐさまそれから手を離して欲しい!」

「…………」


 彼女黙ったまま、よろけていた目の前にいる化け物を睨み付ける。


 そりゃ、言っている意味も分からないし胡散臭いよな? 信じられないのも当然の事で……。

 

「──わかったわマサムネさん……。眉唾物の話だけど、私は心から貴方を信頼する。として!」


 俺は、彼女のまさかの答えに驚かされた。拒否される……そんな風に思ったのにな。


 危機的状況に関わらず、俺の胸は高鳴った。

 こんなやり取りも懐かしい。昔、同じ様に俺を信じてくれた仲間を思い出す。


「なら俺も、結果として期待に応えよう! 君が心から信用出来るとして!」


 サクラはニコリと微笑み、ゴーレムに向け突撃をした。


「──言っておくけど、時間稼ぎはあまりもたないわよ!?」

「あぁ、そんなには待たせないさ──」


 ──必死に時間稼ぎをしてくれている彼女の為にも、一刻も早く取りかかるとしよう。


 “戦う者”が、自身の身体能力を底上げして戦える才を持つように。

 “祈る者”が、魔力を駆使し、魔法と呼ばれる奇跡を公使出来るように。

 両方に属さぬ“作る者”にも、人知れず何かしらの“才能アビリティー”を持つ者が存在する。


 敵は土塊つちくれの化け物。炎は効果的ではない……よし──!

 

「──アビリティー発動!」


 俺は声を上げ、足元に一振りのロングソードを突き立てた。

 すると、俺の周り囲むよう魔法陣が現れる。

 

「精製を開始する!」

 

 思い描け……理想を追い求めろ──。


 『──今から打つは、万物全ての時を止める“氷”。絶対零度の一振り。

 形状は、一突きで相手を死に至らせる刺突剣レイピア


 手に持った魔石を、剣に打ち付けた。するとそれは、衝突するのではなく、まるで剣の中に飲み込まれていく様に消えていく。


 次々と剣に魔石を与えると突如、目が開けれぬ程眩しく──青白い発光を始めた。


『熱し……折り返し。熱し折り返す……何度も何度も繰り返して──』


 抽象的な思いを、イメージとして想像した……すると眩い光の中、剣がその姿を徐々に変えていく。

 

『このままでは、奴には刺さらない。先端は細く鋭く、刃は丈夫に……』


 曖昧さを回避すべく、目的に応じさらに明確にイメージをする。

 体から力が抜ける感覚と、冷えていく空気に身を震わせる。


 いつしか剣のシルエットは、俺が思い描いた、切っ先が細いレイピアへと姿を変えていた。

 

「さぁ、我の前にその姿を現せ。そしてその力を見せつけろ! 魔剣アルマス!」


 光は消えると、そこには先程まで存在したロングソードではない……氷で出来たかの様な、何とも言い難い神秘的なレイピアが地面に刺さっていた。


 俺は地面から、その氷のように冷たくとぎすまされた刃を引き抜く。


「──サクラ、待たせた!」


 俺は魔剣を逆手に、前線のサクラに向かい走り出した。

 いつこれが牙を剥くの分からない……一刻も早く彼女の元へ!!


 そんな俺に気付いたのだろう。彼女はゴーレムの攻撃を掻い潜り、その隙をいてその場を離れた。


「マサムネさん──!」


 そして俺の手から、伸ばした彼女手に、今生み出したばかりの一振りの希望が受け渡された。









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