第7話 扉
休息と準備を終えた俺達は、早速第二層を目指し動き始めた。
「こ、これはまた、とてつもなくデカイな!」
すると先頭を歩く坊主から、驚きの声が上がったのだ。
彼の目の前には、金属製の巨大な扉が俺達の道を塞いでいた。
「鍵がついてる……行き止まりなの?」
確かに、扉があろうと鍵が掛かっていれば、行き止まりには違いない。
俺は、施錠の確認の為に扉を押そうとする、そんなサクラの疑問に答えることにした。
「いや、扉があるんだ。鍵が掛かっていても、それを開ければ済むだけさ。……少年、預かっているよな?」
坊主の顔を見つめると、ハッとした顔を見せた。
予想が正しければ、彼はヨハネからこの先に進むための鍵を、預かっている筈だ。
「あ、あぁ。貴様に言われなくても、すぐ開けるさ!」
坊主は、何処からともなく鍵を取り出し、目の前にある扉の解錠作業を始めた。
“祈る者”少女も、何やら坊主の隣でその作業を興味深そうに見ている。
「なんでロキ君が鍵を? そもそも、こんな所にどうして扉が……」
「鍵を預けたのはヨハネだろう。この扉は、ギルドが一層と二層を隔てるために取り付けた物だな」
もとより、この先へ進ませる気がないなら、始めから引率など頼まないだろう。鍵を渡していることは容易に想像がつく。
それより問題は、この先俺の知識がどれ程通用するか……。
「でも……なんでそんな事を? こんな厳重な扉、始めてみたわ」
鍵穴は、全部で三つ。しかも三ヶ所とも違う鍵だ。確かに端から見ても厳重過ぎる。
ただ、それを疑問に思える、サクラの感覚は中々の才能だ。彼女が常日頃物事を考え、それを吸収している事が良く分かる。
「簡単な話だ、下層の魔物の方が強いからな。そんな奴らが上がってきたら、
サクラが、その大きな眼を丸くして驚きながらも、その後すぐ真剣な顔で俺を見つめた。
「あなた、本当は一体何者なんですか。
「前にも言ったが、ただの“作る者”さ。それより扉が空いたみたいだ」
最後の鍵が、ガチャリと音を立てた。後はこの扉に力を加えるだけだ。
「マサムネさんは……とても隠し事が多そうね? 正直、貴方に興味がつきないわ」
「ん、なんだ。もしかして、俺は口説かれているのか?」
この前の仕返し……でもないけどな。ただ、それなりに効果はあったらしい。
サクラは「し、してやられたわ……」と、可愛らしく頬を膨らましている。
その表情は、いたって普通の少女だ。血生臭い戦闘を行っているなんて、到底信じられないな……。
「──おい、オッサン! あんたが開けろ、そんなデカイ物を背負ってるんだ。扉を開けるぐらいの力はあるんだろ!?」
坊主聞き耳を立てていたのだろう。またもやご機嫌が悪いようだ。
「あぁ、わかった。仕事をくれてありがとう──リーダー」
リーダーと呼ばれ、一瞬表情が緩む坊主。皮肉のつもりだったんだがな……。
「チッ……分かればいいんだ、早く開けろ」っと、いくらか満更でもない様子だ。
俺が扉を押すと、両開きの扉が金属の擦れる音と共に、ゆっくりと開いていく。
その先には階段があり、下の方からは、草の香りと湿気を帯びた風が吹き上がってきた。
そして全員が扉の中に入るのを確認し、手を離した。すると自動的に扉は閉じ、ガチャリと三度……鍵が掛かる音が響いた。
「さぁ──気を引き閉めて行こうか!」
隊列を組み直し、俺達は階段を下る……。
すると洞窟の様だった景色は一変し、まるで外に出たのかと見間違うほどの光景が、目の前には広がっていた。
「初めて見たな……これほどの緑は……」
階段から下った場所は、切り立った崖の上だった。崖の下には一面緑が広がり、湿った土の臭いが鼻につく。
未だ、自分も踏み込んだこと事の無い未開の地。
この胸の高鳴り……久しいな、もう二度と経験することはない、そう思っていたのだが。
ただそれでも──すんなりとは先へは進ませて貰えないようだ。
「あれは……魔物なの?」
崖の手前、数メールと言った所か? そこには一匹……っと言うべきなのか?
金属の甲冑に身を包んだ、人ではない何かが、そこには座していた。
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