火傷

「あちち」

「おじさん、またヤケドですか」

「ユキちゃん、笑わないでおくれ。やっぱり僕には合わないよ。熱いし、苦い」

「まだまだ元気な証拠ですよ」

「そういうものかなあ」

 ユキは、文句を言われたばかりのカップを手に取り、一口すすった。

「おじさん、私ね、今目の前に起こることばかりに夢中になってしまうの。未来の幸せを願っても、それは過去の幸せへの憧れだったりする。私はどこにいるんだろうって、そんなことを考えている今に酔ってしまいそう。私はちっとも不幸じゃない」

「元気な証拠じゃないかな」

「もう、おじさんったら」

 ユキは、ゆっくりとコーヒーをかきまぜて、たっぷりの砂糖を溶かしながら、ふうっと息を吹きかけた。

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