第5話 奇妙な男に祝われました








 さて、0時になりました。私の29回目の誕生日です。おめでとうございます。


 と、セルフでお祝いしつつブログを覗いた。コメント欄はお祝いコメントで溢れている。我ながら人気者だな。……ネットの中では。


虚しい気分になりつつ、さっき投稿したばかりの記事コメントを覗いた。









【〇月 ×日 △曜日 王子さまは天使さま♡】



今日はとっても大変な日でした~(´;ω;`)


 移動教室の時に窓の近くにいたら外からボールが投げられて;;

(たぶん誰かのいたずらかな?)


 思いっきり割れて怪我しちゃったんだけどちょうどその時近くにいた男の子がね?


 王子様みたいに助けてくれて( *´艸`)キャッ


 ここでは王子くんって言おうかな?


 その子、そのあとリアラが廊下に落としたスマートフォンを教室まで届けにきてくれてめちゃくちゃ優しかったの!


 ついでに番号とかも聞かれてね?キュンキュンしちゃった♡



 でもそれを見てたクラスの女の子に、そのあと階段で突き飛ばされちゃってすっごくあぶなかった(´;ω;`)落ちちゃったんだけどね(´;ω;`)死ぬかと思ったぁ


 右足首ねん挫で済んだけど、背中から落ちてたら危なかったって(´;ω;`)


 本当心臓止まるかと思った~実際すごく痛かったもん!


 でも仕方ないよね、リアラ女の子にあんまり好かれないから苦笑


 卒業までには誰かオトモダチほしいなあ。。。


 みんながオトモダチになってくれる?なーんてね(^_-)-☆

 それから今日の戦利品!可愛いヘアオイル買っちゃいました♡


 写真のせとくね☆


 今日の美容ネタでした☆おやすみ♪



 PS♡

  明日は誰かさんが生まれた誕生日です☆誰の誕生日でしょうか??








001りりあんさん

 大変な一日でしたね。゚(゚´ω`゚)゚。

 捻挫で済んでよかったです…

 そして新たなイケメンくんの登場ですね!

 リアラちゃんのモテテクが彼にどう炸裂するのか楽しみです٩(ˊᗜˋ*)و


リアラちゃん一番のファンより



002名無しさん

 なんか遅めの更新ですけど仕事帰りですか


003名無しさん

 更新乙 転載写真?



 ベッドの上で横になりながら、コメントを読んでいく。この時間のコメントはどれもこれもアンチコメントって感じだけど、りりあんさんだけは違うんだよな。


 いつも一番にコメントくれるし、本当に記事を追ってくれてる読者さんって感じがする。



009名無しさん

 でた悲劇のヒロインアピ笑 この前も階段から突き落とされてたよね???笑 ネタ尽きた???笑笑 ランキング下がってますけど~~~???笑笑笑




 「げ、マジでランキング下がってる……」


 そのコメントを見てすぐランキングを見に行けば、順位はいつの間にか三位になっていた。ああ、最悪。今日は飲み会のせいでいつもの時間に記事をちゃんと上げられなかったのが原因だろう。


 明日はちゃんと決まった時間に上げないと。そう考えたタイミングで、また新しいコメントがついた。



017 リアラちゃん憧れです!さん

 深夜に記事うpお疲れ様でした!リアラちゃん女子力ほんとに高いです!リアラちゃんみたいに胸キュン高校生活送ってみたいです!!羨ましいっ( ;∀;)

 そしてお誕生日おめでとうございます!!



 リアラは本当に存在している派の読者さんからのコメントだった。

 リアルは女子力も胸キュンも、なんにもない。年齢も十個以上詐称している枯れた女だと言うのに。


「……はあ」


 本当にリアラになりたい。こんな風に誰かに憧れられて羨ましがられるような。


 そしたら、新しく担当するTLのこととか、大人の胸キュンがどうのとか、大まかに言えば恋愛のこととか、年齢のこととか、結婚のこととか……とにかく!


 こんなに悩まずに済むんだろうな。だってリアラはリア充だし。私とは何もかも正反対の美少女だし。


 こんな悩み、あっという間に解決しそうで……羨ましい。


 高校生になって、嘘だらけのこの日記が私の現実になってしまえば、どんな楽か。


 スマホを枕の上に投げるように置いて、寝返りを打ちながら毛布を被りなおした。


 明日の記事で、いじめっ子の誰かに報復しちゃおうかな……なんて。


 リアラのか弱いイメージぶっ壊れるからやらないけど。でも何してアクセス数稼ごう…つか、胸キュン、ってなん、だよ。大人と子供の恋の違いって、なんだ、よ……。


すー……と。様々な事をごちゃごちゃと考えながらそのまま眠りにつく。深夜2時のことだった。

































「起きてくださーい起きてください、リアラちゃん!リ・ア・ラちゃん!!」


 は、うっさ。今眠ってるんだけど。なんなのよ。


「リアラちゃんってば!!あ。いや違うか、桐島心さん。きーりしーまこーころーさーん!」


 うるさいって、うるさい…うるさ……。


「起きないとあなた、このままでは」



 死 ん で し ま い ま す よ ?



 はっと目を開けると、目の前で「あ、起きましたか?」と片眼鏡をかけたひょうきんそうな男がにっこりと笑って私を見下ろしていた。


 妙ちきりんな大きなワインレッドのシルクハットの下、赤茶色の髪の毛をした髪が少し目元にかかっている。


 二重幅の広い垂れ目とにんまりと綺麗な半円を描く大きな口が印象的なその男と目が合うと「こんにちはこんばんはおはようございます」と挨拶をしてきた。


「えっ……誰…?てか不法侵入!!?」

「あら、先ほどご挨拶に行ったのにもう忘れたんですか?」

「はあ?」


 って。待ってくれと寝ていた身体を勢いよく起こすと、男は「おっとぉ!」と私から仰け反るように折っていた腰を元に戻していた。



 待って、本当に。こ、


「こここっ、ここどこ!?」

「なんでもない空間ですよ。まあ、今日という日はなんでもない日ではありませんけどね?」


 くすくすと笑って、男はくるくると黒い空間を飛ぶように回る。帽子と同じような色をした細いストライプの入った燕尾服の裾を羽の様にひらひらと揺らしながら、彼はまた私の横に来ると、



「お誕生日おめでとうございます。桐島心さん」


 と、舞うように軽くお辞儀をしてきた。


 え。どうしよう私、この年になって不審者にお誕生日を祝われた。





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