二

 ところが。


 また二日ほど経っても、一向に治りはしなかったのである。


 治るどころか、逆に熱は上がり、頭痛はひどくなる一方だ。


 真夏のさ中だというのに、背骨にそって走る寒気は、シャツの下に冬用の長袖のシャツを着て、さらにセーターとコートを着ても治まらない。


 否。夏にこれだけ着込むのであるから、身体の外側は蒸し暑く、じっとりと汗をかくのであるが、身体の内部の方はずっと、今が冬であるかのように寒いのである。


 しかも。


 頭痛の方はというと、私は普段から頭痛持ちではあるのだが、いつもの頭全体を包むような頭痛ではなく、後頭部と延髄にかけてがずきずきと痛むのである。


 こんな痛みは初めてだ。


 この耐えがたい痛みを止めるため、私は、麻薬中毒者のように鎮痛剤を貪り食った。


 そして。


 とうとう、その鎮痛剤でも、この後頭部と延髄の痛みを止められなくなったのである。


 幾日目かの夕刻、ついに耐えられなくなった私は、かかりつけの医者を経て、さらに大きな病院で検査を受けることとなった。


 血液、CT、扁桃腺に付いている菌の検査。


 いろいろやった。


 しかし、その結果は。


 何かの菌かウイルスによる扁桃腺の感染症というだけで、なんら目新しいものはなかった。


 無論。


 医者には行った。


 診断によるとやはり風邪ではなく、なんらかの菌による感染症のようであり、喉は痛くないのだが、どうやら扁桃腺に菌が入ったらしい。


 ちなみに、子供の時分にすでにやっているので「おたふく」ではない。


 扁桃腺にいる菌も、こうした場合にもっとも主流な溶レン菌という菌は発見されず、なんの菌なのか、はたまたウイルスなのかさえわからないとのことだ。


 取られた私の血の中は白血球でいっぱいなので、何者かが侵入しているのは確からしい。


 ただ。


 より強力な頭痛を止める鎮痛剤を貰えたことは良かった。


 飲むと、確かに多少は痛みを和らげることができる。


 CTの結果によると、頭の血管が切れていたり、腫瘍があったりなんかもしていないようだ。


 なお、今後、扁桃腺の腫れが進めば、喉が痛くて水も飲めなくなるでしょうとも言われた。


 高熱に水が飲めなくなるような喉の腫れ――。


 なんだか、マラリラと狂犬病(恐水症)を足して二で割ったような病である。

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