新旧最強プレイヤー8
『リヴァイバルゲージ、チャージ完了。解放可能です』
機械的な音声が脳内に流れる。
確かに僕は死んだはずだった。
それでも意識ははっきりしていて体も動かすことができる。
真っ暗な空間の中で画面が映し出された。
──────────────────
[ランクSS:
装備者の身体能力を日常的に下げる代わりにエネルギーをチャージし、溜められたエネルギーを解放することで爆発的な能力向上を得る
【適用】 【拒否】
──────────────────
初めてメアから貰った指輪の効果を知ることができた。
僕が常日頃から体が重いと感じていたのはこの指輪のせいだったんだ。
死ぬたびに蘇生時間が長くなっていることから今回は一体どれぐらいの時間が経つんだろう。
こんなにも意識がハッキリしているのは初めてだ。毎回死んだ後は気付けば蘇生されていた。
メアは大丈夫だろうか?
相手のプレイヤーはマジトレ全盛期に名を馳せていたトップランカー達と現トップランカー達だ。
それでもメアが万に一つも負けるとは思えないけど、唯一の心配点はあの魔法を封じられた拘束魔法だ。
あの口ぶりからして相当な準備をしてきているに違いない。
もしもメアがあの攻撃を受けてしまったのなら…………!
「僕が…………どうにかしなければいけなかった」
たとえ相手が最強のプレイヤー達だとしても負けるわけにはいかなかった。
だってそうじゃないか。
前回はメアが自力で倒してくれたとはいえ、本来は僕がメアを守らなきゃいけなかった。
手持ちの魔法じゃあの人達には勝てない。
僕にはもう、この力に頼るしかない。賭けるしかない。
「当然…………適用だ!!」
画面の適用ボタンを力強く押しながら僕は願った。
もしもメアがまだ生きていて、もしも危険な状態だったとするならば…………!
「僕にメアを守る力を、あの人達を倒す力を!!」
視界が強烈な光に包まれた。
ゆっくりと景色が移ろいゆく。
そこは変わり果てた王座の間だった。
至る所の天井は崩壊し、瓦礫が散乱している。
そして僕の目の前。
信じられない光景だった。
あのメアが。
如何なる時でも凛として威風堂々たる姿を見せつけていた漆黒の魔女が。
ボロボロの衣服で片腕を失くし、弱りきった姿で床に座り込んでいた。
「ああ…………トーシロー……!」
彼女の安堵した表情。
そうだ、彼女は強いだけじゃない。
年相応の女の子でもあるんだ。
僕の中で生まれて初めてと思えるほど強烈で苛烈な感情が湧き上がり、それに呼応するかのように指輪が発光し、凄まじい力が僕の全身に流れ込んできた。
『リヴァイバルチャージ、強制終了まで120秒です』
充分すぎる時間だ。
「僕の大切な人をよくも…………!」
「おいおい、なんでここにリスポーンすんだ?」
相手は6人。
2人いない。
隠れているのかそれともメアが倒したのか…………。
「よく分からんけど、そこをどけよトーシローさん!!」
パプリカさんが殴りかかってきたのと相対するように、僕も拳で応戦した。
お互いの拳がぶつかり合った瞬間、パプリカさんの右腕ごと右半身が勢いよく消し飛んだ。
「えっ?」
そのままパプリカさんはゲームオーバーとなった。
「は……はぁ!? ちょっと待て何だ今の!?」
「何かの魔法を使った形跡は見られなかった……。指輪から流れ出ている光のせい?」
僕はただ普通に殴っただけだった。
パプリカさんの動きもゆっくり見えていた。
マジトレにはレベル値やステータス値なんてものはないけど、例えるならきっとLv99の力でLv1の人を殴ったみたいな感じなのだろう。
これがランクSSの宝具の力。
「こんなあと一歩のところでっ……! 負けてたまるかよぉぉ!!
WITさんがランクSの剣術を使用してきた。
それと同時に相手全員が動き出す。
僕は
見たこともないようなとてつもない剣圧でWITさんの剣術を吹き飛ばし、そのままWITさんは真っ二つとなった。
「ば……バカな…………!!」
パプリカさんに続いてWITさんも消滅する。
「
地面を蹴り飛ばし、魔法をかわすと同時にあやとり名人さんの背後へと瞬時に移動した。
「
「ただ移動しただけだ」
上から剣を振り下ろした。
「いやぁ……無理だこれ」
あやとり名人さん諦めたように軽く笑いながら粉々に消し飛んだ。
残るは3人。
「pikyyyさん!」
「はいな!」
剣を振り下ろしたタイミングでpikyyyさんとRAVENさんが左右から挟み撃ちに来ていた。
どちらかを攻撃してもどちらかが僕に攻撃を通せる算段なんだろう。
「超弩級剣戟!!」
「多次元斬り!!」
ピッ。
動作がゆっくり見えていたからこそ簡単に取ることができた。
「ああ!?」
「なにそれ!!」
さらにpikyyyさんの刃を動かし、多次元斬りの時間差攻撃を防ぎ、脇腹に横蹴りを入れてRAVENさんごと吹き飛ばした。
「化け物だな」
背後から透明となっていたノーネームさんが迫ってきていた。
だけど僕には予測が出来ていた。
上へ投げていた空間分離を掴み、ノーネームさんの突きを防いだ。
「思い出しました。その透明化、相手に声を掛けないと攻撃動作が行えない…………でしたよね」
「ふっ…………御明察」
僕の速く重い一撃をノーネームさんは次々と捌いていく。
さすが最強のプレイヤーだ。
こんなにも能力差があるというのに、それを技術でカバーしている。
それでも限界はやって来た。
バキィン!!
ノーネームさんよりも先に、武器の限界が来たのだ。
「ちっ……ここまでか」
「メアにしたことは許せませんが…………僕は貴方を尊敬します」
「……良い戦いだったぞトーシロー。違うゲームでまたやろう」
「…………はい」
ノーネームさんは素直に首を切り落とされ、消滅した。
「これで残るは…………」
蹴り飛ばしたpikyyyさんはそのまま力尽きて消滅していた。
残ったのは一緒に吹っ飛んでいたRAVENさんだけだった。
「こ……このチート野郎……!!」
ダメージを魔法で回復したみたいだけど、僕に対する怒りで頭に血が昇っているようだった。
『リヴァイバルチャージ、チャージ切れにより強制終了』
機械的なアナウンスと共に指輪は発光をやめ、効力は失われた。
最後はRAVENさんと一騎打ちになるみたいだ。
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