上位ランカー5
「
「ミモリンさんに続いてみょるにるさんも……! 許さないわ!
僕の背後に鎌を持った死神が現れた。
S級魔法の中でも最高レベルの宝だ。
ファルカナ☆みかんさんの代名詞の魔法で、どこで使うか探っていたけどこのタイミングか。
『30……29……28』
死神がカウントダウンを始め、この数字が0になった時に僕は死ぬ。
それまでに相手を倒すか特定の魔法で消さなくてはならない。
「
まずはそのままファルカナ☆みかんさんにやり返した。
これで僕の模倣犯の回数は0となってしまった。
「「全状態異常回復!!」」
そしてお互いに死の宣告を消し去った。
僕にも全状態異常回復の回数が残っていることは知っていたはずなのに、このタイミングで放ってきたのは激情に駆られてなのか。
それとも別の意図があったのか。
いずれにせよ、僕が使える魔法は残り少ない。
RAVENさんとファルカナ☆みかんさんの強力な魔法二つは打ち消すことができたけど、まだまっつんさんの得意としてる魔法は使われていない。
アレを使われる前にまっつんさんを仕留めたいところだけど……。
「やはり……ランキングトップの実力は伊達じゃねーみたいですね……。上位ランカー5人で戦って互角どころか二人食われる始末。これじゃあメアと戦っても勝てるかどうか分からないな」
「メアは僕よりも遥かに強いよ。動画でも見たことあると思うけど、当時の全盛期だった上位ランカー達ですら歯が立たなかったんだから。どう? 諦める気になってくれた?」
「いや、全然」
RAVENさんが剣を構えて突っ込んできた。
「分かっていないようだから教えますけど、俺はまだ二つしか魔法を使っていないんですよ?」
「!!」
「多次元斬り」
RAVENさんの剣を受けたと思った瞬間、別方向のあらゆる場所から切りつけられた。
鋭い痛みが僕の体中を襲う。
「あああっ!!」
転がりながらRAVENさんと距離を取ろうとするが、逃すまいと距離を詰めてくる。
そのまま剣による戦闘が続いた。
「トーシローさんのおかげで装備が変更できると気付いた時に、俺は装備を入れ替えて個人戦専用のデッキに変えました。本当はこのままメア戦に突入したかったんですが、アナタが思いの
足元をフワリと風ですくわれた。
両足が宙に浮き、無防備な状態を晒す。
振り下ろされた剣を防ごうとするが、横へ逸らすのが精一杯で、左肩から腕をバッサリと切り落とされた。
「うああああああああああ!!!」
大量に血が吹き出す。
今までとは比にならない激痛が脳を焼き切る。
「全負傷回復!!」
即座に魔法を発動させ、左腕が生えて痛みが無くなる。
「これで回復魔法もゼロだな」
背後にまっつんさんがいた。
無防備な背中。
RAVENさんに気を取られすぎて、簡単に背後を取らせてしまっていた。
確実にあの魔法を使うはずだ。
耐えるんだ僕!!
「
「っっっっっごは!!!」
20発の超高速殴打。
通常であれば致命傷となるほどのダメージは負わないけど、まっつんさんが付けているナックルグローブとの相性は抜群だ。
無限に
僕の身体を一瞬にして何発もの衝撃が突き抜けていった。
鎧は砕け、口からは大量に吐血し、全身の骨が砕けていた。
僕は無様に床に倒れ込んでしまった。
「あ…………ぐふっ……うう……」
「終わりね」
「……てこずらせやがって」
「にしても、本当に痛みがあるかのような演技ですね。トーシローさん、リアルの方では役者とかやってんすか?」
そんなのやってるわけない。
と言おうとして口から血を吐いた。
呼吸が上手くできない。
もしかしたら肺がダメになっているのかもしれない。
「とにかく、みょるにるさんとミモリンさんの仇はしっかりとらしてもらいますんで。その後にメア狩りだな」
……どれぐらい時間を稼げた?
20分……いや、30分ぐらいは稼げたのだろうか。
微妙だ。
せめてもう少し時間を稼ぐ必要がある。
この人達をメアのところに行かせるわけには……いかない!
「……ぅぁ……ごぽっ!」
「え? なんすか?」
「……ぉぃすん…………ぃすと…………」
僕を中心として毒ガスが吹き出した。
ハッキリ発音できなかったから発動できるか分からなかったけど、使えたようで良かった。
最後の悪あがきだ。
「こ、こいつ……!」
「二人とも離れて! 私がまた散らすわ!」
「ぐっ……!」
毒ガスが僕の身体を侵食する。
倒れ込んでいる状態だというのに、すぐに目眩が始まり、そのまま血と一緒に胃の中のものを吐いた。
死が近づいているのが分かる。
視界がぼやけ、心臓がキリキリと痛む。
「
毒ガスが風によって散らされていった。
「ゴホッゴホッ! まだ魔法使う力あったのかよ!」
「でも今ので、自分自身にとどめを刺したみたいよ」
……そうだね。
もう僕には指一本動かすことはできない。
「……まぁ念には念をだ。離れた位置からとどめ入れとくか」
くそ…………。
もう少し時間を稼げれば…………きっとメアが…………不意さえつかれなければ彼女が負けるはず…………。
その時、どこかの扉が開く音が微かに聞こえた。
「トーシロー? 夕飯の支度がいい感じになってきたから先にお風呂に──────」
メアだ。
死にかけてる状況でもメアの声を僕が聞き間違えるわけがない。
なんとか間に合ったんだ。
「…………メ……ア」
かすれた声でメアの名前を口にするも、はっきりと言葉にできたかは分からない。
霞んだ目では、メアの姿も見えやしない。
でももうこれで彼女は大丈夫だ。
僕は……安心して……死ねる………………。
「──────トーシローに何をしてるのよ!!!!!!」
彼女の怒声を最後に、僕の意識はコト切れた。
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