上位ランカー2
その知らせが届いたのは10日ほど前の話だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【重要】
「平素よりMAGIC OF TREASURE HUNTERSをご愛顧賜りまして誠にありがとうございます。
本会社では、従来よりMAGIC OF TREASURE HUNTERSを提供してまいりましたが、昨今のVRMMO情勢において本世界の利用人数が著しく低下しており、MAGIC OF TREASURE HUNTERSの世界構築を継続させていくことが困難と判断致しました。
つきましては、突然の発表ではありますが、本サービスを終了させていただくことと致しました。
サービス終了:本メール送信後より30日後
ご利用のお客様には、大変ご迷惑をおかけいたしますが、何卒、ご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
長らくのご利用、誠にありがとうございました。
今後ともMAGIC OF TREASURE HUNTERSをご愛顧賜りますようよろしくお願いいたします」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「嘘だろ……」
MAGIC OF TREASURE HUNTERS(マジック オブ トレジャー ハンターズ)』、通称『マジトレ』のサービス終了通知が送られてきたのだ。
マジトレは今でこそ落ち目と言われているが、VRMMOを引っ張ってきたいわゆる先駆者だ。
いまでこそシステムの粗は多く指摘されているが、今でも熱狂的なファンは存在する。
例えば今の上位ランカートップの人とか。
初めて漆黒の魔女メアが確認されたときの上位ランカー達には劣るけど、それでも現在のプレイヤーの中で最強なのは間違いない。
確かパーティを組まずにソロでやっているという話だ。
その人は今でもメアの攻略にご執心らしいけど、いまだに城にもたどり着いていないらしい。
俺も過去の動画を見たことがあるが、ありゃ無理だ。
隕石群のところが無理ゲー過ぎる。
でもそんな漆黒の魔女を討伐できていないのにサービスが終了するなんて、消化不良にもほどがあるだろ。
サービス終了まであと30日。
決まってしまったものは仕方がねぇ。
それなら最後に花を咲かせたいじゃねぇの。
「上位ランカー陣でパーティを組む時が来たか」
人を集める必要があるな……。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~10日後~
「わざわざ集まっていただいてすいません。全員の都合がつく日があってよかったです」
俺の目の前にいるのはそうそうたるメンバー。
現在のランキングで上位を占めている人たちだ。
「マジトレ終了は悲しいですからね。メア攻略は全プレイヤーの悲願でもありますし、何よりレベルの高い皆さんとパーティが組めるのは楽しみでしたから」
そう答えたのはランキング4位のパプリカさんだ。
刀を主体として、魔法も肉体強化に重きを置いているバリバリ近接戦闘系のタイプの人だ。
「リアルで忙しい人もいるから集まるか微妙でしたけど……」
「ランキング2位のRAVENさんとパーティ組めるなんて、私たちの間でも夢でしたから! 私なんかに声をかけてくれてありがとうございます!」
なんとも嬉しいことを言ってくれたのはランキング15位のミモリンさん。
彼女のランキングは二桁台と低く見えるが、彼女の持つ回復魔法は強力で優秀だ。
1対1で戦う大会では不利なため成績は低いが、その分パーティのクエスト成功率は高く、ほぼ毎回全員生存という話らしい。
彼女がいるだけでデスペナルティを受ける心配がグッと減るのだ。
死亡率と成功率、その高さからランキング上位に食い込んでいる。
「ミモリンさんは必須だと思ってましたから。あの流星群を抜けるためにもね」
「はわわ……頼りにしてもらえてうれしいです!」
「良かったねーミモリン」
「うん! ちーちゃんも頑張ろうね!」
ミモリンさんと仲良くしているのは、ランキング6位の
彼女らは同じパーティに属しており、ミモリンさんが回復を担当することで、彼女が両手剣を用いて攻撃魔法を同時に併用した怒涛のノーガード戦法を得意としている。
俺も一度決闘大会で彼女と戦ったことがあったが、片手を吹き飛ばされながらもなんとか勝利できたほどの猛者だ。
彼女らのパーティランクも高い。
「にしてはあの人がいなくね? こんな機会があるなら絶対飛びついてくるはずの」
そう言ったのはランキング9位のみょるにるさん。
忍のような恰好をしており、戦闘スタイルも見た目通りの機動力を生かした戦い方で、魔法の使い方がうまく、突発的な出来事でも機転を利かせることができる人だ。
「それが連絡しても返事がないんですよ。ログインはしてるはずなんですけどね……。仕方がないので今回はあきらめました」
「案外、ソロでずっと攻略してるのかもしれんな!」
がははと笑い声をあげたのはランキング8位のT28オタさん。
彼の防御力の高さはマジトレ随一だろう。
生半可な攻撃では彼の鎧と盾を貫けない。
半面、攻撃はシンプルにタックルだ。
ちなみに社会人らしい。
「彼ならありえそうね~。誰ともパーティを組まないことで有名だし」
彼女はランキング5位のファルカナ☆みかんさん。
完全魔法特化の人で、珍しい宝をたくさん持っている。
俺と同じパーティに属している人だ。
1年近くいっしょにやっており、リアルでも交流のある人だ。
「………………」
そして一言も話していないのがランキング3位のまっつんさん。
装備、魔法とともに強力なものを持っており、状況判断も的確だ。
しかし、彼はあまり話すのが得意ではないらしく、基本的にしゃべらない。
でも悪い人というわけではなく、パーティを組んでいないことから助っ人を頼まれては協力してあげているらしい。
なのでプレイヤー内では意外と評判の良い人だ。
「ランキング1位の彼がいてくれれば心強かったんですけどね。あ、ちなみにランキング7位の鬼キョロちゃんさんは1か月近くログインしてなかったんで誘ってません。リアルが忙しいのか違うゲームに移行したのか…………」
「上位ランカーの人でもいなくなってしまう…………もともと終焉が近かったのかしらね~」
「他のVRMMOでは賞金の出るものもありますから、移動しててもおかしくありません」
「そう考えっと、いいタイミングの潮時だったのかもしんねーな」
「勝ちましょう! 私たちで絶対に!」
いい感じに士気が高まったところおで、出発の狼煙を上げる。
「パーティ名は無難に『漆黒の魔女攻略組』で。じゃあ行きましょう!」
「「「おー!」」」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
7時間後、俺たちはメアの城まで辿り着くことができた。
まさか本当に到達できると思わなかったが、全員が無事だったわけではない。
8人中3人が脱落した。
そのすべてがやはりクレーター荒野だ。
パプリカさんが初手で流星に吹き飛ばされ、それをカバーしようとT28オタさんが向かうも間に合わず、パプリカさんが死亡。
次に流星の威力が上がったところで全員吹き飛ばされ全滅の危険があったものの、みょるにるさんが
ランクC『
よくそんな低ランクの魔法をセットしていたなと驚かされた。
さすがみょるにるさん。
その後、ミモリンさんの回復魔法の使用回数が切れたことにより、徐々に削られ始め、紫蝶々さんが死亡した。
そして最後、メアの城が見えてきたところで、ミモリンさんがやられかける直前にT28オタさんが身を挺してパーティの要であるミモリンさんをかばったことで、T28オタさんが死亡。
ミモリンさんは魔法が使えなくなっていたけど、メアの城に行けば魔法使用回数が回復することを知っていたため、自分を犠牲にして回復担当を生かしたのはT28オタさんのファインプレーだったと言える。
こうして辿り着いた俺たちは満身創痍だったが、メアの城に来れたという高揚感が疲れを吹き飛ばした。
そして魔法使用回数を泉で回復し、いざ王座の間へと来た。
大きく重厚絢爛な扉に手をかける。
だが、開けた先にいたのはメアではなく一人のプレイヤー。
俺が何度もメールを送っていたランキング1位のプレイヤー。
「…………あれ? トーシローさんじゃね?」
誰よりもメアの攻略に命を懸けていたプレイヤーがそこにいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます