出会い1
「……………………はっ!」
僕はガバッと飛び起きた。
大量に汗をかいている。
あわてて首を触ると、しっかりと僕の首は胴体と繋がっており、また両手も僕の腕に確かにくっ付いていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……ゆ、夢?」
口に出してはみたものの、あれが夢じゃないことは目の前の光景が物語っていた。
僕がいるのは、先程と同じくメアがいた部屋。
玉座のようなところに今はメアはいないが、僕は殺された所に再び蘇生しているようだった。
フラッシュバックしているかのように、両手と首元をチクチクとした痛みを感じる。
仮想世界で感じるにしてはあまりにも危険すぎる痛みだ。
何がどういう理由で痛覚がオンになってしまっているのかは分からないが、これが運営の仕様だとするのなら倫理違反なのは間違いない。
特別イベントだと言っていたけど、これはあまりにもやり過ぎだ。
まぁそれでも僕は俄然諦めるわけにはいかないんだけど。
もう一度チャンスがあるなんてラッキーだ。
メアに関連するスペシャル報酬を手に入れるために、何度でも挑戦してやる。
「それにしても…………メアはどこに行ったんだろう」
殺されてから復活するまでに、どれぐらいのタイムラグがあったのかは分からないけど、少なくとも本来の蘇生のように秒速ではないようだ。
メアが僕を殺してすぐに立ち去った、という可能性もゼロではないけど……。
部屋を確認すると、正方形で直線距離50メートルぐらいの広さがあるのだろうか。
動画で見た上位ランカー達が入った入口が一つと、メアが座っていた椅子の奥に扉が一つ。
メアがいるとするなら…………椅子の奥にある扉かな。
僕はゆっくりと扉へと近づき、ドアノブに手をかけて引いた。
案外、扉はすんなりと開き、長い渡り廊下のようなものが続いていた。
廊下には赤いカーペットが引かれており、土足で入り込んでいいのか一瞬迷う。
でもまぁ靴は鎧の一部として装備されてるから、靴を脱ぐためには鎧も脱がないといけないわけで、装備品の変更はここじゃ出来ないだろうから結局土足で行ってしまおう。
室内の土足カーペットはアメリカンな気持ちにさせられるなぁ。
廊下の両サイドにいくつか扉がついており、これらを確認していけばメアがいるかもしれない。
僕は人の気配を感じるために、聞き耳を立てながら廊下を進んでいった。
すると、どこからか水を使っている音がした。
どこの部屋からだろう……。
左側からだから……このまま歩いて一つ目……二つ目……三つ目。
ここだ。
ここからザバザバと水を使っている音がする。
たぶんこの部屋にメアがいるはずだ。
水を使っている音が止んだ。
チャンスは今しかない。
向こうは僕がここにいるとは想像すらしていないだろう。
飛び込んですかさず剣で斬りつける!
僕は剣を引き抜き、ドアノブに手を掛けて一気に開いた。
いざ!!
「覚悟しろメア!!」
「ふぅ………………え?」
僕の目に飛び込んできたのは、透き通った綺麗な肌。
しっとりと濡れた艶やかな黒髪。
服からではあまり確認することができなかった豊満なバストに、くっきりとしたくびれ。
ミロのヴィーナスとか、そういう芸術品にも似た何かを感じる。
つまりはそう、メアの裸だ。
そんな彼女がちょうど風呂場から脱衣所に上がってくる場面だった。
「な、な、なぁぁぁ…………」
メアが顔を真っ赤にしながらタオルで体を隠し、わなわなと震えた。
もう……そうだね。
僕が言えることと言ったら一つだけだよね。
「ありがとうございまぁぁぁす!!!」
「きゃあああああああああああ!!!」
僕は最初と同じように首を切り飛ばされた。
不肖、トーシロー。
生まれて19年、我が生涯に一片の悔い無し!!
「…………はっ!」
僕は再び飛び起きた。
またしても僕は夢を見ていたような気分だ。
だけど今回の夢は悪夢じゃなくて、
「うーん、良い夢だった」
「へぇ〜…………夢ねぇ?」
すぐさま顔を上げると、玉座のような所にメアが座っていた。
若干、顔を赤くして涙目になっているが、怒っているのは間違いないだろう。
三角帽は被っておらず、服装もジャージに近いようなラフな格好となっている。
新しい一面が見れた。
「私のあ……あんな姿見ておいて、タダで済むと思わないでね?」
「違うんだ! あれは決してわざとなんかじゃなくて、でも個人的にはとても嬉しいことで……!」
「
「ぐえっ!!!!」
僕の腹部に強烈な鞭が飛び込んできて、遙か後方へ吹き飛ばされた。
鎧を着ているというのに、なんて威力だ。
それに、やっぱり痛みを感じる。
「ぐうううう…………」
「どうしてアナタが何度もここから生き返るのかは知らないけれど、私を殺しに来たんでしょ? 私だってただやられるわけにはいかないんだから」
「ち、違うんだ! 僕はただ、スペシャル報酬が欲しいだけで……!」
「そのために私を殺すんでしょ?」
「うっ…………それは確かにそうなんだけど……」
「
「うわっ!」
下から上に突き抜けてきた風を、僕は横に転がってかわした。
危うくまた首を切られる所だった。
「観念しなさい」
「でも……僕だって譲れないものがあるんだ。絶対に君を倒して……報酬を手に入れてみせる! まぁ…………メアの裸に勝る報酬があればだけど」
「なっ……!」
メアがまたしても顔を真っ赤にした。
僕的にはもう最高の報酬を手に入れたし、最初ほどスペシャル報酬に固執してはいないんだけどね。
でもやっぱ
「い、今すぐ記憶から消しなさい……!」
「無理だよ。心のシャッターで連写しちゃったから」
「ならメモリごと消してあげるわ!!
「え……Sランク魔法……!?」
天井付近がまるで異次元のゲートが開いたかのように暗く渦巻いている。
確かこの魔法は、クレーター荒野で降り注いでいるものと同じ流星が落ちてくるはずだ。
「
これで一気にメアに近づいて──────。
「
「なっ!?」
地面から現れた複数の鎖が僕の体に巻き付き、身動きを封じられてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます