火々谷 美緒は燃え尽きない⑤
「ねぇお
「どうした
晩御飯の時間が近くなり、妹が部屋から出てきた。
「今日お母さん『居残り』だけど────ご飯どうすんの?」
「えっ今日だった!?やっべぇ、すっかり忘れてた!!」
僕の母・
「まったく色ボケ
「なっ、何言ってるんだ。彼女がいるなんていつ言ったんだよ」
「見てれば分かるわ。何年同じ屋根の下、同じ釜の飯を食ってきたと思ってんの」
言い返す言葉も無い。仕方なく僕は錐に全てを話す事にした。すると錐は急に頭を垂れて震え出した。兄の恋愛事情に吐き気でも催したのだろうか。
「────ぷっ」
「は?」
「ぶぁはははははッッ!!お兄が!クラスのヒロインと!?無い無い!世界が終わっても無い!!ひぃは、はひっ、あはははは!」
酷い。本当の事なのにまるで信用していない。本当に僕は彼女と交際しているのに。
ピロリン。
僕はこの時来た通知音に希望を見た気がした。
「ほら錐、彼女から連絡が来たぞ」
「嘘────でしょ……!?」
有り得ない、という顔をしている。そこまで信用無かったんか僕。
『穿刀くん!今日は色々あったけど、これから一緒に部活盛り上げてこーね^^
……あと、出来れば図書室のオカルト本をいくつか借りれたら嬉しいかな!私行ってみたんだけど、借り方がイマイチ分からなかったから……代わりにお願い!orz』
「うっせやろ穿刀のアニキ……こんな文体からキラキラオーラ出よるキャッピキャピの陽キャJKとホンマに付き合っとるんか」
「なんでエセ関西弁になるんだよ。……そうだよ。僕もとうとう非リア卒業したのさ」
そう言いながら、僕は火々谷さんに返信を打っていく。
『わざわざありがとう。実は僕も行ってはみたんだけど、図書委員がいなくてさ……汗
今日は結局借りれなかったし、明日は祝日だからまた明後日行ってみるよ!
それはそうと、僕の妹が火々谷さんの顔見てみたいって言うんだけど……写真とか送って貰っても大丈夫?』
「何妹を利用して彼女の写真GETしようとしてるんよ助平」
「違うし!本当に彼女だっていう証明!男子の成りすましの可能性を考えなかったのか」
「なるほどその手が!」
ピロリン。
写真が一枚送られてくる。カントリー風のオシャレで可愛い雰囲気の部屋、絵本やら参考書が種類別に整列した本棚、何故かメガネをかけた、破壊力抜群のモコモコした部屋着ショットが送られてきた。
「うわ、なまらめんこい……!!」
妹も思わず方言が出るほどの顔面偏差値の高さ。女子力の塊が画面越しに僕と錐の心を打つ。
「本当にこんな美少女と……お兄が……!?大変だ、早く晩飯作らなきゃ」
「えっなんで?」
「────お赤飯炊かなきゃ☆」
そりゃ確かにおめでたいのかも知れないけどさ。お赤飯の出番では無いだろ。多分。
「まぁ……晩飯考えるの面倒だし良いか」
蛇足かも知れないが、この後すぐに帰宅した父親・
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