40.国からの依頼
─40.国からの依頼─
俺達は成り行きで王立学園に来たが、そこで待っていたのはなんとクリスタ姫様だった
「予想していた……とは?」
「最初に貴方達の服装を見て、『あ、これはなんか王立学園となんやかんやありそうだなぁ』って思った次第です」
『なので何か起こる前に学園に言いに来たが、それよりも先にそれが起こってしまったみたいですね』とのこと
………先に言ってくれても良かったのに
「………まあそれと貴方達関連で学園への今後の相談といいますか、それもあったのです」
「……なるほど、それで学園長の元に来ていたと………おっとそうだ」
姫様がいて完全に忘れてた
「学園長、自己紹介が遅れてしまい申し訳ない、私が『スクラップアーミー』リーダー、永一です」
「いえいえ、タイミングを失ってしたのは私も同じです。王立学園学園長のリスターです。公認パーティーのリーダーに会えて光栄です」
俺とリスター学園長は握手をした
にしても『公認パーティー』か……慣れないな
「……それで、我々に関しての相談とは」
俺はそこが気になった
俺達の活動と教育機関には関係性が無いように見えるんだが……
「我々が話していたのは選択学科の追加です」
「ほう?」
選択学科とな
それはアレかな?俺の予想してるやつでいいのかな?
「来年度から中等部から選べる選択学科に『工業技術』を追加しようと思いまして」
「なるほど、……大体察せるんだが、一応設立理由を聞いても?」
「恐らく貴方の想像通りかと」
つまり、『戦車』という異世界の工業技術の結晶を見てしまったが為に、自国の工業力の強化を図ろうとした訳だ
しかも裏組織である教団が運用していたことも判明してしまった
現在のままではルーバス軍は例え1輛だろうと相手が戦車を出してきたら一切太刀打ちできない
その為に学生の内から優秀な人材を育成し、それに対抗しようと言うわけか
まあ、やりたいことはわからなくはないな
しかしな……
「んでもこれには欠けていることがあるんじゃないのか?」
俺はあえて聞いてみた
ここに気付いていなければ賛同はできないからな
「ええ、それはわかっております。そしてそこが一番重要という事も…」
「はい、今私達はまさに『ソレ』について話し合っていた所です」
なんだ、わかっていたのか
そして次に言われる事がわかったぞ
リスターさんがこちらに頭を下げてきた
「無理を承知でお願いします。引き受けてくれませんか?」
そう言ってきた
そうだよな、今『ソレ』を頼めるのは俺達くらいしかいないからな
だがな
「無理だ。そもそも兵器探しで各地を巡らなきゃならんのに『教師』なんてできるわけが無い」
「……そうですよね」
彼等が俺達に頼もうとしていたのは新設する工業技術科の教師役だ
そもそも学科を新設しようにもその分野についてこの世界の人間ではノウハウが無いから仕方がないがな
うーむ、心意気はいいんだがなぁ……
あ、そうだ
「なあ、1つ提案いいか?」
「なんでしょう」
「先の戦闘で俺達が撃破した『アレ』はどうなっているんだ?」
「『アレ』……ですか?………ああ、『アレ』でしたらかなりの重量があったので、今でもあの場に放置されています」
放置されてるのかい
重さが重さだから仕方ないけどさ
「わかった、……サラ、運べるか?」
「可能ですよ」
サラが即答した
IS-2も収納魔術で運べるし、イケるかと思ったが、あんなボロボロのスクラップでもイケるのか
「えっと……何をするんですか?」
状況が掴めていないのか、クリスタ姫様が聞いてきた
「ああ、俺達は『教師』として常駐はできないが、『教材』は置いていけるからな」
「……ああ、なんとなくアンタのやりたいことがわかったわ」
アメリアは察したみたいだな
「俺達が撃破したM6A2E1を持ってくる。最初は学科としては機能しないから、『学科』というより『研究機関』って感じになってしまうけどな。学生の希望者を募って
例え試作で終わってしまった兵器だろうと当時の最先端だったのは言うまでもない
こちらからは何もせず彼等が自力で構造を理解できればそれが彼等の知識となり、この世界の技術になる
そうすれば俺達異世界人がいなくたってすぐに工業技術を発展させられるだろうよ
なんせもう既に大砲なんて作ってるんだからな
彼等も馬鹿じゃない、ただそこに思い至る『きっかけ』が『魔術』という俺達の世界に無い技術によって減らされているだけに過ぎない
『魔術でやればそんな複雑な物が無くても簡単に済む』
それも1つの手だろうが、これでは工業技術は発展しない
俺はそう思っている
あわよくばそのまま……
……いや、ここから先には
「わかりました、戦車輸送に関してはお願いします。……それと公認パーティーに関してですが、やはり貴方がたの立場が特殊すぎる為、関係各所に書面だけでの通達を行う事にしました」
「まあ、その方が助かる」
大体的に発表して不特定多数に目を付けられたくないからな
まだ拠点の防衛も不十分だし
「あ、それとこれは別件なんですが貴方達に依頼したいことがございまして」
クリスタ姫様が何かを思い出したように
「一度、亜人連合を見てきて貰えませんか?」
そう言った
〜〜〜〜〜
「亜人連合を?どうして?」
俺は理由を聞いてみた
確か人間と亜人は仲が悪いとは聞いた事がある
そしてこれはアメリアから聞いた事ではあるが、亜人、特にハイエルフの連中は変態級の技術力を………あっ
「………もしかして、ハイエルフの技術力か?」
「半分正解です、ハイエルフの技術力は正直言って『異常』です。我々も断片的にしか情報が得られていないので連合のことに関してはよく分かっていません。亜人のアメリアさんは知っているかもしれませんが、イルグランテが保有している大砲も誰かがハイエルフから設計図を盗み出し、作成したからだと噂されています」
「私が
おかしな人間って俺の事か?なんと失礼な
俺はアメリアにジト目を向けつつ、気になっていた事を聞いた
「ハイエルフが変態って事はわかっていたが、それがどうした?俺達の世界にも技術力では一歩も二歩も先を行っていた国はあったぞ?」
左右非対称な奇っ怪な飛行機作った国とか紅茶キメてローリングボビン(制御不能)を作った国とか
「ですが、ハイエルフの技術力が目に見えて変わったのはここ数年での事です。それまでは至って普通でした。そして貴方達が現れてから私はある仮定を立てました」
「『彼等は恐らく召喚された兵器の解析に成功した』と」
「………なるほどな、それを兵器を知っている俺達……いや、俺に確かめてほしいと言うところか」
「そういう事です、もし召喚された兵器が向こうにあれば貴方の目的とも合致するのではないでしょうか?」
「まあ、そうだな……」
しかし、解析に成功しているのならばその兵器は蔑ろにされていない可能性が高く、厳重に保管されているかもしれないな
その場合、持ち帰ることは確実に不可能だし、触れてリンクを切れるかも怪しい
リスキーだが、最終的には絶対に行かなければならないし、他の手掛かりも無いからな……
それに俺も亜人連合には気になる事……いや、気になる『人』もいるからな
「皆はなにか不都合はあるか?」
俺は皆に一応聞いてみた
「うーん、特に無いですね。どちらかというと早くインプレッサを直してまた走りたいですが」とリン
帰ったらインプレッサのサスペンション交換だな
「私も特には」とサラ
「同じく」とミラン
この二人はいつも通りだな
「私は帰省って事になるけど……音信不通だった奴がいきなり人間とよくわからないモノ連れて帰ってきたらどういうリアクションされるのかちょっと不安ね、でも問題ないわ」とアメリア
その『モノ』って戦車とかだよな?俺じゃないよな?
「情報がほぼ無く未知の所ってなんだかワクワクしますね」とイオ
既に行く気である
「亜人ってどんなのがいるんだろ…すごく異世界っぽい」と美咲
安心しろ、異世界だ
「イルグランテでも連合に関してはそこまで情報は出回ってませんでしたね……」とロト
イルグランテでも同じ感じだったのか
まとめると、『意義なし』ということで良さそうだな
「わかった、一応連合は見てこよう。何も得られないかもしれないから期待しないで待っててくれ」
「ふふ、わかりました、期待して待っていますね」
冗談として受け取られたのかな
にしても公認パーティーになって最初に受けた依頼で行く国がまさか人間には未知数の亜人連合とはな……
さてさて、どうなることやら
〜〜〜〜〜
「すいませんフリードさん、話し込んでしまって」
「いやいや、俺もあそこに姫様がいるとは予想していなかったからね、案内はまたの機会にしよう」
「そう言って頂けると助かります」
「それじゃあまた何か困った事が言ってくれ」
そう言うとフリードさんは帰路についた
どうやらクリスタ姫様と話していたら結構な時間が過ぎていたみたいで、結局学園内を見る事なく戻る事になった
公認パーティー発表も書面だけで関係各所に通達されるから、もう帝都にいる必要性がほぼなくなってしまったので、明日M6A2E1を学園に届けて、そのまま拠点に戻るつもりだ
姫様からは「もう少しゆっくりしていればいいのに」と言われたが、なんせやる事があるからな
そう、思い返せばイオが加わった頃か、サラとミランが「武器(銃)がほしい」と言っていた事があったからな
今銃を持っているのが俺とリン、それに(勝手に使っているが)ベルドだけだからな
今回の遠征の前にある程度皆の装備を揃えておきたいんだ
それに流石に移動の足が毎回戦車ってのも燃費や乗り心地とか諸々で考え直さなきゃいけないからな
俺はどの武器がいいか考えながら、皆と一緒に城への帰路についた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます