39.王立学園
─39.王立学園─
「─はい、それではサラさん、ミランさん、アメリアさん、美崎さん、ロトさんのパーティー登録手続きが完了しました」
「そういえば、いろいろありすぎてこういう手続きしてませんでしたね…」
俺達は公認パーティー発表の準備が整う間、今までできていなかったサラ達のパーティー登録手続きに来ていた
一応決まりだし、公認パーティーになった後に『実は……』ってなっても面倒だったからな
ちなみにサセン達は来ていない、なんでも『他国の訓練を体験したい』んだそうだ、勤勉なこって
「にしてもかなりスムーズに手続きが終わったな、これからどうする?」
メンバーの追加に必要なのはパーティーの許可、要はリーダー直筆の許可証か、またはリーダーか副リーダーの同行以外本当に必要なかったらしく、あっさりと手続きが終わってしまった
ちなみにギルドに登録していない場合は俺が最初に書いた書類を提出する
………にしてもえらく緩いシステムだな
直筆の許可証とかめちゃくちゃ偽造されそうだけど
あれか?魔術的なセキュリティがあるのか?
確かにやれIDチップやら特殊印刷やらよりかは手間が無いかもな
と、そんな事を思っていたら
「おい、そこのお前」
見た目がゴロツキみたいな冒険者が声をかけてきた
日本だったら職質されてもおかしくなさそうだ
「……俺ですか?」
「ああ、お前だ」
「人違いです」
「まだ何も言ってねぇだろ!?」
こういうのには極力関わらないのが吉だ、絶対「お前みたいなひょろっこい若造が〜」とか言い出すに決まってる
「なんでお前みたいな王立学園の奴がこんな所にいるんだよ、お門違いだ」
「ん?王立学園?」
どういう事だ?
「永一さん、王立学園は帝都にある学園です。恐らく永一さんの格好がそこの生徒に似ているから勘違いしているのかと」
「ああ、なるほど」
今の俺の格好は元々着ていた高校のスボンに半袖Yシャツとこっちに来てから創ったブレザーを着ている
ブレザーに関しては、若干肌寒かったのと、銃を持ち歩く時に目立たせない為なんだが、主な理由は前者だ
ブレザーの材質は主にウールや綿、革が多いが、残念ながら恐らく俺の能力の対象外なので、化学物質であるポリエステルとケブラー49で創った
構造的にはケブラー49を内側にして外側をポリエステルにした感じだ
ケブラー繊維は紫外線に弱いからな
ちなみにケブラー49はボディアーマーや防刃ベストにも使われるめちゃくちゃ頑丈な繊維だ
その頑丈さ、鋼鉄の約5倍
お陰でめっぽう通気性が悪いが、元々寒いのが苦手な俺には好都合だ
にしても制服が似てるのか……
「なあアンタ」
「なんだ?」
「この格好を見て俺を王立学園の生徒と思ったそうだが、残念ながら勘違いだ」
「あ?そうなのか?」
「この格好は俺の故郷の若者の正装でね、知り合いの商人に帝都に行くって言ったらね……」
「なるほどな、早とちりしちまってすまねぇな」
「(……美崎さん、若者の正装って?)」
「(確かに間違ってないけど……学生服ではあるから、あの強面のおじさんが王立学園の生徒と勘違いするのは仕方ないと思う)」
「(てことは、永一さんは6、7割くらい嘘言ってるって事ですかね?)」
「(嘘も方便ねー)」
コラこそ
こっちは穏便に終わりそうなんだから、そういうのは後にしてくれ
というかアメリア、何故そのことわざを知っている?
「帝都のギルドには俺みたいな早とちり野郎が大量にいるから気をつけろよ」
「ああ、わかった」
「ホラ、あそこの席からこっちにガン飛ばしてる奴とかな」
「何だとこの野郎!!」
「な?」
「………お、おう」
そう言うとおっさんは名指しされてキレた冒険者に向かっていっていきなり顔面に一発叩き込んでた
……いや、何故?
殴られた方は当然ブチギレて乱闘が始まった……
もうこの野蛮エリア怖い………
俺達はそそくさとギルドを後にするのだった
〜〜〜〜〜
「何だったんだ、あのカオス現場は……」
「お酒に酔ってたんですかね」
「コイツとの会話は成立してたんだけど」
「訳がわからないよ」
「にしても学生か〜、懐かしいね」
美崎が呟いた
「確かにな、なんだかんだ楽しかったしな」
勉強を除いてな
特に数学
動く点Pはゆるさん
「アンタ達の世界の勉強ってめちゃくちゃ難しそうなんだけど」
「うーんと、法律とか数学、後化学は難しいかな?」
「数学法律は分かるが、化学は楽しかったぞ」
変化していく現象が楽しいんだよな
化学式はちょっとめんどくさかったがな
「にしてもこっちよりか難しい勉強をしているのは確かですよね」
「そうね、……ってことはコイツみたいな頭脳の奴がそっちにはゴロゴロいるってこと……?ちょっと、いやかなり怖いんだけど」
「えーと、永一くんはかなーり特殊だと思うよ?」
「そんなバカな」
「……永一くん、普通の高校生は飛行機とか戦車とか操縦する技術は一切ないよ?」
いや、それは情報が付与されるからで………うん、特殊だわ
そんな事を話していたら
「君達、ウチの生徒だな、こんな所で何をやっている」
俺らとは違う、確かに似ているが王立学園の物であろう制服を着た青年?少年?に声を掛けられた
〜〜〜〜〜
「ウチの生徒?まさか王立学園のか?」
「ああ、そうだ。こんな掃き溜めみたいな場所は我々王立学園生徒には似つかわしくないから来るなと教師からも散々言われているだろう。さっさと戻るぞ」
「掃き溜めねぇ……いや、俺達は学園とは無関係だが……」
確かに酒臭い冒険者とかしかいないけどさ……
というか教師からそんなこと言われてるのか
王立学園の生徒じゃないからわからんが
「ん?貴様……」
おや?何かに気がついたようだ
さては俺の制服が違っていて、王立学園の生徒じゃないことに気がついたかな?
「制服を改造するとはなんと罰当たりな!!それでも王立学園の生徒か!!」
「……」
………訂正、そんなこと無かったわ
まさか改造していると思われるとは……
普通制服違ったら「あ、他の学校の人でしたか」ってならない?
あ、もしかして近所に他の学校無いパターン?
てか俺の『学園とは無関係』発言スルーしやがったなコイツ
「何処の誰かは知らんが、俺達をどうする気だ?」
「学園に連れ帰り査問会だ」
「俺達が学園の関係者ではなかった場合は?」
「………なんだと?」
「『似ている制服を着ているから関係者だ』と決め付けるのは些か早計じゃないか?他の学校の人間とは思わないのか?」
「それは……いや、ありえない、帝都の学園はこの王立学園しかないからな」
やっぱりか
てか帝都、他に学校無いのかよ
てかコイツ、随分突っかかってくるな
「なるほどな、だがそれでもこう言わせてもらうぞ『俺達は学園関係者ではない』とな」
「そんな事、学園に戻ればすぐわかる事だ、いいから行くぞ」
そんな感じで謎の少年と揉めていたら
「ん?……揉め事か?……君達は確か……」
「おや?確か……」
「フリードだ、揉め事のようだが……」
たまたま近くを歩いていたらしい第一騎士団団長のフリードさんが現れた
「あ、貴方は……フリード騎士団長!?」
「揉め事……ではありませんが、彼が俺達の服装を見て王立学園の生徒と勘違いしているみたいでして…」
「ああ……確かに似ているな」
フリードさんは少年を見て
「君は王立学園の生徒だね、胸のワッペンと腕章から察するに高等部の風紀委員だと思うが、彼等は王立学園の生徒ではなくザギからのお客人だよ」
「そうだったのですか……申し訳ありません、早とちりして」
あっれー?フリードさんの言葉は音速で受け入れたぞー?
いや、わかるよ?疑っている人物の言葉より信頼している人物からの言葉の方が信憑性があるのはわかるよ?
でもなんか納得いかんなぁ……
「こんな事があった後で言うのもアレなんだが……実は例の発表後に学園の見学も含まれていてね、この際だから前倒しで見学するのはどうだろう?」
マジか、そんなのさり気なく組み込まれてたのかよ
それならこの後暇だし、先に消化するか
「この後特に予定も無かったしな……わかった、皆もそれでいいか?」
「問題ないです」
「予定も特になかったですしね」
「うん」
「そういえば、学園の内部は知らないのよねぇ……」
「学園、通っていたのは1年前なのになんだか懐かしいです」
「こっちではどんな勉強してるんだろ?」
「他国の学園ですか……興味ありますね」
うん、問題ないと判断しよう
それとアメリア、それは種族の性かもしれないが、あまり不審な動きはするなよ?
「こっちは問題ないです」
「わかった、では案内は私がしよう」
「いいんですか?」
仕事とか大丈夫なのだろうか
そう思っていたらフリードさんが小声で
「大丈夫、職務中の騎士の格好だが、今日の俺は非番だ」
と、そう言った
〜〜〜〜〜
「─デカいな」
「年齢的には小中一貫校レベルだよね…?」
「そのはずだが、もしかしたらルーバスの学校はこれ含めてかなり少ないんじゃないか?」
「なるほど?」
俺達はフリードさん (と風紀委員の少年)に連れられて王立学園に来ていた
その学園の建物を見て俺と美崎から出た感想がそれだった
聞いた話では初等部から高等部までの計9学年全てがここに集結しているらしいが、それにしても大きい
ぶっちゃけこっちの大学2つ分くらいあるんじゃないか?
案内なかったら迷う自身しかないぞ
「さて、じゃあまずは学園長の所に向かおう。なんせ飛び込みだしな」
「確かにそうですね」
「やっぱりいるんだ、学園長……」
そりゃいるだろうよ、美崎さんよ……
俺達はフリードさんの案内で学園の門を潜った
そこで目にした光景は……
「………おいおい、コイツは本当に学校なんかね?」
「………えーと、博物館?お城?」
俺達が想像していた学園とは程遠いきらびやかな装飾が施されたエントランスがそこにあった
正直何も知らされずに訪れたら美崎みたいな反応をしていたと思う
むしろ『元々城だったものを学園に改装した』と言われても納得してしまう自信がある
「貴族の来客が多いですからね、内装はかなり華やかに装飾しているんですよ」
フリードさんが解説してくれた
ああ、なる程な
華やかじゃないと嫌がる貴族もいるって感じかな
「学園長室はこっちだよ」
俺達が圧倒されていたらフリードさんが既に二階に続く階段を登っていた
「……私は教員に報告があるのでここで失礼します」
「うん、お勤めご苦労さま」
そう言って一緒に来ていた風紀委員の子はそそくさと何処かに行ってしまった
あ、結局名前聞いてないや
まあいいか
ここに来るまでにフリードさんについてわかったことは、オフの時はかなり温厚って事かな
口調もそうだし、最初にあった雰囲気は感じない
『優しい近所のおじさん』って感じだ
顔も男の俺から見てもかなり良い方だから、女性にも人気そうだ、イケオジってヤツかな?
俺がフリードさんに対してそんな事を思いながらついて行っていたら
「着いたぞ、ここが学園長室だ」
どうやら目的地に到着したみたいだ
〜〜〜〜〜
コンコンコンコン
フリードさんがノックした
そういえば思ったが、こっちでも入室のノックは4回なのな
日本では3回だが、海外では4回がマナーだ
ちなみに2回は『トイレノック』なので面接とかでやらないように
「………来客中です、どなたですか?」
中から若い男性の声が聞こえてきた
「騎士団長のフリードです、こちらも来客だったのですが……」
来客中な出直した方がいいかな?
そう思っていたら
「………こちらのお客様から入室の許可を頂きました。どうぞお入りください」
とあっさり入室許可が出てしまった
「では……、失礼します……ッ!?」
フリードさんが扉を開けてフリーズした
どうしたのだろう?
そう思って中を見たら……
「……姫様、やはり貴女の予想は当たっていましたね」
と言う青年の様な見た目の男性と
「でも貴方も予想はしていたんでしょう?」
と言いながらソファで寛ぐクリスタ姫様がそこにいた
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