36.第五竜騎隊
─36.第五竜騎隊─
「ふぃー、戻ってきたな」
「そうですね、これでゆっくりできます」
《………ちょっといいかしら》
《どうしたアメリア》
《………アレがあんたの言ってた『戦艦長門』……?》
《ああ、そうだが?》
《あんな城みたいなのが船だっていうの?あんたは》
《…
《あんなのが他に何十隻もいて負けたっていうの……?あんたのいた世界はどうなってんのよ………》
俺達は早々に拠点に戻ってきた
戦後の後処理は
んで俺達を出迎えてくれたのが、行く前に俺が創った戦艦長門だった
艦橋高いからね、障害物がほとんどない場所だとよく見えるぜ
出たときはちょうど入り江の木が邪魔でほとんど見えなかったが……
あの辺りもこれから土地開発していくか
その時戦艦長門から翼の生えたトカゲみたいのが飛び立った
「………アレがベルドの言っていた『保護した竜騎兵』か……」
先頭にいる竜には見知らぬ女性とベルドが乗っていた
〜〜〜〜〜
「永一、紹介するよ、彼女等が私の保護した竜騎兵達だ」
「紹介に預かった『イルグランテ第五竜騎隊』です。私は隊長を務めるサセンといいます」
「副隊長を務めるクレタリオです」
「アレグレッス」
「ん、シレン」
「ノーブルですわ」
「俺はこのギルドパーティー『スクラップアーミー』のリーダー、金山永一だ。君達を客人として歓迎しよう……しかし俺達は何故君達が保護されたのか知らない状態だ、まずはそこを説明してくれると嬉しいな」
「わかった、事情を説明しよう」
俺は屋敷の応接室で彼女達が何故ベルドに保護されたのか事情を聞いた
数日前に正規の船員を残して突如戦闘帆船数隻が港から消えた事
彼女達が捜索隊に抜擢された事
随伴で捜索用帆船3隻があてがわれた事
ここに来る道中で自国の船だと思われる残骸を発見した事
消えた帆船が向かったルーバス王国のフェニー村の調査も兼ねてフェニー村で休憩しようとした事
長門を発見、警告された事
一緒に来た帆船は『教団』が扱っており休戦協定を無視してルーバス王国に攻め込もうとしていて自分達は良いように扱われていた事
長門/ベルドに帆船が瞬殺された事
国に帰還しようとしたが、飛竜も疲れていたし、ベルドから『今戻ってもどういう扱いを受けるかわからん』と言われ留まっている事……
………なるほどな
「……大体事情はわかった、確かにベルドの言った通り今戻るのは危険かもな」
「……ベルド殿も言っていたが、それはどういうことなのですか?」
クレタリオが聞いてきた
「恐らく『教団』を危険視したのかもな」
「というと?」
「いいか?例えあんな大きさだろうと
「まさか……そんな………」
「現に俺達がザギと共に戦ったほぼ内戦に等しいルーバスとの戦いの主導者は、ルーバス王国親衛隊のナンバー2で教団の幹部だったからな。国家が丸々教団の手中でも不思議ではない」
「………」
「恐らく帆船8隻を襲撃前に失ったことは既に報せが飛んでいるだろう、そこで今まで何も知らなかった君達が帰還したとして国がどう対応するか…だ、今考えられる可能性としては3つある」
「3つ?」
「ああ、まず1つ目、『君達に箝口令を敷いて今まで通り従軍させる』」
「……それならわからなくもないッスね」
「んで2つ目、『君達に教団のことを話し、そのまま組織の人間にさせる』」
「私なら断りますわね」
「ん、断る」
「無論、目的の為なら法さえ破る行動を目の当たりにしたらそう答えるだろうな、そこで3つ目の可能性が出てくる」
「………それは」
「『目的の邪魔になる為、君達を監禁又は殺害する』事だ」
「「「「「………ッ!?」」」」」
「君達は軍に入って間もないと聞く、恐らくは未帰還でも大した痛手にならないと判断したんだろう、死んでいてくれれば教団の部外者で今回の法を犯した侵攻を知る者はいなくなる。しかし生存して帰還した場合は?教団の凶暴性を知った君達は仲間を集めてクーデターを起こすかもしれない。そうなると非常に邪魔になるからな。……とこんな感じだ」
国内でそんな事起こされちゃ他国への侵攻なんてやってる暇なくなるからな
当然早めに潰しに来るだろう
「………なるほど、確かに筋は通っている。しかしそれはあくまで『国や軍部が教団に掌握されていた場合』の事では?」
「だが、現在の判断材料から見るにほぼ間違いなく軍部は墜ちてる。こちらも慎重に行動しなければならない………それに」
「それに?」
「知り合って間もないとはいえ、そうやすやすと知り合いを死地に送り出したくはないからな」
「………ああ、そうか」
「今の話を聞いてそれでも行くのであれば俺達は止めない。しかし教団に手中にあると思われる国相手に支援もなく5騎だけで挑むのは自殺行為に等しい事はわかって欲しい」
「………ああ、承知した……少し、考えさせてくれ」
そう言って彼女達は退出した
〜〜〜〜〜
「………少し言い過ぎたんじゃないですか?」
「かもなぁ……ぶっちゃけ俺達も教団については手探り状態だ、もしかしたらイルグランテが国内の教団員を排除する為に海上戦力を犠牲にして誘導させた可能性もあるからな」
………どっちにしても新人とはいえ軍人だ、遠回しに『お前の国はもう駄目だ』と言われたら来るものがあるか……
「……まあ、後の判断は彼女達よ、私達は彼女達の判断を信じましょ」
「そうだな……んじゃ俺達も解散して各々休憩するか」
「ふぃー、やっとゆっくりできる感じかな?あ、永一くん、どこの部屋使っていいのかな?」
「何処でも構わんぞ、そういえばいきなりだったもんな。いろいろすまんな」
「いいよいいよ、同郷の人に会えてこうやって生を謳歌できてるから。ここじゃあ学校から宿題なんてモノも出ないしね」
「ハハハ、確かにな………」
「どうしたの?」
「ああ、いや……ちょっと宿題で向こうの事を思い出しちまってな……」
「………家族とか友人とかかな?」
「まあ、そうだな」
俺の両親は既に他界していたから家族に関しては問題ない
──お疲れ、また一ヶ月後になー
──何言ってんだ?俺が勉強するとでも?
俺はこっちに来る前に別れた友人を思い出していた
俺をミリタリー方面の沼に叩き落としたアイツは元気にやっているだろうか………
俊介、お前がこの沼に落としてくれたお陰で俺は何とかやって行けてるぞ
だがな、お前は俺がいなくても紅茶を控えて勉強してろよ
なあ、
〜〜〜〜〜
「………して、隊長どうするんスか?」
「…………私は……どうしたものか……」
「そうですね、私は今国に戻るのは得策じゃないと思いますね」
「クレタリオ?」
「同胞の事は確かに心配ですが、彼の話で現状、我々は国に戻ってもどうしようもできないのがわかってしまいましたからね…」
「確かに、しかしあの推察力……彼は何者なんですの?」
「あんな未知の兵器を扱えるのも不思議ッス、ルーバス王国の人間じゃないとは言っていたッスけど、解せない点が多すぎるッス」
「というと?」
「……コレ、あの城にあった文字と思われるものを写してきた」
「……確かに見たことない文字よね、どこの国の文字かしら」
「しかも色んな所が俺達が考えてもいなかったようなレベルで効率化されていたッスからね」
「この国の軍事力が
「彼は私達の知らない未知の超大国の人間という事か……敵に回したくはないな」
「わかった、暫くここに留まろう、彼は謎な所があるが、皆もそれでいいか?」
「「「「意義なし」」」」
〜〜〜〜〜
「あー………やっぱり駆動輪歪んでるよ……破城槌を思いっきりトルクで粉砕するのは良くなかったか……」
「永一、何やってたんだよ………」
「そっちこそ、帆船相手に水平射で三式叩き込むのはエグすぎるだろ………」
「副砲射程外だったんだもん………」
「ぶっ叩いたら直るかな?」
「いや普通に交換しろよ!?」
俺とベルドはIS-2の整備を行っていた
コイツも頑張ったからな、メンテナンスは重要だ
そこに第五竜騎隊の隊長、サセンが現れた
「えっと……何やっているんだ……?
「
「ああ、皆暫くここにいるよ」
「そうか、それは良かった」
「しかし……改めて見ると本当に見たこともない物ばかりだ」
「まあ……だろうな」
「それについて話してくれたりは?」
「そうだな……君達が話すに値すると判断すれば……かな、安易に動かされると事故に繋がるし……あ、部屋は好きなところ使って構わないから」
「……そうか、わかった。君にそう思われるように努力しよう」
そう言ってサセンは屋敷に戻っていった
「残ってくれて良かったな」
「ああ、どうなっているかわからないところに合って短いとはいえ知り合いを安易に向かわれたくはないからな……」
それが例え彼女達の祖国だとしても……だ
「これでこっちは大体落ち着いたかな……あっ」
「どうしたベルド?」
「い、いや、あの……ボルトねじ切っちゃった……」
「は?………オイオイ何やってんだよ……」
イルグランテがどうなっているのかも近々確認しに行かなきゃいけないかな?
そんな事を思いながら俺は修理をしていった
まずはベルドがねじ切ったボルトからだな……
やれやれ……
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