35.終戦
─35.終戦─
「何だと!?鉄巨獣がやられただと!?」
「ハッ、接敵した者からの報告だと相手は鉄巨獣二体を用いたようです」
ボロスは自陣で
「まさか奴らも鉄巨獣を持っていたとは……しかし、誰が扱っていた?軍か?」
「諜報隊によると、軍ではなく外部から参加したギルドパーティーのだそうです。内一体は恐らく以前持ち出された物かと」
「なるほど、あの二人が関わっていたか……しかし、アレは扱い方が判らなかった方だ、どうやったのか……」
「もしかしたら、相手に扱い方を知っている人間がいるのかもしれませんね」
「……となると脅威だ、数で取り押さえる様伝えろ」
「ハッ」
「ボロス様!緊急事態です!」
「何があった」
「それが……敵巨獣が前線に乱入しました!そのまま前線は崩壊、敵本体が鉄巨獣を連れてこちらに向かっていますッ!」
「ッ!?何だと!?すぐに守りを固めろ!」
「ハッ!」
「フッフッフ………ボロスくん………いくら守ってても『影』を守れてないよ……」
〜〜〜〜〜
『誰かあの鉄巨獣を止めろぉぉぉぉぉ!!』
『駄目です!矢が効きません!』
『クソッ!やってやる!やっやるぞぉぉぉ!!』
『おい!辞めろ!無茶だ!』
『撤退!撤退ィ!!』
「ハッハッハァ!!どうしたどうしたぁ!俺達はここだぞ!かかってこいやぁ!!」
「それそれぇ!早く逃げないと轢いちゃいますよぉ!!」
「………永一さんとリンさん、とっても人前に見せられない顔してますよ……」
「どちらかというと悪人っぽいよ?」
俺はM6A2E1撃破後、膠着状態に陥っていた前線に向かい、敵陣営を容赦なくかき乱していた
ちなみに
現在は俺達が暴れまわったからか知らないがザギ軍が優勢だ
しかし……
「あの部隊長2人、メチャクチャ強いな」
俺は前線で戦っているキースさんとジギルさんを見た
ジギルさんは身の丈ほどの大剣で相手を剣ごと断ち切っている
キースさんは細身の長剣で目にも止まらぬ早さで敵に構えさせる前に切り伏せていた
どちらもまさしく一騎当千、しまいには姿を見ただけで『あの人達がザギ出身者だったなんて!』だとか『『剣鬼』のジギルと『瞬閃』のキースが相手なんて勝てっこねぇよ!』とか言いながら逃げていく敵までいる始末だ
有名人なのかあの2人
てか『剣鬼』と『瞬閃』って二つ名持ちだったのね
俺の『きっとヤベェ奴リスト』に追加しようかしら
「永一さん、そろそろ燃料がヤバいです」
リンが言ってきた
確かにあんなに走り回ってたら
「わかった、一旦戻ろう。すまない、俺達は補給で一旦戻る、後を任せても大丈夫か?」
俺はキューポラを開けて近くにいた味方の騎士に言った
「はい!後は我々にお任せ下さい!」
「アンタらのお陰で早く終わりそうだぜ!」
「お前らの無双っぷり、凄かったぜ!!」
「お前等!彼等が作った活路を無駄にするなよ!俺達も部隊長に続け!!」
「「「応ッ!!」」」
他の味方騎士からも称賛を送られつつ俺達は一旦東門に向かった
〜〜〜〜〜
─燃料補給中
俺はサラからベルドが敵帆船を撃破したという報告を受けていた
ちょうど
「……えっと、どういう状況だってばよ」
「ベルドさんからはそう言われたんですけど………」
「撃破まではいいんだが、竜騎兵5人の保護って……どういう事なの……」
ベルドよ、一体何があった?
いや、何やった?
「にしてもベルドさん、どうやって帆船3隻なんて撃破したんですかね?」
「確かに、私達みたいに空から一方的に攻撃したわけでもなさそうだしね」
そういえばこいつらには長門を創ってることを話していなかったな
出発時もちょうど見えない所にいたし
「ああ、出発前にベルドには『長門』を渡してある」
「ナガト?」
「長門って……まさかあの!?」
リンはすぐわかったみたいだな
「ああ、あの『灰色の塔』を積んでいた戦艦だ」
「え、日本の戦艦ってヤマト位しか知らないんだけど……他にもいたの?」
「知らんのか……いや日本史の教科書には普通載ってないから仕方ないか……」
太平洋戦争のページがたった2ページってどういうことだよ
かなり重要な所じゃないのか
「そうだな……太平洋戦争時に活躍した『戦艦』というカテゴリーの日本艦船なら12隻いたぞ」
「そんなに……ちなみに全部名前言えるの?」
「もちろん」
「即答……というかそんなに戦艦がいて勝てなかった米国って……」
「いや、当時既に戦艦の時代は終わって空母の時代だったしな……てかどっちにしろ数で負けてる……最終的には文字通り桁が違った」
「うわぁ……」
「え、ちょ、以前あんたの国の戦力聞いたことあるけど、それで負けたの!?」
俺と美崎の会話にアメリアが反応した
確かにあの時は『その戦力を持ってして負けた』なんて言ってないからな
「ああ、見事に負けたぞ」
「嘘でしょ……」
更に言うと都市2つ吹き飛ばされたし、首都も焼かれたんだよな……
往生際が悪いからって何も都市を無に返す必要なかっただろ米国よ
戦争法無視にも程があるぜ
「まあ、それでも国は残ったし、今ではその戦争してた国とは友人同士だ」
「なんで戦争した国同士で仲良くなってんのよ……」
「なんでかなぁ……まあ、あの国と本気で戦争したのは俺等の国だけだからなぁ………認められたんじゃねぇの?」
『雨降って地固まる』ともいうしな
雨というか超大型台風だったけどな
むしろよく10倍以上ある戦力差のなかで数年戦ったよ
とも思う
距離も1つの理由かもな
燃料補給をしていたロトがこちらに来た
終わったかな
「補給、終わりました」
「ロト、済まないな」
「いえいえ、ただの水と違うのでなかなか楽しいんですよ、これが」
「お、おう……」
ごめん、その感覚はわからんわ………
「そ、それじゃ後は掃討戦だ、あと少し頑張ろう!」
「「「「おー!!」」」」
〜〜〜〜〜
「お、補給終わったのか?」
「あ、キースさん、今どんな感じですか?」
「あとは主導者引っ捉えて終わりって感じだ」
「俺達の出る幕が無かったですね」
「嘘つけ、相手の戦車……だったか?を撃破してくれたじゃねぇか」
「アレは俺達の仕事でしたからね、てか案外あっさり終わりましたね」
「まあ、逃げてく奴らが多かったのもあるし、誰にも止められない金属の塊が暴れてたりしたからな」
「ははは……」
俺達は前線にいるキースさんと合流した
今回は
なんでも東門はマルスさんが『この程度なら俺一人で大丈夫』と言ったそうだ
なんでも『鉄壁』の二つ名持ちだとか………
部隊長全員二つ名持ちなんだが、これが普通なんかね?
………いや、キースさんとジギルさん見た時の兵士の反応を見る限りそうじゃねぇな
もしかして、旧ザギネルラって小国ながらとんでもない国だったじゃ……
「しかしまあ、改めて見ると凄いな、それ」
「
「ああ、お前たちの戦いを見てた奴から聞いたが、そんなん出たんじゃ俺達騎士の立場がなくなっちまうな」
「いやいや、コイツからしたら死角から来る歩兵はなかなかの脅威ですよ」
ぶっちゃけ超近距離は苦手なんだよね
そんな話をしていたら騎士の一人がこっちに来た
「どうした」
「キース部隊長、エルマス部隊長が敵主導者のボロスを捕縛したとの報せがありました」
「そうか、ご苦労」
「ハッ」
エルマスさん、何やってるのかと思ったら主導者引っ捉えてたよ……
いや、彼女の能力は隠密特化だ、それくらい造作もないのかもな
ホント、忍者より忍者してるよ……
「俺は主導者の所に向かうがお前達はどうする?」
「俺達も行きます、逃げられても追いかけられるように」
「恐ろしいな……わかった一緒に向かうか」
うーん、と言っても
そうだ
「あ、それなら乗ります?」
「………いいのか?」
「全然大丈夫ですよ、そっちの方が楽できますし」
「確かにな、じゃあ頼む」
「頼まれました」
戦車体験会の時間だ
俺はキースさんを乗せてエルマスさんがボロスを捕縛したという場所に向かった
〜〜〜〜〜
「クッ……卑怯だぞ、『潜影』………!」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「キース、到着しました」
「早かったな……なるほど、それはそういう使い方もできるのか」
「ええ、図体はデカイですからね、ある程度兵士を運ぶことはできますよ、バーチス指揮官」
俺達が到着した時にはボロスが捕縛されたテントには既にジギルさん、エルマスさん、バーチス指揮官が集まっていた
「……で、この人がボロスですか」
「ああ、今回の主導者だ」
「お前等……こんな事をして本国が黙っていないぞ!!」
「フン、いざとなればまたザギネルラとして独立してやるさ」
「小国風情が……!」
「その小国に良いようにコテンパンにされたのは誰かなー?」
このボロスとか言う人、簀巻きにされているのによくしゃべるな……
「黙れ!………クックック……良いのか?部隊長がこんなに集まっていて、今頃ザギは大変だろうなァ……」
「どういう事だ?」
何か仕掛けてたのか?
「そろそろイルグランテの部隊が襲撃しているかもなァ……『鉄壁』だけで耐えられるかな?」
「ああ………それか……」
そうか、コイツはイルグランテの船団が増援含め全て海の藻屑になったの知らないのか
俺は前に出た
「イルグランテの船団なら増援含めて全て海に没したぞ」
「何だ貴様は」
「ちょっとした新参ギルドパーティーのリーダーだ」
「でしゃばりが……待て、全て没しただと…?」
「ああ、俺達が海上で容赦なく沈めてやったわ」
「何だと!?あの船団をだと!?」
「ついでにお前の虎の子の戦車……ああ鉄巨獣だったか?アレも撃破したぞ」
「………そうか、貴様、いや貴様等が我ら『教団』に楯突く存在だったか……神託にあった通りという事か……」
「待て、どういう事だ」
神託だと?
神が俺達を予言した?
そもそも俺や美崎をこっちに飛ばしたのも
別の神が教団に味方しているのか?
「まさか救援に駆けつけようとしたら既に終わっていたとは……」
「ん?」
そこでテントに誰か入ってきた
金髪ロングの騎士の格好をした女性だ
こんな人いたか?
いや、救援?
ん?どゆこと?
ここで驚いたのがバーチス指揮官だった
「姫様!?」
「ヒメサマ?」
姫様ってアレ?……アレだよな?
「……マジ?」
「ええ、マジですよ、永一さん」
イオがISU-152-2から降りてきた
「イオ、知っているのか?」
「はい、……久しぶりですね、クリスタ」
「久しぶりですね、イオ。去年の卒業式以来かしら」
「………えっと」
え、イオが姫様とか言われた人と親しげに話してるんですけど……
え、ホントにイオって何者?
そこでイオが振り返り
「紹介します、この方はクリスタ・フォン・ルーバス、このルーバス王国の第一王女であり、私の親友であり、私にイルグランテの船団の情報をくれた方です」
「ご紹介にありましたクリスタ・フォン・ルーバスです。気軽にクリスタと呼んでください」
「俺は金山永一だ。今回訳あってザギの騎士たちと共に戦っていて、そこのイオが所属する新参ギルドパーティーのリーダーだ」
「ちょっ……!」
「まあ、私を一国の王女と知って態度を変えない人なんて久しぶりに見ました」
「確かに不敬か……いや失礼、敬語を使ったほうが良かったですかな?」
「いえ、ただ珍しかっただけですので敬語は無くていいですよ、それにイオが所属してるパーティーのリーダーなら尚更です。だって
「そうか、ならそうするよ。パーティー『スクラップアーミー』のリーダー、金山永一だ、改めて宜しく」
「パーティー『スクラップアーミー』ですか……覚えました。これからもイオをお願いしますね、永一さん」
「お願いされた」
〜〜〜〜〜
「して、
俺はクリスタがきて呆然としているボロスを指差した
「それなら私が引き取ります」
クリスタが手を上げた
「仮にも我が国のナンバー2の騎士です。責任は我が国が持ちます。それに、背後関係も調べなければなりませんし」
「なるほど、わかりました。それでは我々からはエルマスを向かわせます」
「尋問なら任せてください姫様!」
「はい、頼りにしています。…それでは貴方達、ボロスを運んで下さい」
「「ハッ」」
「……ハッ、まさか姫様まで来るなんて……!クソッ!こんなの聞いていないぞ!?お前等、『教団』が黙っていないぞ!?クッ……離せ!!」
「はいはい、言い訳は王宮地下監獄で聞きますよ〜」
「クソがァァァァ!!!」
ボロスが運ばれ行った
「あ、そうだ永一さん」
「どうした?」
「もしかしたら近いうちに王宮に呼ぶかもしれないので、宜しくお願いしますね」
「マジですか……」
おいおい、俺、そういう作法何も知らないんだけど
横でリンとか美崎とか震えているんだけど
「あ、それと貴方達の拠点にも遊びに行きたいので、その辺りもお願いしますね」
「お、おう……」
クリスタは俺達の後に鎮座している戦車達を見ながら言った
まあ、そうだよね。気になるよね
「それでは皆様また会いましょう」
クリスタはそう言って去っていった
〜〜〜〜〜
キースさんたちも『事後処理がある』と言って先に戻っていった
「………終わったのか」
「ええ、終わりましたね」
これでこの戦争も終わったのか
随分あっさりしていたような気がするな
「そ、それより永一くん、どうしよう………!お城にお呼ばれだよぉ……!」
「美崎、落ち着け」
「いや普通落ち着けないから!!」
「落ち着いて諦めるんだ」
「諦めるの!?」
「俺はもう取り返しつかない事だしどうしようもないから諦めてる。だから落ち着いてる」
「えぇ………」
「まあ、いろいろあったけど、俺達『スクラップアーミー』の初仕事は終わった!!さあ、帰るぞ!!」
俺達の初仕事は無事終了した
これから事後処理関係で忙しくなるが、それ以降は暫くはゆっくりできそうだな
俺はそう思いながら帰路に付いた
「………あ、永一さん、ベルドさんが保護した竜騎兵5人はどうしましょう?」
「…………そうだったァ………!!!」
………訂正、暫くゆっくりできそうにないわ
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