20.棄てられた村 Ⅱ
ー20.棄てられた村 ll ー
あの後、依頼完了の報告をしにザギのギルドに来た
「あ、今朝の方たちですね?何か忘れ物でも?それともやっぱりお辞めになります?」
「いや、依頼が完了したんでな」
「………え?今、なんて?」
「え?依頼完了ですよ?」
なにもおかしな事は言っていない
「いやいやいや待ってください、ここからフェニー村まで片道1日以上掛かるんですよ?そんな距離にある村に朝行って依頼を終わらせて殆ど半日で帰ってくるなんて、そんな芸当できませんよ!」
あ、いっけね、軍の上の人たちは(俺のせいで)車の事を知っていても一般人は知らなかったんだった……
「ま、まぁちょっと特殊な方法でな?あまり公言できないんだよ」
「そ、そうですか……とりあえず確認しますね、カードを出して下さい」
「ほい」
「では確認します………討伐したモンスターはゴブリンが53……53!?」
……ん?
「そんなに驚くような数字なのか?」
「1つ確認しますけど、ゴブリンは集団ですよね?」
「ああ、次から次に出てきたぞ」
「よく二人で戦えましたね……この規模ですと軍1小隊でも危険な時があるんですよ?……どうりでCランク冒険者達が失敗している訳です」
「そうだったのか…」
これ以上何か言うとまた話がややこしくなるから適当に切らせてもらおう
周りからの視線もあるし……
~~~~~
「それじゃあ報酬も貰ったし、帰りますか」
「そうですね、結構時間とられちゃいましたし」
周りの連中から質問責めにされる前にさっさと撤収しよう
奴らクッソ酒臭いし……
「あ、ちょっと待ってください」
まさかの受付に呼び止められた
「えぇ……もう用は済んだだろ…」
「実は伝え忘れていたのですがフェニー村関連の依頼はもう1つセットだったんです」
『失敗報告が多すぎて長らくわすれていました』とのこと………
「はぁ…」
一応聞いておこう
「あの村及びその周辺の開拓、整備の依頼なんですが……」
「それ、建築関係の連中の仕事じゃね?」
完全に専門外だ
「いやいや我々はいわば『何でも屋』ですよ?」
………そうだった
「それに2つ達成すれば村周辺の土地をくれるみたいですね、悪い話ではないと思うんですが」
「……太っ腹過ぎないか?何か裏がありそうだが……」
「あの辺りはモンスターが多いので………」
「大体察した」
つまりあれだ、『廃村のモンスター駆除できる人間ならあの辺でもきっと生きていけるからもういっそ土地の管理ごと任せて押し付けちゃえ☆』とそういうことらしい、全投げも良い所である
確かに土地を、それもかなり広大なレベルを貰えるのはありがたい
アレも建設できそうだ。おまけに隣は海ときた
「建物の取り壊しとかも完全にこっちに任せるってことでいいのか?」
「えぇ、お願いします」
「てか村じゃ無くなるけどいいの?」
「大丈夫……じゃないですかね?」
「お、おう……」
仕方ないから俺は引き受けることにした
~~~~~
「……良かったんですか?引き受けちゃって」
「どっちにしろ相当な広さの土地は欲しかったし、いいかなって」
「何を作る気だったんです?」
「『滑走路』ってやつ、直線距離で大体2500~3000mは欲しいんだ」
そのくらいあればとんでもなくデカいやつ以外は離着陸可能だ
確かレシプロ機は離陸に最低1000m、ボーイング747の離陸に最低2500m必要だったかな?
大型旅客機なんて飛ばしてどうするんだって話だが……
だって他に滑走路なんて代物、この世界には無さそうだし
「3000m!?3kmですよね!?長くないですか!?」
「詳しくは村に向かいながら話すよ」
~~~~~
「金属で空を飛ぶんですか……飛竜とかを使わずに」
「一人乗りから何百人と乗れるのまであるぞ?流石に何百クラスは飛ばす意味がこの世界には殆どないがな……っと着いたか」
取り敢えず周囲の警戒だな、またモンスターが要るかもしれない
「金属で空も飛べる世界で陸上にはそういうのはこれ(車)を除いて何か無かったんですか?」
「あー、あるにはあるんだが………何分人手不足でな」
確かに戦車とかいう鉄の塊はあるし、鉄道もある
だが二人で運用できるかとなると難しい
イタリアの二人乗りの豆戦車?
あれ可愛いだろ?
狭そうだけど
「そうなんですね……」
「まあ、作ろうとは思ってるけど」
豆戦車ではないけど
………どうやらモンスターはいないみたいだ
「取り敢えずはモンスターもいないみたいだし、村の状態確認でもするか」
「そうですね」
~~~~~
「うーん、これは……」
「なかなかに酷いですね……」
以前はモンスター討伐であまり気にしていなかったが、建物は殆どが木造、朽ちて崩れ始めているのが多かった、モンスターが荒らしたせいかもしれないが……
あ、以前俺が撃った弾痕もあるな
「修復は無理そうだな……一旦全て取り壊すか」
「というか滑走路なんていうもの作ろうとしてたのなら最初から取り壊す気だったでしょうが」
「いや、一軒くらい状態のいいのがあれば改装して一時的に拠点にする気だったさ………ん?」
一軒だけ不自然に綺麗に残ってる建物がある
規模的には領主の屋敷みたいだな
「綺麗に残ってるヤツがあるな、アレは保存する方向で」
「なんか結界っぽいのが張られてますが…残すんですか?」
「結界なんて俺にはわからんが……むしろそういうのがあるってことは何かあるってことだろうからな」
今度調査してみますか
…取り壊しにはショベルカーかな?
重機にはあまり詳しくないんだが造れるかな………
取り敢えず念じてみる
「………よし、」
「何ですか、これ」
「ショベルカーってヤツ、取り壊しにはコイツが便利なんだ、俺も詳しくないけど」
目の前には想像した通りのショベルカーが
どうやらコイツは『コマツ PC25MR』というらしい
【乗り物(陸上)/小型重機 一部開放】
・PC25MRを創造したことで【乗り物(陸上)/小型重機】のレベルが上がり、【乗り物(陸上)/大型重機】にステップアップしました
・PC25MRの情報を付与しました
お、良かった
重機なんてふれたこともなかったからよくわからなかったんだ、これでメンテナンスができる
一応油脂類の確認だ
壊したくないからね
ー数分後ー
「……あった!これだ、……えーとオイルは………入ってるんかーい……」
重機も該当してたのね…
今回無いのは燃料だけだ
【乗物(地上)創造レベルが4に上がりました】
・燃料が同時創造できるようになりました
燃料追加か、なんだか便利な項目が追加されたぞ
~~~~~
「えーと、操作は大体こんな感じか」
「凄い動きしてましたね、というかこの帯みたいのは何なんですか?」
「重機なんて扱うのは初めてだったから面白くてな……っと、あぁ、キャタピラーのことね」
「キャタピラーっていうんですか、一体何の意味が?車輪だけでいいと思うんですが」
ちょいと説明するか
「これは簡単に言うと未舗装路とかを走行するときに役に立つんだ、車輪だけだと地面に触れる場所が極一部だけに限られるから、その場所だけに圧力が掛かる、んでもこいつを車輪と地面の間に挟むことで地面に触れているキャタピラーの面全てにその圧力が分散されるって感じだな、泥の上に立っているよりは寝そべったりしている方が沈まないだろ?」
更にいうと多少の起伏や穴、障害物とかも迂回することなくスムーズに走行することができる
無限軌道は素晴らしい
「成る程、確かに車輪だと泥にハマって動けなくなることもありますしね」
永一「そゆこと、特に農業系や工業系に多いかな?まあ、不整地での仕事が多いからな」
それじゃ、作業を開始しようかな
そう思って車両に乗り込もうとした時に
「あ、因みに、操縦してみてもいいですか?」
と、リンが訪ねてきた
「………まあ、建物解体するだけだし問題なかろう、………わかった、操縦方法を教える」
「やたっ!」
~~~~~
ガコン、ズガガガガガガ…
スゲェ、あの娘、重機というか乗り物初めて扱うのにめっちゃスムーズに動かしてるんですけど……
この世界の技術者は伊達ではないな……いや才能か?
そんなこんないってるうちに1件目の解体が終わった
「永一さーん!これすっごく楽しいです!」
………メチャクチャ目が輝いてるよあの娘
「楽しいのならそのまま続けていいぞー、解体は任せた!俺は別の作業をやってる!」
「やたっ!ありがとうございます!」
リンにこのまま任せても問題無さそうだし、俺は次の事でもやりますかね
俺はある重機を造り出した
ブルドーザーである
コイツは『コマツ D39EX』というらしい
小型ブルドーザーだ
大体2000m位フルフラットにすればいいかな
3000mにしても絶対必要ないし
そう思いながら俺はエンジン確認から入るのであった
~~~~~
「永一さーん!建物の解体はあらかた終わりましたよー」
「早いな…てかこんな時間か……わかったー!」
いつの間にかすっかり日が傾いている
野宿は流石に嫌なのでザギに戻るとしよう
「にしても凄いですね、あの腕みたいなのは一体どうやって動いてたんですか?」
「ああ、アレは油圧で動いてるんだ」
「油圧?」
「油圧っていうのは、簡単に言うと液体の圧力で物を動かす仕組みの事だ」
「圧力……ですか」
「ああ、液体は形を持たないが、圧縮しても潰れないからな、ただし水だと腐食したり金属が錆びたり凍ったりして使い勝手が悪いからな、そこでそんな変化が少ない『油』を使うんだ、だから『油圧』なんだ」
「なるほど、してその油圧を掛ける仕組みはなんですか?」
俺は油圧ポンプと油圧シリンダーの絵を描いた
「油圧ポンプを使う、これは一定方向に油を押し出し続けることができるんだ、これで押し出された油がこのシリンダーと呼ばれる空間に押し込まれる、んでこの空間には一方向だけ押し広げられる壁があるんだ」
シリンダーの先にアームを追加した
「さっき言った様に油は押しつぶされない、押し広げられる物があればソレを押し広げる、今回はこの壁だ、ここ以外はビクともしないからこの壁を押し広げるように油圧が掛かる、結果この壁はもの凄い力で押し広げられるワケだ」
俺はシリンダー今圧力を掛けている部屋に『A』と書き、反対側の部屋に『B』と書いた
「そんで今回は元にも戻さなければならない、戻すにはどうすればいいか?答えは簡単、反対側にも油圧を掛けられるようにするんだ、今はこの『A』に油を送っているが、今度は油圧ポンプが『A』への供給を止めて『B』に油圧を掛けるようにする、そうすると今度はほとんど同じ力で真逆の動きができるんだ」
ショベルカーの油圧システムの説明はこんなもんか
「なるほど、………というかよくそんなこと見つけられますよね」
「過去の技術者にはホント頭が下がるよ……さて、ザギに撤収するか」
~~~~~
~次の日~
「おはよう永一くん、聞いたよあの廃村一帯貰い受けたみたいだね」
「おはようございますエルマスさん。流石元諜報屋、情報が早いですね」
朝からエルマスさんに会った
この人が朝普通に起きてるとは……
「まぁね、ところでこれからまた村に行くの?」
「そのつもりです、計画だけでまだ何も建ててないですからね」
建物の取り壊しはしたけど
「そうなんだ、いやーこれからね、あの大砲を調査するとかでまたあそこに向かうんだけどさ、君にも来てくれないかなーって思ったんだけどね」
「なるほど……確かに俺も行った方が良さそうですね、リンも行きたがると思うので後で声を掛けておきます」
あの41cm砲、調査してどうするんだか……
そもそもこの世界にアレはオーバーテクノロジーだぞ……
載せる艦もないしな
俺は出発準備を整えようと部屋に戻った
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