10.ザギネルラ
ー10.ザギネルラー
俺がクエストボードの前(正確には俺のWRX探しの依頼書の前)で頭を捻っていたら
「あの、その依頼に興味があるんですか?」
と、後ろから声をかけられた
振り替えると騎士みたいな鎧を着ている少女がいた
恐らくこの街の騎士なのだろうが、どことなく鎧のサイズが合っていない
新米なのだろうか
「いや、今日登録したばかりでどんな依頼があるか見ていただけだ」
「そうですか……実は我々軍も時たま依頼を出したり、オフの人が依頼を受けたりしているんですよ、貴方が今見ていた依頼も我々が出したものです」
「驚いた……まさか軍も依頼を出したり受けたりしているんだな」
てっきり民営のギルドと国営の軍で完全に別れてるのかと思ったよ
「ちなみにその依頼についてですが……何か心当たりとかありますか?」
騎士の少女がおずおずと聞いてきた
ぶっちゃけ心当たりしかない
俺が街外れの茂みに隠してるやつとか
話していいものか……
いや、待てよ?
ここで話して俺の目的も伝えればこっちも情報をもらえるのでは?
「心当たりはある、んでも俺「え!?話だけでも聞かせて貰っていいですか!」…お、おう……」
~~~~~
「自己紹介が遅れました、私はリンと言います。この街で騎士をやっています…………まだ新米ですけど」
「俺は金山 永一。永一で構わん」
「エイイチ、さん…… 随分変わったお名前ですね」
よく言われます
「それで、なんでまたそんなもの探してるんだ?」
一応聞いておく
俺の予測では”手に入れて移動手段にする”ってのが一番ありそうな理由だ
移動が徒歩か馬が主流のこの世界、”馬より速い”ってだけで欲しがる奴は多いだろう
特に貴族や軍関係はな
「商人から聞いた話では”モンスターではない”とのことなので、”移動に使えるのではないか”と隊長は考えているみたいです」
予想通りだな
でも渡す訳にはいかないな、俺がやらなければいけないことは技術提供ではない
「そんな事を考えるなんて、近々戦闘でもあるのか?」
「そうでない事を祈りたいんですけど、最近帝都親衛隊の活動が変みたいでして」
「ん?」
リンが小声で呟いた
「変?どういう事だ?」
「こう言うの一般人に話すのはタブーなんですけど、数日前に帝都の親衛隊の人達が来て、まるで我々ザギの軍を脅すような事を言っていたんです」
一応同じ国の軍だろ?穏やかじゃないな
「そんな話が聞こえたあと隊長と話して帰って行ったんですけど、その後に隊長が不機嫌だったので恐らく脅しみたいなことを隊長に言ったんだと思います」
ここで疑問が生じた
「待てよ、ザギの軍はこの王国から独立した軍隊なのか」
「ええ、ザギ……いえザギネルラは数年前まで独立国でした、ここの軍はその時の軍隊のままです」
「なるほどな……」
つまり今はここルーバス王国に占領されているということか
「ちなみに脅される原因ってのは大体予測できてるのか?」
会話をしていてわかったがこの娘は口が緩い
不意にポロッと重要な事を話してくれそうだ
「恐らくは占領されてからも頑なに開示していない我々ザギネルラの機密文書かと……このまま行けば……」
恐らく大規模な戦闘に発展するだろうな…
「………アンタはどうしたいんだ?」
「え?」
「アンタの隊長は反対なんだろ?お前は?」
「私も反対ですよ!機密文書の内容は私も知りませんが……それでも『開示されたら戦争に悪用される』と昔からザギネルラの国民には言い伝えられているものです!そのような物を渡すわけにはいきません!そもそもザギネルラの騎士は『民を守る』為にいるわけで『他国を侵略』する為にあるわけではありませんし加担もしません!」
まくし立てるように少女…リンが言った
ここで『戦争がしたい!』なんて言われたらどうしようかと思った
この娘…いや、この街の軍になら教えても悪用はしなさそうだな
「なるほど、安心したよ、……君達には話してもいいかもしれないな……」
「何をですか?」
「さっき言ってた『青い物体』についてだ、……ただ場所が悪い、付いてきてくれ」
「え?あ、はい」
俺は話をするためにある場所へ向かった
~~~~~
「!?これは………」
「アンタら、軍が探しているものだよ」
そう、ある場所とは、俺がインプレッサを隠していた茂みのことである
ここなら人は来ないだろうしな
「ただ、連れてきたからといってコイツを渡す訳ではないぞ」
「そうですよね……」
「それともうひとつコイツにも関係するが話す事があってな………俺の使命についてだ」
「なんだか変な商売みたいですね……その使命ってなんなんですか?」
「俺の使命は過去の対魔王戦の時に大量召喚された兵器の回収だそうだ」
「だそうだ……?一体誰から……」
「なんか自称神様に頼まれた。この世界に飛ばされてすぐの事だから幻覚でも見てるんじゃないかと思ったよ」
「へ?この世界?飛ばされた?」
………あ
「………スマン今のは忘れてくれ」
「忘れられませんよ!?まさか名前が変だったのもこの世界の人じゃなかったからなんですか!?その後ろの青いのも別の世界のものなんですね!?」
「うっ………そこまで言われると何も言えねぇ……」
これはミスったなぁ………
恐らく年下(?)である少女に言い返せない俺………
惨めだ……
「別に怒りませんからちゃんと言ってください」
「……わかった、これまでの経緯を話すよ、だが他言無用にして欲しい」
「はい」
俺はこれまでの経緯を話した
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