9.ギルド

ー9.ギルドー



1日車中泊をしてからザギに入った


この辺りでは比較的大きい街で外周には巨大な壁がある


なんでも魔王がご存命の頃に一度、大型の人形モンスターに街を蹂躙されたらしい



……進撃の○人かな?



そんな訳で国の中でもこの街の人たちは防御力には特に力を入れているらしく、壁の周囲には見張りの兵士やいざとなったら街にある”ギルド”から人を招集して襲撃に備えているらしい



──ふむ、ギルドか



ギルド、要は何でも屋、さまざまな依頼(クエスト)をこなす冒険者が集まる場所


っていう風に俺は聞いているが、どうやらクエストと冒険者にはランクなるものがあるらしい



ランクはこっちでいうC~Sまであり、Cは庭の草むしりや荷物運びなどの簡単なもので、Sになると国からの直々の依頼レベルのものになる



さらに高ランクになるということは有名になるということで、軍や貴族と顔を合わせることがあるらしい


つまり俺の目的も伝えることが出来るかもしれない



…たかが一平民の意見に耳を傾けるかは疑問だが…



有名になれるし資金も入るから暫くはギルドに在籍していてもいいな




「よし、ギルドに行ってみよう」




そう言って俺はギルドを探しだした






~~~~~



────その頃、ある場所では───




「─ふむ、『馬より速く走る青い何か』が目撃されたと……その商人はそう言っていたのだな?」


「はい、見たことも無い形状だったそうで、モンスターでもなさそう、とのことでした」


「それがここ、ザギに向かっていたのか……わかった、発見次第報告してくれ、ギルドにも依頼書を出しておけ」


「はっ」






─やはり車は目立つようだ




~~~~~




──WRXが当初の目的を着々と達成していることも露知らず、永一はというと



「まさか迷うとは…………あ、すいません、ギルドって何処ですか?」



──道に迷っていた




~~~~~



「依頼書を出して来ました」


「そうか、下がっていいぞ」


「はっ……しかし、見つかりますかね?」


「どうかな……だが、自然界に青い体を持つ生き物なぞそうそうおらんよ、足が速いから捕まえられるとは思っとらんがね……」


「ハハハ…、そうですね…では、失礼します」



ガチャッ…バタン



「…モンスターではなくこちらに友好的ならば我が軍にも利用できるかもしれんな……しかし『見たこともない形』か…近くの森にある『灰色の塔』とも関係があるのか?」



~~~~~




「ここがギルドか」



どうやら街の逆にあったようだ



ギルドはなかなか大きい建物だった


この街は4~5階建ての集合住宅らしき建物が多い、その中で高さが2階ほどしか無いが敷地が広く横に大きいギルドはかなりの迫力があった



俺が入ってきたのは南門で探していたのが西側、ギルドがあったのは東側にあった


東門が一番帝都に近く、人通りがあるらしい



今度帝都にも行ってみようかな



博物館とかあったりして




とりあえず入ってみよう




ドアが無い…いや根元から折れてやがる………


どういうことだよ……



入ってわかったが、とんでもなく酒臭い


こいつら昼間から酒飲んでやがる………



酔っているのか知らないが、騒いでる奴がいるが無視して受付を探そう



あ、あそこかな?



なんかカウンターで騒ぎを苦笑いで見守っている女性がいる



あの人が受付ってことでいいのかな



「あの、すいません、ギルドに登録するのはここでいいんですか?」


「あ、はい、ここですよ。………すいませんこんな状態で……」


「ははは……いつものことなんですか?」


「ええ、まあ」



あの酒飲み連中、ちゃんと仕事してるのかな?



「それで、登録ですね?」


「ええ、どうすればいいんですか?」


「あ、この書類に記載事項を記入して、そのオーブに左手で触れてください」


「これですか?わかりました」



じゃあ、書類を書くか



ここで俺はあることに気が付いた



「(こっちの文字なんて読めんぞ、持っている地図にも文字は書いてなかったし………おや?)」



紙に書かれているのは英語ともロシア語とも似ていない謎の文字



しかしずっと見ていると何故か読めるようになってきた


あれかな?俗に言う『気にしたら負け』というヤツか?



俺が書く文字も何故かこっちの言語だし……


仕様ですか?神様





「出来ました」


「はい、お預かりします………『カナヤマ エイイチ』様ですね?……変わったお名前ですね、……出身地『ニホン』……?聞いたことが無い所ですね、随分遠い所から来られたんですか?」


「ええ、そうですね……かなり遠いですね」



なんせ"別の世界"だからな



「わかりました、ではそこのオーブに左手を触れてください」



受付嬢が横に置いてある球体を示す



「はい」



左手で触れた瞬間"オーブ"なるものが若干光ったような気がした



「はい、これで登録完了です。こちらがエイイチ様のギルドカードになります。このカードは身分証明書みたいなものなので、さまざまな国への入国手続きが簡単に済むようになります」



なるほどな、この街はさほど厳しくなかったが、別の国だと入国に厳しいところもあるみたいだし、持っておいて損はないな



「エイイチ様はまだ入ったばかりなので簡単なCランクのクエストを受ける事をオススメします。あちらにクエストボードがあるので、ごゆっくり見ていって下さい」




そう言われてクエストボードに来てみたが



『花の在庫が無くなってしまった、採取求む』


『店の者が1人怪我をしてしまった助っ人求む』


『ストーカー被害に遭ってます、助けてください』



…なるほど、本当に色々な依頼があるんだな


てか最後、普通に警察案件だわ



俺はその中である依頼に目が行った


まだ真新しいであろう依頼書には



『ザギ周辺に現れた馬より速い謎の青い物体を探せ』



と書かれていた







……あれ、これ俺のインプレッサじゃね?


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