交通整理 ☆
絡まれるのが嫌で護身術教室に通った男が居た。
習ったのは常在戦場の心構え。
すると周囲を警戒する雰囲気を面白がった輩に絡まれた。
気付かれないように警戒するも同じ目にあった。
ならばと体を鍛え大きくし、武器も大太刀に。
威嚇によって牽制しながら堂々と歩き警戒を隠さない。
その雰囲気は周囲に不快感を振り撒きやはり絡まれる。
男の進む道にはいつも輩が立つ。
あまりに絡まれるうちに、ある日の輩に怪我を負わせる。
何故か警察沙汰にはならなかった、それが報復を予感させる。
苛立つ男はまさに常在戦場であった。
男は退院した後に引っ越し、護身術も捨て去った。
大太刀まで置き捨て怯える男は未だ常在戦場である。
そんな中、目が合ったのは絡まれている青年。
周囲を見れば物陰からもう一人が青年に向けて走り出している。
男は出遅れ、しかも二次被害が頭をよぎり足取りは鈍い。
大太刀を掴めず彷徨う手は変えた武器が思い出せない。
日光を受ける刀は松明の様に掲げられている。
もはや間に合わない男。無防備な青年の背後に迫る輝き。
走る勢いのまま跳び膝蹴り。踏み切り足の爆音が威力を物語る。
青年が振り返りながら万歳をするとその輩が蹴り足から空を飛ぶ。
もう一人は引き入り身で静止した青年の横に頭で倒立した。
空を向いた足は倒れ、刀とナイフも地に落ちている。
後頭部を強打し失神していた二人が別々の車両へ押し込まれていく。
男は目撃証言を終えた後、無傷の青年に護身術の話を持ち掛けてみた。
穏やかに帰ってきた答えを要約すると、常在日常。
抜刀されなかった脇差を警察官に渡す青年の静謐な所作を思い出す。
その日、男は納得を得て戦場を脱した。
久しぶりの日常の道、男の進む道には人々が立つ。信号が青になった。
男が学び始めた武道は今、人々のためにある。
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