【19話の1】 ささやかな古代の技術
「これは……『オーパーツ』なのか?」
えっ、こんな物が『オーパーツ』なの?
……
「イルマタル様、どういうことなのでしょう?」
オーレリーさんが、困惑気味に聞いてきました。
「『オーパーツ』ではありませんが、『オーパーツ』の技術を使ったものです」
とっさに頭を巡らした私、たしか教官のロングソードは初期のもの、『鋼』の技術がないのでしょう。
正確にいえば、不純物が多いのでしょうね。
多分、塊鉄炉といわれるもので、鉄を作っているのでしょうね……
この棒手裏剣の刃先に使用されているのは、この時代では不可能、でも……玉鋼なら可能では……
「『オーパーツ』の技術とな?」
親父の食いつきのいい事、もう絶対に聞き出そうとの態勢です。
「『鋼』という技術ですが……正確にいうなら『玉鋼』、私は大公国の人間……どうしましょうか……」
「たしかにな、しかしそこをなんとか……」
困りましたね……しかし棒手裏剣は欲しいし……でも軍事バランスは崩したくないし……
「この棒手裏剣というものはそれほどのものなのですか?」
今度はベンヴェヌータさんが親父に聞いています。
「もちろんだ、ロングソードなどは細く薄い刃に出来る、ロングソードを軽量化出来るのだぞ」
「その上、今までのロングソードはたたきつけて切るわけだが、この技術があれば、スパッと切れる」
……
「オーレリー、話がある」
ベンヴェヌータさんが、オーレリーさんとコソコソ話しをしています。
途中からマトリョーナさんも加わり、長々としたお話となっています。
「イルマタル様、どうしたのでしょうね、『オーパーツ』の技術なんてあきらめて、似たような物を作れば良いだけではありませんか?」
エヴプラクシヤさんは呑気な物ですね、でも正論、出来ない物は出来ないのですからね。
話し合いが終わったようで、オーレリーさんが、鍛冶屋の親父に
「どうしても『玉鋼』という技術を知りたい?」
「それはもう」
「イルマタル様、『玉鋼』という技術を教えられるのですか?」
「古代の技術ですから、私の知らない物かも知れません」
「多分似たような物なら、提示出来るとおもいます」
「これならこの世界でも、何とかなるでしょう、ただし純粋に刃物用の鉄です、相当な研鑽が必要です」
ベンヴェヌータさんが一瞬、この言葉に反応したような……
なにか不味い事をいったのか……『この世界でも何とか』……これか。
まぁいいでしょう、聖天様は『好きに生きよ』といわれているし……
「ではイルマタル様、この鍛冶屋に技術を教えるにつき、帝国御用達の看板を返上させ、誰にでも売る、誰にでも教える」
「勿論、帝国、王国、大公国で協議することになりますが、協議が終了、意見の一致を見たら、技術を教えるということでいかがでしょうか」
いかがもなにも、命令に近いのではありませんか、有無を言わさないと、目が語っていますよ。
「ちょうどここに、玉鋼を使用した武器、薙刀というのですが、拵えをお願いしたく持参したものがあります」
「ご主人なら、見れば分かるのではありませんか?」
二振りの薙刀を取り出したのです。
参考までに薙刀の模造刀も一振り、取り出しておきましたので、
「このような感じでお願いします」
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