【18話の2】 帝国御用達のドワーフの鍛冶屋です。

 

「……私は……こんなことをいえば無責任なのでしょうが……一度、皆さんで話し合ってくれませんか……意見の一致を見れば……従いますから……ただ、静かな生活を過ごさせてくださいませんか……」

 もう、こうなっては丸投げなのです。

 私に政治的、軍事的な事を求められても困るのです。

 

「では誰と話し合えばいいのですか?」

「貴女以外には、エヴプラクシヤ・モスクさん、その妹のマトリョーナ・モスクさん、モスク大公国侍女長ヴェロニカ・バブーリナさん、私付きの侍女マシャ・ノヴェソロワさん、ラテラノ王国の公爵令嬢ベンヴェヌータ・キアッピーニさん、これだけの方がその……正妻とか妾とかの話に関係しているわけです」

 

「分かりました、では意見の一致を見ればいいのですね、お約束くださいね♪」

 あれ、なにか不味いのではありませんか?自信満々のオーレリーさんの顔がニヤリと笑っていますよ。

 

 こんな遣り取りが馬車の中でありましたが、無事に目的の鍛冶屋に、出てきたのはあの教官でした。

 

「えっ、教官、なぜ?」

「こちらが本職さ、親父が鍛冶屋でな、俺は長く傭兵をしていたのさ、で親父が引退するというので、鍛冶を教えてもらいながら店を引き継いだのさ、その合間にギルドの頼みで、教官のバイトをしているわけだ、まぁ鍛冶の技は親父の方が上だがな」

 

「オーレリー・トトゥ様、スクールでは教官としての立場なので、無礼な物言いですがご勘弁ください、ところで此度は何用ですか?」

「イルマタル様にいただいた、この棒手裏剣というものを、大量に作っていただけないかしら?」

 といいながら、私が出した棒手裏剣を手渡しました。

 某流派の鍛造棒手裏剣、全長約15センチ、鍛造鋼製、先端部焼入の仕様です。

 

「変わったナイフだな、どう使うのか?」

 教官が聞いてきます。

 

「投擲するのですよ、別にこれで殺す訳ではありませんよ、相手に負傷させその間に逃げるわけです」

「まぁ鎧など着けられたら、余り意味はありません、相手を組み伏せられる体術があれば別ですが」

「なるほどな……」

 

 そこへ教官の父親が出てきました。

 やはりオーレリーさんは皇帝の姪、帝国御用達の鍛冶屋としては、挨拶しないわけにはいかないようです。

 でも、相当に頑固そうな顔ですよ、背が低いですね……えっドワーフ族?


 そういえば教官のガタイはでかいですが、背は低いですよね……ドワーフだったのですか……

 ドワーフとしては、かなり背が高い方なのでしょう。

 

「これはオーレリー様、いつもご贔屓いただきありがとう御座います」

「親父、これを見てくれ、オーレリー様がこれを作って欲しいとおっしゃっている」

 

 棒手裏剣を手渡された教官の父親、じっとそれを見て驚いたような顔をしました。

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