【18話の1】 今度は侯爵令嬢の告白

 

 いつもの午後の最後の授業、武術ですね、全員に棒手裏剣を手渡し練習です。

 エヴプラクシヤさんも、棒手裏剣を練習しているのです。

 

「あれ、薙刀の練習ではないのですか?」

「お昼のベンヴェヌータさんの言葉を聞いて、私もイルマタル様に気に入っていただくために、何としても手裏剣術を覚えたい!」

 何といいましょうか……直球なのですから……単純というか辛気くさいというか……

 でも私はそんなエヴプラクシヤさんが可愛いのですよ。

 

 皆さんにあれこれと教えていると、あっという間に時間が来ました。

 

「今日はここまでですね、終わりませんか?」

「えっっっっ!イルマタルお姉様、もっと教えてください!」

 下級生が口をそろえてくれますが、

「ごめんなさいね、この後、用事があるのよ」


 ……

 どうやらお役御免となりそうですが、そうですか、お姉様ですか……

 可愛い下級生にいわれると、満更でもありませんね……お姉様ね♪

 

「イルマタル様、それでは鍛冶屋にご案内しますわ?」

 放課後、薙刀を取りに戻り、約束どおりオスク・スクールの北門にいくと、オーレリーさんが待っていました。

 やはりベンヴェヌータさんもいましたね、この2人仲がよいのか悪いのか……


 オーレリーさん、馬車を2台用意してくれています、フラン帝国で侯爵令嬢ですからね。

 4人乗りのランドーという種類です、超豪華仕様ですよ、この馬車は。


 御者と助手はわかりますが、フットマンも1名が1台あたりに乗っています。

 その上、侯爵家の侍女さんも1人乗るようです、さすがに帝国の侯爵家、凄い美人さんですよ。


「申し訳ありませんが、私とイルマタル様が前の馬車、エヴプラクシヤさんとマトリョーナさん、それにベンヴェヌータさんは後ろの馬車でお願いします」

「これについては、一応手配した私の役得とご了承ください」

 仕方無いと皆さん、肩をすくめています。

 

「豪華な馬車ですね……」

「私がオスク・スクールに編入するに当たり、皇帝陛下が伯父としての立場で私に下賜してくださった馬車です」

 なんでも帝国の事務所が管理していた、皇帝用の馬車だそうです、さすがに皇帝の姪というところですか……

 

「イルマタル様、昼時、ベンヴェヌータ・キアッピーニさんが妾でもよいといったとか?」

「お返事は構いません、その事に対して私も手を上げます、理由も同じと考えてください」

「でも私は当初の義務感ではありません、一目お見かけしたときからお慕い申し上げています」

 

「薄々は感じておられると思いますが、帝国はイルマタル様と親密な関係を構築したいと考えています」

 

「理由は魔物除けの件が表向きの理由、本音は帝国への脅威を減らしたいということです」

「帝国と王国は時々争う仲ですが、互いに相手を圧倒できる力はありません」

「大公国の戦力がどちらに荷担しようとも、なんとか凌げる戦力を保持しています」

「しかし魔物除けを利用すれば、魔物を集め追い立て、相手の軍にたたきつけることも可能、その後、自国の戦力で相手を叩けばどうなりますか?」

 

「その為に、私に白羽の矢が立ったのです」

「イルマタル様を誘惑し、何とか帝国に味方していただく、いわゆる美人局というわけです」

「しかし私は、イルマタル様をお慕いしてしまいました」

「理由は私にも分かりません、しかしもう帝国のことなど二の次なのです!」

 

 じっと私を見つめるオーレリー・トトゥさん、これまた熱烈な告白です。

 愚物のおっさんとしては、美女の告白ってのに出会うと、たじろいでしまいます。

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