【17話の2】 また2人ですか?喜ばしい事ですけど困っています。

 

「その……私は大公国と縁がありまして……」

「エヴプラクシヤさんでしょう、マトリョーナさんとも1年後と聞いていますわ」

「でもね、決まっているのはエヴプラクシヤさんだけでしょう?」


「大体妻は1人でも、妾は何人持ってもいいと決まっています」

「たとえマトリョーナさんが正妻としても、妾の枠はいっぱい残っているのですからね、私、あきらめが悪いので有名なのですよ」

 この押しの強さが、18まで独身だったのでしょう……ある意味、『卒業面(そつぎょうづら)』なのでしょうね。

 

「そういえばオーレリーさんもなかなかよ、ご注意された方が良いかもですわ」

 なんですかね、一度として持てたことのない私が、美女に囲まれ口説かれる……

 耐性がないので、どうすればいいか分からない……

 ヴェロニカさんに相談したくても……妾候補の1人、言動からして望んでいるような……

 嬉しいような困ったような……


 お昼の時間、エヴプラクシヤさんとマトリョーナさんとで、お弁当を広げようとしていると、オーレリーさんがやって来ます。

 当然のように、ベンヴェヌータさんも一緒にお弁当を広げています。

 

「イルマタル様、放課後はお暇ですか?」

「まだ引っ越しの整理が終わってなくて……」

「なんなら私の侍女を手伝いに差し向けますから、お時間を頂けませんか?」

「なにか用事なのですか?」


「昨日の棒手裏剣の話しですが、帝国御用達の鍛冶屋がこの街にあります」

「そこで打ってもらうつもりなので、イルマタル様に鍛冶屋のあるじに、説明をお願いしよう考えましたの」

 うーん、断れない……建前を上手くつかれた……

 

 そこにマトリョーナさんが、

「なら私たちもご一緒してよろしいでしょうか、私たち、伝手がなくて困っておりました」

 と、割って入ります。

「そうだ、私もお願いしたい、鍛冶屋なら刃物の拵えは出来るはず、良い刃物が手に入ったので、イルマタル様とおそろいとしたい、お願いできませんか」

 エヴプラクシヤさん、こちらは純粋に額面どおりなのでしょうね。

 

 するとベンヴェヌータさんが、

「なら、私もお願いしたい、イルマタル様からいただく棒手裏剣、数をそろえたい」

「私は先ほどイルマタル様の妾にと手を上げた、気に入っていただくために、何としても手裏剣術を覚えたい」

 爆弾発言をしてくれますよ、この人は……

 

「なんですか!そんな事、許されることではないわ!」

 マトリョーナさんが、声を荒げたのです。

「そうですわ、そんな事、許される事ではありません!」

 オーレリーさんも続きます。


「なにが許されないのかな?お2人ともイルマタル様と、正式に婚姻したわけではないのでしょう?」

「イルマタル様のお気持ちはさておき、チャンスは公平でしょう?」

「姉上様!なんとかいってください!」

「私としてはモヤモヤするところはあるが、建前に立てば、ベンヴェヌータさんのいうことが、正しいと思えるのだが……」

 

 たしかにいわれるとおり、一応エヴプラクシヤさんとの仲は正式に発表はしていませんが、公認されています。

 マトリョーナさんのことは発表されていませんし、そもそも私は了承していないわけです。

 私も沈黙するしかありません……

 いや、心の底で喜んでいるのではと思えます、そう、私は愚物なのでしょうね……


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