【16話の1】 刃物三昧女性の武術
さて、剣術ですか……
姫騎士といわれるエヴプラクシヤさんに教えるとなると……やはり女性がやると剣よりも薙刀……
しかし薙刀なんて売っているのですかね……
えっありました、拵えはないか……まぁこの世界でも扱えるでしょう。
流派は……直心影流薙刀術がいいでしょう……検索してものにしましょうね。
とにかくやって見せましょう。
しかしここでは練習用の木刀などは取り出せないし、どこかに手頃な木でもないかな……
あった!
男子が練習しているところに、手頃な棒が積んでありました、更に太い棒もあります。
どうやらこれを真剣で切るらしいのです。
簡単には切れないでしょうね。
「教官、この棒、2、3本、貰ってもいいですか、自習したいのです」
「ほう、構わないが、木を切るなど、女性には似つかわしくないと思うが?」
「別に構いません、素振りの自習ですから」
「そうか、頑張れよ、いや、チョット待て、イルマタルといったな、たしかモスク大公の御前で、国軍剣術指南との試合に勝利したと聞くが本当か?」
「でたらめですよ、相手が華を持たしてくれたのですよ」
「だよな、あの方が簡単に負けるはずがないし、でも試合はしたのだよな、チョット手並みを見せてくれないか?」
「えっ、私は女ですよ」
「だから手合わせとはいわない、そこの木を、試しに切りつけてみてくれ」
みれば太い棒が突き立ててありました。
教官はポンと、剣を手渡してくれます。
初期タイプのロングソードですね、教官の愛剣なのでしょうね。
「重いですね、鋼ならいいのに」
「鋼?」
「いえ、気にしないでください」
「あの棒に切りつければいいのですね」
ロングソードで検索すると、ドイツ流剣術というものがあり、瞬時に手になじみます。
『斜めの攻撃』という構えから、高めの水平斬りで、右から裏刃で、左から表刃で3等分に切り分けました。――ウィキペディアのドイツ流剣術より――
教官の唖然とした顔に、少々『ざまあみろ』なんて思ったのは内緒です。
棒を抱えながら戻ってくると、皆見ていたようで、特にエヴプラクシヤさんが興奮しているようです。
「イルマタル様、凄いなんて物ではない、神がかっている、あれはどのようなものなのですか?」
「ヨハンネス・リヒテナウアーという方が始めた、両手剣用の剣術です」
「でも、あの教官のロングソードは、『たたき切る』ための物、いささか扱いにくいものでした」
「ヨハンネス・リヒテナウアー?知りませんが?」
「隠れた剣聖なのですよ、でもあれはエヴプラクシヤさんには似合わないでしょうね、対象がロングソードですからね」
「男と立ち会える剣術というと長物、薙刀術をおすすめします」
「今は本物の薙刀も練習用の竹刀もありませんので、この棒で代用しましょう、帰ったら本物を見せてあげます」
とにかく3人で基本を練習しましょうね。
やはりエヴプラクシヤさん、この手の事には天賦の才を持っていますね、すぐに上手くなるのは確実です。
野郎もたたきのめせるでしょう、ひょっとすると、あの剣術師範相手でもガチで勝てるかもね。
女性が男性に勝てるかも知れないのが薙刀術。
事実、園部秀雄という女流剣士は、名だたる剣術家・槍術家と数百回に及ぶ異種試合を行い、総なめにしたという――このあたりはウィキペディア参照――。
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