【14話の2】 モスク大公の思惑です。

 

 マトリョーナさんは15歳、今年から2回生、私たちは18歳の5回生……

 聞けば『卒業面(そつぎょうづら)』とよばれる風習があり、3回生になればどんどんと美しい方は寿退学していく。

 婚約もせずに卒業まで残るのは、それなりの方となるそうなのですね。

 

「私たち、その『卒業面(そつぎょうづら)』なのですね、まぁもう売れていますので該当しないわけですが、この話、公にしてもいいのですか?」

 荷物の整理をしながら、ヴェロニカさんに聞きますと、

「構いません、なんならマトリョーナ様の話も出してもよいですよ」


 そんな……マトリョーナさんの話は決まっていないのですから……

 私が黙っていると、

「私はいつでもOK、お待ちしています」

 なんていうのですよ。

 

「正妻の座は空いている、お父様も後押しされている、妾の私としては、マトリョーナが正妻ならば気が楽だ」

「まぁその話は後日ということで……とにかく明日から学校ですので、ところで制服などはないのですか?」

 

「そうそう、その話ですが、イルマタル様がお召しになっていた服を、モスク大公国女子グループの制服と決まりました」

「申し訳ありませんが、無断でデザインを流用させていただきました」

「晩餐会の後、直ぐに伝書鳩便で事務所に通知、多分明日までには揃うはずです、マトリョーナ様はご存知です」


「なぜセーラー服を?」

「セーラー服というのですか?あの服は清楚な感じがして、謁見の時にいた者の意見が一致したのです」

「ちょうど他のグループとの区別をしようと決まっていたようで、渡りに船だったのです、ただ丈がもっと長くなっていますが」

 ヴェロニカさんが、説明してくれました。

 

「その話、私たちの制服を申請したら、大変好評で、帝国も王国も色違いでそろえる話になったと聞いています」

「まぁ明日とはいかないでしょうが、型紙は出回っていますので、一部の者は着てくるでしょう」

 マトリョーナさん、詳しいですね。

「私、生徒代表会の一員ですから……」

 生徒代表会?ですか、いよいよ学園生活そのものですよ。

 おっさんとしてはチョット憧れたりしてね。

 

 ……青春か……ついぞ味わえなかったな……

 高校では生活のためのバイトばかり、大学はいけなかった……

 別に前世に不満はなかったが、憧れたりしたよね……


 せっかくの二度目の青春、謳歌すべきですね。

 セーラー服、ありがたく着ましょうね、聖天様、感謝します。

 

「明日からの食事ですが、どうされますか?」

「もちろん、私どもがおつくりします、お昼も用意いたします」


「毎日はしんどいでしょう」

「保存食料を、倉庫に備蓄しておきましょう、温めればよいだけのものです」

「料理方法は教えますが、おいおい工夫していただければ、さらにおいしくなるでしょう」

「夕食は皆で一緒に作る、というのはいかがですか?」


 管理はヴェロニカさんに任せましょう、毎日不足分を申告していただきますね。

「しかし私どもは侍女としての立場が……」

 マシャさんが少々困惑しています。

 

「気にすることはありません、ヴェロニカもマシャも、私と同じことをお父様に云われたのでしょう、姉様はご存じですか?」

「知っている、父は私が2番、ヴェロニカが3番、マシャが4番、後1枠、計5枠で収めたい、なんて云っていた」

「ヴェロニカもマシャもその気なのだろう?」

 ヴェロニカさんは勢いよく、マシャさんは恥ずかしそうに頷いています。

 

 ということは、ここにいるのは私のハレムの構成メンバーっていうことですか……

 よほど私を取り込みたいのですね……聖天様、これはどうなるのでしょうか……

 男としてはうれしいのですが……『心静かな生活』とは真逆になってきたようで、いいのでしょうか?

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