【12話の3】 娘の1人や2人、国のために差し上げる
その後、大公さんがやって来て、
「髪についてだが、推測以上の効果が確認された、幾つかいただければ幸いである、ご協力をお願いする」
「禿げなければいくらでも提供します、それとは別にお聞きしますが、なぜ正式には1年後なのですか?」
「マトリョーナが16歳になるからです」
?
「この国では16になると婚姻ができる、イルマタル殿には正妻が居られない、変な正妻が来ると、エヴプラクシヤには不憫な事が起るかも知れない」
「イルマタル殿は18歳と聞く、エヴプラクシヤも18歳、1年後となっても問題はないだろう」
「マトリョーナさんは第一公女ではありませんか、なぜ?」
「イルマタル殿は、ご自分の値打ちを理解されておられない、髪1本で魔物が撃退できるのですぞ」
「親しくできるのなら、娘の1人や2人、国のために差し上げる」
「なんなら侍女の中から、気に入られた者を好きなだけ差し上げる」
「いえ、それは……」
「マトリョーナも望んでいる。別に正妻でなくても良いともいっている」
「しかし、イルマタル殿の正妻にはマトリョーナを据えてほしい」
「エヴプラクシヤ同様、恥ずかしくない容姿、その上、利発である」
さらに、こんな事をいわれたのです。
「もうすぐ帝国や王国から、似たような話がくるぞ」
「幸いにもエヴプラクシヤを妾にした以上、貴女を妻や側室にとは望まないだろう」
「貴女は女神かと思われるほど美しい、独身だと、とんでもない事が起ったはずだ」
「しかし……姉妹をですか?」
「一人より二人のほうがより強固だ、モスク大公国を救うと思ってお願いする」
「まぁ1年ある、考えて欲しい」
「それから1年の間だが、どうだろう、学校へ通っては?」
「このルーシーの隣にはオスクという街がある、一応、このモスク大公国の領地だ、ここに学校があるのだ」
「帝国や王国も経費を負担し、モスク大公国が土地建物を提供し、3者で特殊なギルドを成立させている」
「ギルドには、街の自治権を認めている」
「マトリョーナもエヴプラクシヤも、当然通っている」
「最高学年が18歳、ここなら変な者はやってこない、身辺調査されているからな」
「私はこの学校へ貴女をねじ込める、どうだろう、3人で生活を共にして、1年後を考えて欲しい」
結局、この話を受けたのです。
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