【12話の2】 関係者へのお披露目晩餐会?

 

 ヴェロニカさん、なぜ私がエヴプラクシヤさんを……

 シーツの位置なのですね、ベッドで私たちが寝ていた位置と、あわせて結論づけたのでしょう、侮れない方です。

 

 でも不思議ですね。女同士で『初めての証拠』なんて、それをおかしいと思われないなんて……

 

 これ、後で知ったのですが、女同士でも『娶られる方』の『初めての証拠』は重要視されるそうで、初夜の最後には……そのですね……

 そのような行為をして、『初めての証拠』を確保するらしいのです……

 これは庶民の間では関係ないのですが……

 エヴプラクシヤさんのような、お姫様クラスになると、かなり重要なことらしいのです。

 

「エヴプラクシヤ様、おめでとうございます」

 ヴェロニカさんがそのようにいいますと、侍女さんたちが一斉に、「おめでとうございます」と、お辞儀しながら唱和してくれました。

 

 バスタオル1枚なので、受ける方としては恥ずかしいです。

 エヴプラクシヤさんは、鷹揚に返事を返していました。

 さすがはお姫様です。


「さて、今夜はドレスを着ていただきますよ、本日はイブニングドレスです」

 この世界でもドレスコードがあるようです。

 イブニングドレス?

 文明の進化がちがうのに、地球と同じなのですね……

 

 やはり見慣れたイブニングドレス、ローブ・デコルテが持ち出されました。

 胸元や首元が、やけに露出しているやつですよ。

 ロングドレスですから裾が長いですよ、踏んづけなければ良いのですけど……

 マント・ド・クールでないだけましですかね……

 

 生まれて初めてですよ、オペラ・グローブという手袋もつけるらしい……

 こんなもの、どうして着るか分からないので侍女さんにお任せです。

 髪型も化粧も好きにしてね、逆らわないから。

 

「それにしてもお美しい!」

 私はどうでも良いけど、エヴプラクシヤさん、美しいですね、この人とベッドをともにしたの?

 あのでっかい胸をね……

 

「エヴプラクシヤさん、綺麗ですね」

「もう、イルマタル様、お口が上手なのですから♪」

「はいはい、痴話話は後にしてくださいね、時間が無いのですから!」

 

 やっと着付けが終わったのは、午後8時を過ぎていました。

 私はエヴプラクシヤさんと手を繋ぎ、内輪の晩餐会に出たのです。

 

 内輪の晩餐会ですよね……えらく人がいます。

 

「では主賓が来られた、皆に紹介しておく、このたびわが娘、エヴプラクシヤ・モスクは、こちらのイルマタル・ロイスター殿と婚姻することになった」

 おぉ、とかいう歓声が聞こえます。

 

「娘は先頃、妹のマトリョーナと旅行中に盗賊に襲われた、足を負傷し、今後歩けないかと思われる大怪我だった」

「幸いにイルマタル殿が通りかかり、2人を助け出してくれた」

「その上に、エヴプラクシヤの治療に大変な尽力をしてくれた、その結果が婚姻となった」

 

「イルマタル殿はフィンに生を受け、魔法を極めるために東に向かわれ、その帰国の途中であったそうだ」

「実力は我が国の筆頭魔法使いと、国軍剣術師範が保証してくれた」

 

「エヴプラクシヤの治療は困難を極め、かなり禁断の魔法を使うことになったようで、師匠殿との誓約により、これを公開することはできないそうだ」

「そのため沈黙を守らすために、エヴプラクシヤを妾として婚姻を許可した」

 

「エヴプラクシヤを慕う民は、多くいるかとおもうが、このような理由なので、娘のためと理解していただきたい」

「正式な発表は1年後、今回は関係者へのお披露目と思っていただきたい、この後は無礼講とする、楽しんで祝ってもらいたい」

 

 盛大に拍手なんて贈られました。

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