【11話の2】 魔物除け

 

 休憩ののち、早い昼食となりました。

 目の前には大公、2人きりの食事です。

 食事を用意した侍女や執事も、席を外させた大公さん。

 

「大変失礼な事であった、幾重にもお詫びする」

「これで国軍や民も、納得させることが出来る」

「剣術師範は国軍にとっても得難い人物、正直助かった、その上にお願いがある」

 

 お願い?

 

「実はイルマタル殿が城門に来られた時に、実力はわかっていたのだ」

「しかし、信じられない話だったので、なんとしても、その実力をみたかった」

 

 それは当然でしょうね。

 

「イルマタル殿は、私が貴殿を叩きのめそうとしていると取られたようだが、そのような意図はなかった」

「貴殿が非力なら、花を持たせるように申し渡しておいたのだ」

 

 だから、お願いって、なんですか?

 

「やはり見込み通りの実力、いや、想像以上だった」

「そこでお願いというのは、イルマタル殿の身に着けている物、できれば髪あたりを、少しばかりいただきたい」

 

 ?

 

「突然の話で理解できないかもしれないが、イルマタル殿はフェンリルとかヒュドラに襲われたことがなかろう?」

「ありませんが、フェンリルを知覚したことはあります」

 でもこの世界、ヒュドラまでいるのですか……

 

 大公さんの説明によると、

 筆頭魔法使いはかなり遠くから、私の何かわからぬ力を感じたそうです。

 

 郊外をうろつく化け物ども、魔物と呼ぶのですが、あれらは魔力を感じるらしい。

 普通は感じたところで、なんということはないのですが、筆頭魔法使いが感じたのは、かなり異質、恐怖を感じたそうです。

 

 筆頭魔法使いがもしかしてと思い、この宮殿の地下で飼育しているフェンリルの側に、私の使用した椅子を置くと異様におびえた、一度使用された椅子でさえそうなるらしい。

 

「そこで、髪あたりを1本で良いので提供していただきたい、効果があれば、魔物除けとして村々に置きたいのだ」

 イルマタル殿の髪なら、滅するまで効果が持続すると思われる、ともいわれました。

 

「髪ですか?別に構いませんが」

 そういって1本、髪を抜き大公さんに渡しました。

 

 大公さん、紙に私の髪を包んでいます。

「すぐに調べさせる」

「お願いですが、もしそうなっても、私の名前は出さないでくださいね」

「名声はいらないのか?」

「いりません!」

 

 昼食会を終え、今朝の部屋に戻り、ベッドに腰掛けていると、ドアをノックされました。

「どうぞ」

 

 エヴプラクシヤさんが走り込んできます。

 提供した松葉杖、完璧に使いこなしているようです。

 凄い勢いでベッドに押し倒され、口づけの嵐……

 巨乳が遠慮無く押しつけられます。

 

「イルマタル様!イルマタル様!私の為に戦ってくれて!好き!大好き!」

 エヴプラクシヤさん、姫騎士なんですよ、小娘みたいにならないの。


「まぁ落ち着いて……足にさわりますよ」

 エヴプラクシヤさん、興奮しているのか、好きとか、愛しているとかを、連呼してくれます、しかも大きな声で。

 ドアを閉めてくれませんか?

 大公さんのハレムの中に、声が響いて……もう……

 

「姉様、だからはしたないですよ、そんな事は、婚姻を済ませてからにしてください、侍女たちも迷惑顔です」

 マトリョーナさんがやって来ました。

 

「イルマタル様、姉様の為にご尽力していただき、ありがとう御座います」

 妹さんは、まともな対応をしてくれますね。

 

「お父様の許可がおりました、姉様、いよいよ、することをしてください、でないと侍女たちに取られますよ」

 侍女さんに私が取られる?

 まさか……

 

「そうだな、イルマタル様を見つめる侍女たちは、ギラギラしていたからな!イルマタル様、しましょう!」

 突然、服を脱ぎ始めたエヴプラクシヤさん。

「はやく、はやく、イルマタル様!」

 

「では、ごゆっくり、侍女たちにはドアをノックしないように、申しつけておきます」

 こちらにやって来て3日目で、『なに』をしてしまいました。

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