【10話の1】 侍女さんに髪飾りを差し上げましょう

 

 朝、前日取り寄せたトラベルセットで洗面、水をだす加減がわかりましたね、お湯も、冷水も、氷結も、二度目で自由自在です。

 コップさえも置いていませんでしたので、取り寄せました。

 

 洗面中、トントンとドアのノックの音、

「ふぁぁい、どうぞ」

 昨日の侍女さんが、水差しと洗面器、塩と木の端をほぐしたようなものをもって入ってきました。

 

「洗面……もう、始めておられるのですか?」

 歯磨きを終わった私は、これから顔を洗おうとしているところ、顔には歯磨き粉が付いています。

「ごめんなさいね、私、庶民の出なもので、宮殿のしきたりを知らなかったもので……」

 ペコペコと謝る私です。

 

 侍女さんはというと、私のトラベルセットを見つめています。

「これ?旅行をするときの入浴と洗面の道具なのよ、差し上げましょう」

 と、カバンに手をいれ取り寄せ完了、カバンより取り出します。

 シャンプー・ボディソープ・歯ブラシ・ハミガキ粉入りの、某社のトラベルセット、700円以下ですからね、お気楽に差し上げられるのですね。

 

 化粧品がらみは、今のところ使い方がわからないのです……

 

「それでは、お化粧や髪形を整えましょう」

「それは助かります、そのあたりのことは疎いので、お願いします」

 侍女さん、丁寧に髪形を整え、念入りに化粧をしてくれました。

 髪はそのままストレートヘヤーです。

 

「どうでしょうか?もともと大変お綺麗ですので、何をしてもお似合いではありますが……」

 昨日の埃まみれの自分とはえらく違いますね、やはり女性は、身だしなみが大切と実感しました。

 

「いや、自分でも驚きました、ありがとうございました」

 感謝の気持ちを表すのは、どうすればいいのか……なにかないか……女性なら飾り物……頭の中で探すとありました、特売品らしい真珠の髪飾り、税込み380円です。

 模造品でしょうか?

 

 ヘヤーピン、なに?髪にさすだけ、これにしましょう、この侍女さん、髪をアップにしていますから、真珠の周りにライトストーンがついている?これこれ、取り寄せました。


 取り寄せて内心驚きました、本物の小さい真珠がついていました。

 どんなにおかしげな広告としても、『お取り寄せ能力』で本物になっているようです……

 すごい……もちろん『お気に入り』に登録です!

 

「感謝を何で表せばいいのか分からないので、こんなもので悪いのですが受け取ってください」

 と、髪飾りを、これまたカバンから出しました。

 

 驚いていますね。

 

「これ、私が旅していた時、二束三文で売っていたのを、買い取った物なのよ、安物で悪いのですけどね」

 侍女さんの手に渡したのですね。

 

「あ、あ、ありがとうございます、大事にいたします」

 大事そうにポケットにしまう侍女さんでした。

 

 この方、多分ハレムの中ではつけないでしょうね。

 女の園、やっかみがひどいと聞いていますからね。

 大奥は怖い、世間一般の男の想像ですけど……

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