【09話の1】 なんで貞操帯をつけなければならないの!

 

 貞操帯?

 なにそれ、この地の女は貞操帯をするの?

 これ、だれに聞けばいいの?

 

 こうなっては、関係者に聞くしかありません!

 

 呼び鈴を鳴らして、侍女さんを呼びます。

「エヴプラクシヤ様の、足の様子を見せていただきたいので、お部屋はどこでしょうか?」

 なんて聞きますと、

 

「ご案内いたします」と、部屋まで案内してくれます。

 

「エヴプラクシヤ様、イルマタル様が足の具合を見に来られていますが、いかがいたしましょう」

 

 部屋の中から、

「お通ししてくれ」

 エヴプラクシヤさん、凜々しい声ですね。

 

「これはイルマタル様、わざわざ痛み入る」

 まったく、余所行きなのですから。

 

「足を拝見します」

 足は腫れも引き、痛みはほとんど無いようです。

 脅威の回復力です、やはり体力女なのですね。

 

 で、耳元で、

「実は内緒で、お聞きしたいことがあるのですが」

 なんせ、侍女さんが聞き耳を立てているのです。

 

「もうこの通り大丈夫、イルマタル様の部屋まで歩いて見せよう」

 などといってエヴプラクシヤさん、歩いてくれました。

 

 私の部屋まで来ると、

「そうだ、すこし足のことで聞きたいことを思いだした、ちょっと込み入った話なので、悪いが外してくれ」

 と、上手く侍女さんを下がらせます。

 

「何が聞きたいのですか?」

 そんなに顔を近づけないで……

「あの……じつは貞操帯なのですけど……」

「貞操帯?これのことですか?」

 エヴプラクシヤさん、いまナイトガウンですから、ガバッと裾をあげて見せてくれます。

 頑丈な金属製です。

 

「ちょうど外そうと思っていたところです」

「もう私はイルマタル様の奴隷、妾なのだから見せよと、いわれればお見せする」

「まぁメイドや侍女には見られても構わないが、他の者に見られるのは少々恥ずかしい」

 

「その……貞操帯は、必ず装着するものなのですか?」

「下々ではどうしているか知らないが、淑女と呼ばれる者はつけている、えっ、イルマタル様はつけていないのですか?」

 

「つけていません!」

「つけていないことがバレると、身持ちの悪い女と思われるのだが……」

 淑女は貞操帯着用が必須なの?

 

「貞操帯ね……鍵付きなのですよね……」

「鍵は自分で持つことになる、非常時は鍵を折るのです」

 

 鍵を見せてもらいました。

 ヒョロッとした非常に短い鍵で、何かに押しつければ折れるようになっています。

 鍵が折れれば、大騒動で貞操帯を切断するらしいのです、勿論、予備の鍵は、家にあるのですけどね。

 生理が始まれば、女の子は貞操帯をつけるそうです。

 

「ではあの時は……」

「鍵はへし折った、身を穢される恐れは少なかった」

 

 ……

 

「家に帰れば外せばいい、宮殿内でも女性はハレムに通される、ハレムに男は入れない、だから貞操帯は不要になります」

「ただ明日の謁見時は、つけた方がいいですよ」

 

 ……

 

「トイレは?」

 

「出来ます、チョットばかりコツが必要です、装着したまま用足しすると臭いがね、だから皆、外して用足しをする」

 ますます不便になるではないですか!

 

「女性は全員つけるのですか?」

 

「基本的に成人だけです、でもイルマタル様が望まれるのなら、装着し鍵はお渡しますが?」

 

 どうやら危険地帯に出かけるときは、装着する方が良いらしい……主人が妻や妾の鍵を、取り上げることは結構あるらしい。

 

 まったく、嫉妬深い者は……

 

「聞いた話だが、貞操帯に男のあれを模したものを取り付けて、装着させる者もいると聞く」

「私はイルマタル様が望まれるのならそれでも良い、妾になるのだから、命じられたら何でも私はする決意だ」

 

 ……

 

「まったく……言葉もない……しかし困りましたね……」

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