【08話の2】 ルーシーのモスク宮殿

 

 先触れがあったのでしょうね、出迎えが仰々しいこと……

 まぁ姫様ですからね……でも何人かは引きつった顔の方がいますね。

 まぁ、姫様の馬車が襲われたのですから、警備の責任者はね、それなりに叱責を食らうでしょう。

 

「ではイルマタル様、『オーパーツ』をしまっていただけませんか」

 ヴェロニカさんの要請で、SHERPATVは取りあえずお役御免、スプリングフィールド・アーモリーM1Aも同様です。

 少しばかり不安ですが、まぁいいでしょう。

 

 宮殿は、フランスのブルターニュ公爵城に少しばかり似ています。

 堅牢な石壁の城壁に囲まれ、中は広場を取り囲むように城館が散在しています。

 ルーシーの街は、この宮殿を取り囲むようになっており、街は五角形の稜堡式城郭、こちらも巨大な石壁にがっちりと守られています。

 

 ……最大の攻撃魔法がウルバン砲程度ですから、攻略は可能なのでしょうね……

 ただ、えらく長い詠唱が必要になると思いますから、その間に、大型のクロスボウあたりで狙撃されますね……

 稜堡式城郭は有効ですね。

 

 街中は宮殿を中心に、放射状に街路が走っており、外壁の5つの門につながっています。

 小道が幾つもこの大通りに直行して交差しており、石造りの建物が肩を寄せ合って建っています。

 人口は5万人程度、このエーリュシオン西部では有数の大都市らしいのです。

 

 モスク大公国より強大なのは、更に西に2つあるそうです、フラン帝国とラテラノ王国、帝国が最強らしく王国とはよく争っているようです。

 モスク大公国は、この西方世界の端っこ、このあたり最大の国家で、近くは、小さい辺境伯領や大きくても公爵領、独立領主に囲まれています。

 

 帝国と王国の周りにも、小さい独立領主が散在していますが、中には都市国家、ギルドが独立して国家になったものがあるようです。

 

 このルーシーより大きい都市はいくつかありますが、特に、フラン帝国帝都ブルタと、ラテラノ王国王都ヴェネの2つは大きく、どちらも人口は13万を超えると聞きました。

 

 とにかく私は、このルーシーのモスク宮殿に招待された訳です。

 大公との謁見は、明日の朝10時と決まりました。

 

「こちらでお休みください」

 さすがに大公の宮殿に仕える侍女さん、綺麗な方ばかりですよ。

 

「あの、お風呂とおトイレはどちらですか?」

「お風呂はこちらにあります、トイレはこの部屋にはありません、廊下を左に行った所にトイレがあります」

「大浴場はトイレの近くにあります、室内のお風呂を使用するならお申し付けください、魔法でお湯を張らせていただきます」

「私も魔法が使えますので、お手数を掛けることはありません、ありがとうございます」

 私が魔法を使えると聞いて、少し驚いた顔の侍女さんでした。

 

「ところで洗濯物はおありですか?よろしければ私たちが洗いますので、下着とか貞操帯とか、恥ずかしがらずにお出しください」

 

 えっ、いま変な響きの言葉を聞いたような……

「いえ、生活魔法が使えますので大丈夫ですよ、お心遣い痛み入ります」

 少々慌てた私を見て、クスッと笑い侍女さんは行ってしまいました。

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