【08話の1】 魔道士様になりました。

 

 それからは、エヴプラクシヤさんが側から離れません。

 食事の間、ずっと巨乳が押しつけられ、ご飯が食べにくくて……

「イルマタル様、はい♪」

 私に食べさせようとするのですからね……

「もう、1人で食べられます!」

「そうですか……」

 

「姉様、もう、その辺で、イルマタル様に嫌われますよ」

 マトリョーナさんに、たしなめられたエヴプラクシヤさんでした。

 

「ところで、この食事、美味しいですね、食べたことがない料理です」

 ヴェロニカさんが気を利かせて、話しを変えてくれました。

 

「東の方の『漢』の料理です」

「『漢』がイルマタル様の故郷なのですか?」

 エヴプラクシヤさんが聞きます、私のことについて、少しでも知りたいようです。

「違いますよ」


「姉様、イルマタル様はフィンの方よ、お名前はフィンの神話による女神様のお名前よ」

「ロイスターは『輝く』という意味、イルマタル・ロイスターとは、『輝ける原初の世界の大気の乙女』いう意味になるわ」

「最初にお名前をお聞きしたとき、お名前どおりの女神様と思ったわ!」

 

 マトリョーナさん、半端ない教養ですね。

 ところでフィンランドは、この世界ではフィンなのですね、私も勉強になります。

 

「女神様か……あながち嘘ではないような……」

 エヴプラクシヤさんの呟きに、3人は押し黙ったような……

「私は女神ではありませんよ、色々と秘密はありますが、神様は別におられます」


「エヴプラクシヤ様、きっとイルマタル様は、魔法を極めておられるのでしょう」

「『オーパーツ』をお使いなのですよ、古代の知識をお持ちの、偉大な魔道士様と、私は考えております」

 ヴェロニカさん、いい解釈です、これに乗りましょうね。

 

「まぁ、私の師匠が古代の魔法を研究していたのです」

「それを私が引き継いだわけですが、今際の際に、この知識は余りに危険なので、私の代で封印するようにといわれたのです」

「ですから、これ以上は聞かないでください」

 上手い!我ながら上手い言い訳です。

 

「じゃあ、お父様には、どのように説明しましょう……」

 マトリョーナさんがそんな事をいいます。

「うーん……」

 エヴプラクシヤさん、自分の事ではないですか……私のことでもありますが……

 

「どうも私は考えることは苦手で……身体を使うことなら任せて欲しいが、マトリョーナ、上手い方法を考えてくれないか?」

 マトリョーナさんに丸投げですか、困った姉様ですね、チョットばかりポンコツ?

 

「ヴェロニカのいうとおり、魔法を極めた魔道士様で良いのではありませんか」

「古代というのは封印、『オーパーツ』は東のどこかで、発掘品に全財産を投入して購入した、こんなところで良いのではありませんか」

 

 ということで、私、イルマタル・ロイスターはフィン出身、魔法を極めるために、東の地方をさまよい、ついに目的を達した魔道士様、との触れ込みで、大公に説明されることになったのです。

 マトリョーナさんは才女ですね。

 

 少しばかり長い休憩時間も、終わりとしましょう。

 SHERPATVに乗り込み、のんびりとモスク大公国の領都ルーシーにたどり着いたのは、日暮れも差し迫った4時近くでした。

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