【05話の1】 美女と死体とトラックと


「とにかく送りましょう、馬車は壊れていますので、私が何とかします」

「ところでこの死体はどうしますか?」

 男性の死体は5名、御者が1人、執事らしき方が1人、警護の人間が3名……

 

「なんとか領地まで運びたいのだが……」

「ここから目的地までどのくらいですか?」

「呪いの森を抜けたので、馬車で1日ぐらいかと」

 

 駅馬車は1日に70マイルから120マイル走ったといいます、112キロから192キロ、実働17時間ですか……

 

 私がトラックを出したとして、道の状況から、時速40キロで走ったとして4時間半……

 今は4時半、このあたりの日没は6時半というところ、あと2時間……夜間になったら、速度は落とさなければ危険……

 

「今すぐ出発したとしても、日没までには半分あたりまでしか行けない……いけるとこまでいって、野宿が正解か……」

 私が独り言を呟いていますと、ヴェロニカさんが聞きつけ、

「イルマタル様、途中に国軍の駐屯所があります、たしか真ん中より呪いの森側です」

 グッドなことを教えてくれました。

 

「わかりました、その駐屯所まで行きましょう、その後は相談、ところで今からのことは、見なかったことにしてくださいね」

「神様に誓ってお約束します」

 

 で、私はディーゼルバイクを収納、代わりにSHERPATV、ロシア製の4輪駆動の水陸両用トラックを取り出します。

 中には折り畳みの簡易ベッドがありますので、エヴプラクシヤさんには、そこに横になってもらい、ヴェロニカさんに介護してもらいましょう。

 

 私が抱きかかえて、エヴプラクシヤさんをベッドに運び、死体は申し訳ありませんが床に山積み、マトリョーナさんには助手席に乗ってもらいます。

 

 盗賊の死体は放置、国軍に回収してもらいますが、多分、森の動物に喰われるでしょうね。

 

「行きますよ、質問はなしです、マトリョーナさん、道なりに行けばよいのですね」

「はい」

 

 SHERPATVの最大速度は44キロ、40キロで爆走すると、日没前に目的の駐屯地が見えてきました。

 衛兵が右往左往していますが、委細構わず乗り付けます、慌てて衛兵が剣を構えています。

 

 マトリョーナさんが、

「私はモスク大公家第一公女、マトリョーナ・モスクです」

「盗賊に襲われ護衛の兵士は戦死、なんとか撃退し、ここまでたどり着きました」

「重症患者が1人、戦死した者のご遺体が5体、すぐに収容していただきたい、また私たちの宿舎を用意していただきたい!」

 

 こういいながら、何かの書類と、身分を証明するペンダントみたいなものを示しています。

 

 私も御付きの侍女の扱いで、泊めていただくことになりました。

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