第88話 競馬の結末
「ゴール!」
「おおおおぉぉぉっ!」
周りの歓声が凄くて、地面が揺れている様だ。
「どうだった、二人と……うぉ!」
隣で地にひれ伏す二人の姿が。こりゃ負けたっぽいな。
「あたいのお金がぁ」
「ウチの……ウチの……」
ヴァージュは少しショックの様な感じだが、リアーナは震えながら涙ぐんでる……。
「リアーナ、幾ら使ったの?」
「……ぐすっ…………鉄貨三百枚……」
「……さっきの全部?」
リアーナは黙ったまま、コクりと頷いた。
「あーるーじー!」
「ごめんなさい……」
リアーナが杖のラーズに怒られてるわ。
さて、俺のは……。
「あ……」
「どうしたのじゃ?」
「……てる……」
「なんじゃ?」
「当たってる!」
「なんじゃと!?」
「流石、蓮斗さんですわ!」
外れた二人からは、若干白い目で見られた。
「蓮斗くん、幾らになったの?」
「えっと……倍率が百五十倍だって」
「えぇ!? 蓮斗くん……ご馳走様……」
何か奢らなきゃ駄目な感じか?
「で幾ら賭けたのじゃ?」
「白金貨一枚」
あれ? 皆、黙っちゃった?
「「「はぁ!?」」」
え? なになに?
「何処の世界にそんな賭ける人がいるのよ!」
「蓮斗……お主は肝が据わっているのか、間抜けなのか……」
「流石、蓮斗さん!」
「あたい欲しい物がー!」
散々言われたが白金貨百五十枚ゲットだ。
換金には少し時間が掛かる様で、明日取りに来いとの事だ。おっさんの顔が青ざめていたのが、とても印象に残ったな。
「白金貨、百五十枚か……」
えっと、日本円で約一億五千万円……!
「えぇ!? そんなに!?」
「今頃驚くって、君の感情は壊れてるのかな?」
リアーナを始め、皆に呆れられてしまった。
「こんな大金…………馬車だ! 皆、商人を探そう!」
「そうですわね! 蓮斗さんがスタミナ切れにならない様に!」
「う……」
「ご、ごめんなさい。そんなつもりでは……」
「レーちゃん、一言多いねー!」
「転移者は二人とも体力が無いからのう……」
「どうせ、ウチは体力もお金も無いよ……」
と、取り敢えず馬車を探すか。
街中の店に聞いて回るが、知っている人は見付からなかった。
「全然、分からないな」
「先程の店の主人
「行商人か。王都なら結構来てそうなものだけど」
「戦争中じゃからの」
確かに、寄り付かない理由になるな。
「あ……」
「どうしたのじゃ?」
「馬と荷車、別に買えないかな?」
「じゃ、俺はちょっと小屋に行ってくるわ。レティシア達は手分けして、荷車を売ってるか、製作してくれる店を探して貰える?」
「分かりましたわ。小屋ってどちらのですか?」
「さっきの競技場の小屋さ。引退した馬とかの情報を仕入れてくる」
「へぇ……君、意外と良く考えてるね」
「ありがとよ、リアーナ」
意外と、と言うのが心外だが誉め言葉と取ろう。
あとで宿屋で集合する事にして行動を開始する。
俺は一人……クリスも一緒だけど、小屋に向かった。
「おぉ、さっきの兄ちゃん! 丁度良かった!」
「へ?」
「お金が思ったより早く届いてな、チケットは持っているかい?」
「持ってます!」
「じゃ、これで交換な! おめでとう!」
「あ、ありがとうございます!」
おっさんに数える様に言われたので、テーブルの上で白金貨を積みながら確認。ちゃんと百五十枚有る、これで億万長者だ!
「それとお願いって言うか、教えて欲しいんですけど……」
おっさんに事情を説明し、馬の情報を得る事に成功した。これで馬は何とかなるな。
「ありがとうございました!」
「あぁ、おめでとう!」
さて、商店街を通過しながら宿屋に戻るか。
「これで暫く金には困らないのう」
「そうだね!」
「強運じゃな」
「俺もビックリだよ! これでクリスの物を一杯買えるよ!」
「儂の物? 特に必要な物は無いのじゃが?」
「お酒とか?」
「蓮斗……お主、良い奴じゃの!」
クリスをお酒で釣りながら、商店街を闊歩する。
ん、あれは……?
「あ、蓮斗様ー!」
「ヴァージュ、どうしたの?」
「レーちゃんが、荷車を売ってる人の情報を見付けたんだけど……」
おぉ! 流石レティシアだ。
「で、見付けたんだけど?」
「店の人が勝負に勝ったら教えるって言ってて」
勝負? 何の勝負だろ? ヴァージュの視線の先を見ると、店主とレティシアが向かい合って座っている。
「チェックメイトですわ!」
「くっそー!」
え、これって……チェス?
「レーちゃん、すごーい!」
「当然ですわ!」
「ねーちゃん、すげぇな……約束だ、教えてやるよ」
南の地域の一角が工業地帯になっており、そこに造車所って所が有るとの事。店の主人に紹介状を貰い向かう事にした。
「ここの商人や製造業の方々は、この紹介状が無いと会ってもくれないそうですわ」
「なるほど……」
「面倒なので、知らぬ存ぜぬで通す人が多いそうですわ」
「紹介状の事をよく教えて貰えたね?」
「そ、それは……」
レティシアが困った顔をする……何だ?
「お金を渡しましたわ……」
な、なるほど……思い付かなかったわ。
「レティシア凄いじゃん!」
「え? そうですか? 軽蔑しませんの?」
「軽蔑だなんてしないよ! 情報をお金で買うなんて思い付かなかったよ!」
「そ、そうですか? えへへ……」
造車所を目指して歩く事になった。
あれ? リアーナ何処行った?
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