第84話 好きか嫌いか
「蓮斗様、ありがとー!」
「いや、決まって良かったよ……」
疲れた……マジで疲れた! まさかこんなに時間が掛かるとは。
「さ、次は?」
「武器か防具を見たいですわ」
「あたいもー!」
「じゃ、行こうか」
さてと、武器屋か防具屋は何処かな……出来れば魔法の武具が見たいな。
街を彷徨っていると、魔法付与専門店ムボークってのを見付けた。
ムボーク、無謀……何か怪しい気がするけど、入ってみる事にする。
カランカラン。扉を開けるとベルが鳴る。
「いらっしゃーい!」
店内から店員と思われる声が聞こえたが、その姿は見当たらない。
「ここだよ!」
へ? ここって……あ……部屋の隅の方に小さい女の子が立っていた。
「小さくて悪かったね!」
「いやいやいや! 部屋の隅に佇まれると、お人形さんみたいに見えちゃうから……」
「え……お人形さんみたいに可愛いなんて、お兄さん上手いね! 安くしとくよ!」
「は、はぁ……ありがとうございます」
可愛いとは一言も言ってないけど、まぁラッキーだな。
「店内の商品は、全て魔法が付与されているのかな?」
「うちのは全部そうだよ! 能力の強弱は別としてね」
「そうなんだ、ありがと」
「ゆっくり見ていってね!」
えっと……武器と防具に分かれてるな。
「じゃ、俺は防具を見てくるね」
「
「あたいは……武器を見るー!」
それぞれ移動開始、防具は…………お、有った有った。
ん……基本は防御力アップの付与か。
もう少し別な能力が付いた防具は無いかな?
こ、これは……一時的に浮く事が出来る兜!? 気になる!
「あっ……」
兜を触ろうとした瞬間、別人の手を触ってしまった。慌てて手を離して、その別人の手の持ち主を見た。
「ご、ごめん」
「いえ、こちらこそ」
背が高い綺麗な女の子……兜を物欲しそうな目で見つめている。これは譲ろう、男として。
「よ、良かったらどうぞ」
「え……良いんてすか?」
「俺は少し興味が湧いただけで、欲しいと思った訳じゃないから」
「そ、そうですか! では、遠慮なく」
彼女はニッコリと笑いながら兜を抱きしめ、俺に礼をして店員の元へと向かった。
綺麗な人だったな。
「蓮斗さん、今の方は?」
「え……知らない人だけど?」
「……そうですか」
え、何か疑われてる?
「レティシア、何か良い物あった?」
「ナイフを購入しましたわ」
「そっか。ヴァージュは?」
「あちらに……」
ヴァージュが何やら騒いでる。
「蓮斗様! これ欲しー!」
「これは……爪?」
手に装着する事が出来る、金属で出来た爪状の物だ。
「えっと、
素早いヴァージュには打って付けだな。
「よし、買おうか」
「やったー!」
購入を終えたので、次の店に移動かな?
「あ、次は服屋で良いかな?」
「良いですわね!」
「あたいも服欲しいー!」
メインはクリスだけどね。
早速、店を探すが……服屋さんは何処かな?
「あそこに有ったー!」
店の前に来たが、俺のセンスは微妙らしいし……。
「二人にお願いが有るんだけど……」
「何でしょうか?」
「なーにー?」
「クリスの服を選んで欲しいんだ」
「儂の服?」
「あぁ、この前色々言われたからさ……」
「儂は気に入っておる。買わなくて良いのじゃ」
「クリスが気に入ってるのでしたら、別に買う必要は無いと思いますわ」
「あたいも似合うと思うよー」
「儂は他人からどう思われても全く気にしないのじゃ。要は自分が好きか嫌いかじゃ」
そ、そうだよな! そもそもゴスロリって認識出来るのは、転移者や転生者だけだし。
「でも折角だから、何か買おうかな」
「蓮斗、お主が選ぶ物なら良いぞ」
「分かった!」
全員の平服を一着ずつ購入し、次へと向かう事にする。
「次は魔具屋かな?」
「そうですわね。王都なら良いアイテムが有るかも知れませんわ」
だよね! 期待は高まるけど、変なアイテムも有る様な気がするから怖いわ。
「ここですわね……」
店全体が骸骨をモチーフにした見た目……怪し過ぎるわ!
ま、入るけどさ。
「へいっ! らっしゃい!」
ここは市場か? 店内には魔法とは縁も
「ちょっと失礼するよ」
「ゆっくり見ていってくれ!」
掘り出し物は有るかな?
「クリスも気になる物が有ったら教えてね」
「うむ。酒を生み出す魔具が有れば良いのう」
は? 流石にお酒は作った事無いよ……日本で無免許だと法律違反だし。
「蓮斗様ー! これー!」
ん……魔袋か。何個有っても困らないし、買っても良いかな。
魔袋に手を掛けると、俺の手に誰かが手を掛ける……デジャヴ?
「あら、先程の……」
「あ、さっきの綺麗な人」
「え……」
しまった! 思わず口から出て……。
「綺麗だなんて……そんな……お上手ですね」
「素直に綺麗だなと思って……」
「ありがとう」
レティシアの視線が、もの凄ーく痛い。
「俺は魔袋を持ってるから、どうぞ買ってください」
「今回も良いんですか?」
「どうぞ」
彼女はお辞儀をし、笑顔でこの場を去って行った。
「綺麗な方でしたわね」
やっば……顔が怒ってるよ。
「レティシアも綺麗じゃん」
「え……そうですか!? えへ……えへへ……」
「蓮斗……」
仕方が無かったんだよ……。
特に掘り出し物が無く、店を後にする事となった。
偶然って有るんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます