第67話 試練再び

 気軽に王都へ行こう、と言ったものの……二十日くらい掛かる。

 王都はシシーより南に有り、トメオと言う町が途中に有るとの話だ。

 シシーへの中継を担っている町って事だな。


「今思えば、凛は王都に向かったのかな?」

「薙刀の小娘かの……方向的にはそうじゃの」


 凛は常に俺達の先へ行ってる感じだ。


「二十日間は流石に遠いね」

わたくしは蓮斗さんと一緒に居れるなら何日でも……」

「あたいもー!」

「そ、そう? ありがとね?」


 嬉しいな! えへ……いかん、顔を引き締めないと。


「そう言えば、銃の転移者って俺の四倍以上のレベルって言ってたよね?」

「言っておったの」

「て事は、レベル250か、それ以上って事かな?」

「そうなるの……それが何じゃ?」

「そんなの相手に、レベル100越えが何人居ても厳しいんじゃないかな?」

「あの代行の男は100越えと言っただけで、幾つかは分からんのじゃ。200とかも居るかも知れないじゃろ?」

「まぁ、確かに……」


 200近くが五人とか居れば問題ないか……実際は知らんけど。


「蓮斗さん、あれ……」


 あれ? げ……あの小屋は……。


「試練の間じゃの」

「レベルも上げたいし、行くしかないか」

「そうですわね!」

「準備……と言うか装備の確認を」


 アイテムは結構買ったし、予備の魔法剣も有る。回復術も使えるし……そう言えば、回復術は詠唱無しで使えたな。

 普通はどうなんだろう? これも転移者の特権だったりして。


「大丈夫ですわ」

「あたいも大丈夫ー!」

「じゃ、入るか……」


 三度目の試練の間、慣れたものだ。

 入室して転送……奴が出てきた。


「ようこそ、転移者ご一行」

「あぁ」

「剣の転移者は……三回目ですね。準備が出来たら教えて下さいね」

「ヴァージュはどうしようか?」

「最初から出た方がいいかなー?」

「今回はそうしようか」

「あいあいさー!」


 さて、今回は何が出てくるか……。


「代行者、オーケーだ」

「分かりました。今回は三名ですので、三名の団体戦になります」

「はぁ!? 何だよそれ!?」

「団体戦とは……」


 それは知ってるわ……一応、聞くけど。


「一対一で戦って貰います。二勝した方の勝ちになります」

「どうやったら勝ちになるんだ?」

「相手を殺すか、場外に出せば勝利です」


 場外? リングか何かの上で戦うのか?


「場外以外で負けると言う事は……?」

「死ですね」


 な!? 簡単に……こいつ。


「途中で死亡者が出たとしても、最終的に団体戦で勝てば全員生き返ります」


 どう言うシステムだ……。


「最終的に負けたら?」

「生き残ったとしても、全員死にます」


 こいつ……ムカつくな。

 それにしてもハイリスク過ぎないか?


「因みにキャンセルは……」

「出来ません」


 ですよねー。


「先ずは順番を決めてください」


 これ結構重要かも……。


「どうしようか……」

「レベル順じゃろか?」


 弱い順で出てくるなら、それで良いかも。


「考えても分からないし……そうしようか?」

「ええ。良いですわ」

「あたいも良いよー!」

「じゃあ、レティシア、俺、ヴァージュで」


 二人とも頷き、代行者に順番を告げた。


「では、こちらへ」


 そこには、床に青い板が敷いてあった。


「こちらは二十メートル四方の広さとなっております。この青い部分から、少しでもはみ出ると場外になります」

「結構、広いな……」

「ですわね……」


 広いって事は、それなりに大きい魔物が出るって事なのか?


「では一人目の方、中央へ」

「行ってきますわ」

「気を付けて!」

「レーちゃん、がんばっ!」


 レティシアが立ち位置まで移動すると、レティシアの前に黒い影が現れた。


「観戦者の方が場内に入ると、戦闘者が負ける事になりますので注意を」


 俺達は軽く頷いた。


「では、始め!」


 レティシアはいきなり剣技を使う。


「剣技、廻陣炎舞!」


 影の方も剣を構えて動き出す。


「剣技、廻陣炎舞!」


 はぁ!? 同じ剣技だと?

 剣と剣のぶつかり合う音が響き渡る。


「レーちゃんの相手って、レーちゃんだね」


 そういや……あの影、レティシアと同じ形の様な……って同じだ!


「自分の分身と戦うのか!?」

「悪趣味じゃの……」


 レティシアが剣を振れば、影も剣をふる。

 魔法を使えば、魔法を使ってくる……厄介だ。


「これじゃ、決着が付かないねー!」


 その通りだ。

 俺らに出来る事は応援する事くらいか。


「はっ!」

「はっ!」

 

 声まで同じだ。何か良い方法は……。


「アイテムは小娘だけじゃろうか?」


 あ、なるほど……だとすれば少し有利か?


「レティシア、危なくなったらアイテムだ!」

「分かりましたわ!」


 問題は、使わせてくれるか……と言う事と、相手もアイテムを持っているかって事だ。


「くっ……」


 レティシアは手一杯離れ、ポーションを飲む……影の方は……飲んでない!


「レティシアの名に於いて命ず、光の精霊達よ、我が無数の矢となり敵を滅ぼせ!」


 唱えたのは影の方だった。

 無数の矢はレティシアに直撃。


「ぐっ……」


 ポーションを飲んだ分は、あっさり削られてしまった。




 頑張って、レティシア!

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