第68話 二戦目、開始!
レティシアは激戦を展開している。
HPは、互いに残り200程度。
人同士だと魔物に与える時のダメージより、かなり低くなる様だ。
いつも魔物に与えているダメージを、そのまま自分が喰らうと一撃死だもんな。
影の方はアイテムを使えない。
レティシアはアイテムを使えるが、使うと影は魔法を撃ってくる。
ポーションを使うのは得策では無いって事になる。
しかし……。
「はっ!」
「たぁっ!」
同じ攻撃が続くし、来る所が分かっているから、ダメージを与え難いし喰らい難い。
つまり、平行線だ。
「良い方法を思い付いたのじゃ!」
クリスが突然叫ぶ。
「どんな方法?」
「まぁ、任せるのじゃ」
何か……嫌な予感しかしない……。
「発情小娘! 勝てば蓮斗の接吻が待っておるぞ! 死ぬ気で行くのじゃ!」
「なっ……」
「クーちゃん天才!」
一瞬、レティシアの動きが止まる……。
「蓮斗さんと接吻……キ、キ、キ、キス!?」
うわぁ……目の色が……。
「剣技、華輪連擊!」
おぉ! 新技!?
「剣技、華輪連擊!」
あ、そうか……影も同じ技を使えるのか。
バキバキと凄まじい音が響き渡る。
やはり、互角か……。
「かーらーのー、愛の限界連擊!」
これは剣技じゃ無い!? レティシアは凄まじい気迫で、休む間も無く剣を振り続ける。
「れ! ん! と! さーん!」
な、なんか怖い……。
「くっ……」
レティシアのスタミナが切れ、完全に止まってしまった。
影はひたすら防御に徹していた為、余力が有りそうだ……これはマズい!
「そこまで! 勝者、転移者側!」
「へ?」
あ、影の足が青い床から少し出ていた。
「や、やりましたわ!」
「お、おめでとう! レティシア!」
「レーちゃん、おめっとー!」
「良くやったの!」
「これも蓮斗さんのお陰ですわ!」
「俺は何もしてないよ!」
「そ、その…………キ、キ、キ……」
あ……ク、クリス……何て事を……。
「発情小娘、接吻は生きて出れたらじゃ」
「わ、分かりましたわ!」
「次は俺達の番だな」
「蓮斗様、クーちゃん、がんばー!」
「蓮斗さん、頑張って下さい!」
さ、頑張るぞ……俺は二人に頷く。
でも、俺の影は俺より効率良くスキルを使いそうだな……。
「二人目の方、前へ」
構えると影が現れる……こいつは……。
「蓮斗さんの影じゃ無いですわ!」
「あたい、見た事あるー」
影は両手に銃を持っていた。
「何てこった……」
「これは予想外じゃの……」
「では、始め!」
号令と共に影は銃を構える。
「先ずは縮地術で移動じゃ!」
「おう!」
スタートでの銃撃を避ける為、縮地術で影の周りを回転する様に移動する。
これで直撃は高確率で避けられる筈……
バンッバンッ!
もの凄い音が二回……。
え! これって!
「蓮斗、これがお主の言っておった銃かの?」
銃口から射出された弾は、転移者の時の様に魔法では無かった……あれは実弾!?
「俺も本物は見た事が無いんだ。テレビでしか見た事が……」
「てれび……とは何じゃ?」
「こ、今度、ゆっくりね?」
「仕方が無いのう」
ん? 流れ弾がレティシアやヴァージュに当たったりしないか?
「場外への遠距離攻撃の効果は、全て打ち消されますのでご心配なく」
「そうか……」
こいつ、心が読めるのか……。
「はい」
代行者って何者なんだ……。
「蓮斗! 攻撃じゃ!」
「おう!」
連続縮地術からの攻撃、これは当たるだろ!
スカッ…………え?
後ろで物音が聞こえる……急いで振り返ると、影は銃口をこちらに向けて構えていた。
縮地術か!
マズいと思った瞬間……爆発音が鳴り、胸と肩に激痛が走った。
「ぐぁ…………」
「蓮斗!」
「だ、大丈夫だ……」
痛みを我慢し、縮地術からの斬り込み。
バキッと言う音が鳴る。
影は銃を二つ交差して構え、俺の剣を受け止めていた。
「な…………うぐっ!」
そのまま俺は前蹴りを喰らい、後ろに吹っ飛んだ。
バンッバンッバンッバンッ!
影の放った銃弾は、俺を貫通していくのが分かった。
「うがぁぁ……」
「蓮斗さん!」
レティシアとヴァージュの泣き叫ぶ声が聞こえる。
「しっかりするのじゃ!」
体のあちこちが痛い……。
くそっ、こうなりゃ
「剣技、雷迅閃斬!」
俺は雷を纏った斬擊波を放つ。
影は予測する事が出来なかったのか、縮地術で回避せずに銃で受け止めた。
斬擊波は、影の片腕を切り落とした。
「やった……」
喜んだのも束の間、俺は鉛の弾を連続で受けてしまった。
「ぶはっ…………」
影は片方の銃だけで、五、六発を連射し、全て俺の上半身を貫通して行った。
「口から……血が……止まら……ない……」
体が熱い……いや寒いのか?
体中のあちこちから、血が流れているのが見える。
「蓮斗様! 目を開けて!」
「蓮斗さん!」
二人が叫んでる……頑張らなきゃ……。
「蓮斗! 気を保つのじゃ!」
分かってるよ、クリス……。
でも何か……眠いんだ……。
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