第47話 盗賊と指輪

 ギルドレベルの確認の為、会館に向かう道中。


「あ、寄り道して良いかな?」

「どうされたのですか?」

「クリスの剣が折れちゃったから買わないと」

「そうじゃったな」

「それは先に行った方が良いですわ」


 で、武器屋に来たのだが。


「この店、むっちゃ怪しいんですけど……」

「魔法の武器は、この店の品種が一番多いらしいですわ……」


 意を決して店内へ。


「こ、これは……」


 確かに多種多様だな。

 しかも「魔法の武器はコチラ」なんて書いてある。


「クリス、どれが良い?」

「……持たぬと分からんな」


 はい、天使ちゃん降臨。


「これが良いの!」


 どれどれ……冷気を帯びる剣……白金貨二枚……高い!


「ちょ、ちょっと待っててね……あ、他の武器でも見ててくれ」


 さ、急いでお金の確認だ……白金貨二枚って事は、金貨二十枚……約二百万円!?

 どう見ても金貨十枚も無いぞ……。


 あ、先立つ箱ちゃん! 一応、開けてみるか。

 ん…………んん?…………んんん!?

 これ……銀貨と違う……しかも五十六枚!?


「ねぇレティシア、これって?」

「凄い! 白金貨ですわね!」


 やっぱり? て事は……五千六百万円!?

 何でこんなに? 

 後で調べるとして、二枚でクリスの剣を買う。


「蓮斗! 太っ腹じゃの!」


 これ持ってる枚数を言ったら駄目なやつだ。

 ついでに俺も魔法の剣を一振り、魔法の短剣を四振り、魔法の弓を購入。

 魔法の弓は、魔法の矢が無限に出るらしい。

 とってもお得だ。

 全部で白金貨六枚だったので、皆に見られない様に、こっそり店主に払う。


「ヴァージュ、この短剣を使ってくれ」

「蓮斗様、ありがとー!」


 ヴァージュには、火と土属性の短剣を渡した。

 因みに俺用のは、風系の雷と水属性だ。


「やっと、蓮斗様から結納品を貰えたー!」


 え!?


「良かったですわね、ヴァージュ」

「良かったのう」

「うん!」


 あれ、そう言う事になってるし……。

 微妙な感じのまま、ギルド会館のカウンターへ向かう。


「お待ちしておりました」

「どうも」

「本日は、マスターとサブマスターが不在の為、私からの開示連絡になります」

「あ、お願いします」


 事務員さんは、ヴァージュの身分証を渡してくれた。


「先ずはヴァージュさん、正式に会員となります。仮身分証は使用出来なくなりますので、破棄をお願い致します」

「はーい!」

「そしてギルドレベルですが、皆様10になります」


 え……全員、この街の最高レベル?


「これ以上レベルを上げたい場合は、他の街に移動して頂くしかありません」


 事務員さんの話によると、ここから西にある港町シシー、北にある貿易都市ニカが近隣になるらしい。

 シシーはレベル15までで、ニカはレベル20までの様だ。


「勿論、この街に留まって頂けると助かります。いつ緊急事態が発生するか分かりませんので」

「分かりました。ありがとうございましたー」


 ギルド会館を後にし、カフェっぽい所で作戦会議だ。


「俺は移動しようと思うんだけど……?」

「私も付いて行きますわ」

「あたいもー!」

「決まりじゃの」


 早っ!


「じゃ……どっちに行こうか?」

「お待たせ致しました、ブラッドル三つでございます。ごゆっくり」


 凄いタイミングだな。

 ブラッドルって何だ? 血? まさかね……。


「美味しいですわ……」

「ねー」


 熱く白い液体……こ、これは……ホットミルク?


「甘いな……砂糖?」

「そうですわね」


 えっと、話が途切れちゃったな……戻そう。


「儂はシシーかの。魚が旨そうじゃ」

「あたいは何でも有りそうなニカ!」


 二人共、何か動機が微妙ですが。


「シシーからは途中まで、ニカへの船が出ておりますわ」

「じゃ、シシー経由でニカが妥当か」

「だと思いますわ」


 でも……。


「レティシア、何故シシーから直接ニカに行けないの? 仮にも貿易都市でしょ? それとも海に隣接してないとか?」

「ニカも海沿いの街ですわ。私も聞いた話なのですが、ニカの港は今閉鎖しているとか」


 そうなのか……。


「やっぱり、シシーの港町からか」


 て事で、食料を買い込む。


「シシーの港町までは、どれくらい掛かるのかな?」

「多分、二週間くらいだと思いますわ」


 へー……えぇ!?

 食料をたっぷり補充しておこう。

 さ、出発……街を出て一時間くらいだろうか。


「蓮斗、尾行がいるの」

「え……」


 こちらが気付いた事が分かったのか、俺達の周りを十人くらいに囲まれた。


「おい、兄ちゃん。その女を置いて消えな!」

「は?」


 盗賊的な? 看破術で見ると全員レベルは10前後……。

 俺、58だよ? 大丈夫かな?


「あんたらこそ、止めておいた方が良いよ?」


 盗賊達は顔を見合わせて笑いだす。


「がっはっはっ、マジかこいつ!?」


 何かムカつくな……。

 俺は縮地術で、全員から武器を奪ってみた。

 当然、盗賊達は驚く。


「な、何だ!? 見えなかったぞ!」

「まだやる?」

「くっ……あ、兄貴!」


 兄貴?

 叫んだ男の指輪から一人の男が現れた。


「指輪から人が!」

「うちのやつを可愛がってくれたのはお前らか!」


 いやいや、あんたらから絡んできたんでしょ?

 

〔名前:リビド 種族:人〕

〔レベル:65〕

〔H P:2319〕

〔その他:閲覧権限がありません〕


 どうせ大した事……有るわ!


「レティシア! 気を付けろ、こいつ強い!」

「分かりましたわ!」


 俺達は素早く戦闘態勢を取った。




 便利な指輪だな。

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