第48話 匂いフェチ?

 兄貴って奴、レベルが高い……。

 指輪から出現したところを見ると……魔法職か?

 武器は持ってないし防具は革の鎧?


「で、何の用ですか? リビドさん?」


 少し揺さぶってみる。


「な……何故、俺の名を? なるほど、看破術持ちか」


 意外と冷静か?


「有り金と女を置いて去れ。命だけは助けてやるぞ?」

「お断りしますわ!」

「元気な女だな! 絶望に変わる顔を見たくなるわ!」


 そう言い放つと手を上げ叫ぶ。


「出でよ、火龍剣!」


 リビドの手に炎が現れ、それは剣へと形を変えた。


「剣が炎を纏っている!」

「魔法剣ですわ……」

「さぁ燃やし尽くしてやる。女は服だけな! わっはっはっ!」

「何て破廉恥な人ですの!」

「小娘と良い勝負じゃの!」

「な、何ですって!」


 ん、リビドの様子が変だぞ?


「インテリジェンスソード……転移者か!?」

「だったら何だ?」

「転移者を殺すと経験値が大量に入るなぁ!」

「何だこいつ……」


 レティシアが切り込もうとするが、リビドは炎の剣を振り払い近付けない。


「厄介な炎ですわ!」

「じゃあ、これなら?」


 俺は得意の縮地術で一気に間合いを詰める。


「熱っ……」


 余りにも熱かった為、思わず下がってしまった……何だ?

 リビドを見ると鎧が炎に包まれていた。


「何だこれ!?」

「くくっ……お前らは俺に触れる事も出来ずに燃やされるのだ!」


 どうする? 炎が邪魔だな。


「困りましたわね」

「炎を消す方法なら有るのじゃ」


 おー! 流石クリスだ!


「どんな方法?」

「儂が魔法を使ったら躊躇せずに連続攻撃じゃ。相手が倒れるまでの」

「分かった!」

「恐らく短時間じゃから全員で攻撃じゃ! 分かったかの影の小娘?」

「あーい!」


 リビドが接近してレティシアを狙う。

 縮地術で割り込み、剣を受けるが……熱い!

 直ぐに二人とも離脱。


「手も足も出ないとは、この事だな! わっはっはっ!」


 無茶苦茶、楽しそうだなアイツ。


「クリスの名に於いて命ず、我に選ばれし風の精霊よ、の場所より退しりぞけ! 真空の域!」


 クリスが魔法の詠唱を終えると、リビドは首を触りながら苦しみもがく。

 それと同時に炎が消える。


「今だ!」


 全員で一気に攻撃を仕掛ける。

 周りの盗賊達はクリスの火炎の輪で振り払い、勝負は呆気なくついてしまった。


「倒した……?」

「じゃな」


 クリスの魔法のお陰で事無きを得たのだが。


「クリス、今の魔法は?」

「真空にする魔法じゃ。本来は窒息や魔法詠唱の妨害に使うのじゃが、炎は真空で直ぐ消えるのでな」

「凄いな……そんな便利な魔法有ったんだ?」

「いや……転移者を倒した時に一部の記憶が戻っての、魔法も少し思い出したのじゃ」


 記憶が一部戻った? 気になるな……。


「どんな記憶?」

「人間としての記憶じゃ。蓮斗は女の過去を知りたい無粋者なのかの?」

「な、何でもありません!」

「良き事じゃ」


 俺達は盗賊達から目ぼしい物が無いか確認していた。


「何か、盗賊から盗んでいる感じがする……」

「蓮斗さん、私達は襲われたのですから、当然の権利ですわ! 私の貞操も危なかったですし」

「そうじゃな」

「そうだよ蓮斗様! この世界では普通だよ!」


 女の子達は逞しいなぁ。こう言う時は〔罪悪感緩和〕が発動しないんだな。


「指輪くらいですわね……武具は臭いですし」


 臭いって……死体とは言え少し可哀想だな。


「ねぇレティシア、俺の匂いは大丈夫かな?」

「え……蓮斗さんの……しょ、少々お待ち下さいませ!」


 レティシアは一旦離れ、大きく深呼吸を数回して戻ってきた……何だ?


「お待たせしましたわ!」

「う、うん、頼むよ」

「くんくん……くん……くん……へへ……へへへ」


 どんどんレティシアの顔がだらしなく……?


「ちょっ……レティシア!?」

「はっ! だ、大丈夫ですわ! 大変、堪能……魅力的な香りでしたわ!」

「あ……そう? ありがと?」

「いえいえ、何時でもチェック致しますわ!」

「レーちゃん気持ち悪いー!」

「この発情小娘が……」

「な、何ですの! さ、行きましょう!」


 レティシア……その美貌とは裏腹に残念な子。

 

「蓮斗様!」

「なに?」

「あたいも気になるから嗅いでいーい?」

「な……駄目です」

「えー! レーちゃんだけズルいー!」

「クーちゃんも嗅ぎたいよね?」

「儂は匂いより……お…………な、何を言わす気じゃ!」


 なになに? クリスちゃん、超気になりますよ?

 匂いの件は置いといて、この辺も物騒だな。


「あのさ、何かと遭遇した時、クリスとヴァージュは声を出さない方が良さそうだね」

「ギリギリまで隠しておくって事かの?」

「そうそう。特にヴァージュは奇襲攻撃出来るし」

「分かったよー! 寝てたらごめんね!」

「え? 影の中で寝れるの?」

「うん! 大体寝てるよ!」


 寝てる間に目的地に着くとか……良いなぁ。


「儂も似たようなもんじゃがの……」

「別に駄目って言ってないから!」


 俺、何で弁解してるんだろ?


「歩かないとなまってしまいますわ!」

「鍛え方が違うのじゃ」

「そーだ、そーだ!」


 また始まった……。

 さ、約二週間頑張ろう! 色んな意味で。




 レティシアは匂いフェチか……。

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