第45話 アイテムを求めて
数日後、ターゴフの街に戻ってきた。
早速、道具屋に向かい、解石のアイテムを探す。
「ヴァージュ、どの店だったか分かるか?」
「んー……覚えてない!」
「そ、そうか……」
手当たり次第に行くか。
「いらっしゃい!」
「石化解除のアイテムって有りますか?」
「ごめんねー、うちには無いねー」
「そ、そうですか……」
このやり取りを何回か繰り返す。
「売ってない……本当に見たの、ヴァージュ?」
「夢だったのかな?」
ここで、変な事を思い出す。
「ヴァージュ……俺達が出会ったのって、この街を出てからじゃない?」
「そう言えば、そうじゃな……」
「あ……じゃあ見たのは、夢かー!」
おいっ!
でも、そんな都合の良い夢を見るもんか?
「もしかして、呪われている時に俺が見た記憶が……」
「儂の人化を見た時、初めて見た感じじゃった。呪いの状態の記憶が有れば、初めてじゃない筈じゃ」
「と、言う事は……」
「夢かなー!?」
何て事だ……ごめんレティシア、もう少し時間が掛かりそうだよ。
「……小娘、呪いで蓮斗に憑く前の記憶は有るのかの?」
「んー……殆ど忘れてるけど、断片的にかな!」
「蓮斗、低いが可能性は有りそうじゃ」
その後、街中の道具屋を探したが、見付からなかった。
「仕方が無い。日も暮れそうだし、ギルドに報告に行こう……」
「そうじゃな」
ギルド会館に到着。
「懐かしい感じがするー!」
「そうなんだ」
「うん!」
意気揚々と影から出てきたヴァージュが、入口を開けようとする。
「開かないよー!」
俺は身分証のシステムをヴァージュに説明した。
入口を通過する時だけ影に戻って貰う。
「面倒臭いね!」
そうだな……今後の事も考えて、ヴァージュの身分証も発行して貰うか。
さて、カウンターへと……。
「蓮斗、道具屋が見えるのじゃ」
「お、見ていくか……」
「おっさん、石化を解除出来るアイテムなんて無いよね……?」
「有るぞ! 高いけどなっ!」
あ、有った……。
「因みに幾ら?」
「金貨五枚だ」
金貨五枚……一枚約十万……ご、五十万円!?
足元を見てないか? 背に腹は代えられないってやつか……。
「おっさん、それを一つ頼むよ」
「毎度! 兄ちゃん、結構金持ちだな!」
ポーションを一つ受け取った。
「おっさん、これどうやって使うんだ?」
「対象に振り掛けるだけだ。それ一本で一人分だ。ケチったら中途半端になるから、気を付けろよ!」
「分かったよ、ありがと」
「また頼むよ!」
会館内で液体を掛けるのは気が引けるので、一旦、会館の外に出る。
「ヴァージュ」
「うん、手伝うよ!」
何とか魔袋から出す事に成功。入れるのは楽だったけど、傷付けない様に出すのは難しい。
「じゃ、掛けるよ……」
「蓮斗様! お胸だけ掛けたら、そこだけ戻るのかな?」
「え……」
て事は……えぇ! 凄い事にならない!?
「蓮斗様、顔がやらしいー!」
「うっ……」
「変態じゃ……」
なんで!? ヴァージュが余計な事を言うから……想像しちゃったのは俺だけどさ……。
頭の上からポーションを掛けると、レティシアは光り出した。
光が収まると同時に、レティシアは元の身体に戻った。
「れ、蓮斗さーん……うっ、うっ……」
レティシアは泣きながら抱き着いて来た。
相当、不安だったのだろう……ん? 普通、ここは? とか言わない?
レティシアが落ち着いたとこで、ヴァージュに一言……。
「誰が重いですって! 誰の胸が硬いですって! 何で胸だけなのよ!」
「レーちゃん、聞こえてたの!?」
石化中でも意識は有るんだ……胸を触らなくて良かったー。
「何にせよ戻って良かった! さ、報告に行こう!」
「はい!」
元に戻って、本当に良かった……。
一応、ヴァージュには影に戻って貰い、会館内へ。
カウンターへ行くと、応接室に通される。
「良く戻ったな!」
奥から、サブマスターのバルダーが出てきた。
「先ずは報告を頼む」
俺達は今回の出来事と可能性の報告をした。
他のギルドメンバーは全滅していた事。
人の力を吸収したり、付与出来る魔術である事。
遺跡の魔術結社を討伐した事。
転移者が絡んでおり、それを討伐した事。
転移者を騙した張本人は居なかった事。
その張本人が、魔術結社の長である可能性。
こんなところか……。
「そうだったのか……正直、侮っていた。苦労を掛けて済まなかったな。他に道中は問題は無かったのか?」
聞かれれば、答えますとも。
途中の村の話、石化の話など蛇足的だが話した。
「本来の仕事とは関係無いので、そちらには何も出来無いが……」
そう言うと、バルダーは事務員に目を配らせ、何か箱を持ってきた。
「一応、渡しておこう。ギルドとして何も出せないが、俺の個人的プレゼントだ」
箱を開けてみる……ポーション?
〔ディスペルストーンポーションを獲得しました〕
……持ってるんかいっ!
まぁ、いざって時に取って置こう。
「また石化したら困るからな、貰ってくれ」
「助かります」
「今回の報酬は渡すが、他に何か無いか?」
そもそも強制で参加させられて、報酬の内容も知らないんだけどね。
「この子に身分証を作って貰えませんか?」
影からヴァージュが出てくる。
「な……魔物か?」
「いえ、特殊能力です」
「そ、そうか……分かった。身分証を手配するから、検査を受けてくれ」
「行ってきまーす」
ヴァージュはニコニコしながら手を振って退席した。
「ギルドレベルの再付与をするから、二人も後で検査を受けていってくれ。他には無いか?」
「レティシアは何か無い?」
「私は……特に無いですわ」
「俺も特に無いですね」
「分かった。何か有れば、いつでも聞きに来てくれ。今回は助かった、ゆっくり休んでくれ」
俺達は検査を受け、ギルド会館を後にした。
「検査結果は明日だから、今日の宿を探すか……」
「そうですわね」
「あれ? ヴァージュの身分証は?」
「あたいも明日だって! 代わりにこんなの貰ったよ?」
ん……仮身分証……?
「これで会館に入れるって!」
「なるほどね……」
影に潜れば関係無いけど……と思ったり。
さて、何処に泊まろうか。
この前の所は安いけど、女将のおばちゃんがなぁ……。
「私は以前の所で宜しいかと?」
「そ、そう……?」
「何じゃ? 何か気に入らんのか?」
「いや……」
「あたいも皆が行ったとこ、行ーきーたーいー!」
出たな、わがまま娘……。
仕方が無い、前回安くして貰ったし、朝食も付けて売り上げに貢献しよう。
俺達は宿に向けて歩きだした。
ポーション……灯台もと暗しだね。
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