第38話 イーメの遺跡
やっと着いた。山を六つ分……遠かったなー。
先に到着している筈のギルドメンバー……見当たらない。
ま、こんな所をのほほんと歩いてたら、見つかって攻撃されちゃうよね。
「入口は一つか……」
「正面突破は、気が引けますわね……」
うーん、どうしたものか?
「ヴァージュ、俺の影から他の影に移動とかって出来る?」
「それは無理だよ! あたいは蓮斗様の影だけに生きるのー」
「そっか……」
何か言い方が気になるが……無視しよう。
「どうにか気付かれ難い方法で、侵入する事が出来ないかな?」
「他のギルドメンバーは、どうやって入ったんでしょう? 正面でしょうか?」
レティシアの言う通りだ。体を透明にする、とか出来れば良いのに…………男の夢だな!
「皆、隠れるのじゃ!」
入口から誰か出てくる。見た目は剣士風……一人で走っている。
「逃げてる?」
「……の様じゃの」
その時、入口からもう一つ出てくる……蛇? 大きい……大蛇か!?
その剣士を追って、大蛇の様な物が胴体の途切れる事無く追い掛け、丸飲みにしてしまった。
「なっ……」
「蓮斗、看破じゃ!」
そうだ、こんな時こそ冷静に……。
〔名前:シーサーペント 種族:蛇〕
〔レベル:15〕
〔H P:24583〕
〔その他:閲覧権限がありません〕
「え……シーサーペント?」
「海蛇じゃな」
「例の魔術強化かしら?」
レベルが低いがHPが高い、基本値が高いって事か。それともレティシアの言う通り、魔術強化なのか? どっちにしても、あんなと戦うのかよ……。
「これさ……外で戦った方が、戦い易くない?」
「……そうかも知れんの」
「……同意ですわ」
大蛇は、こちらに気付いて無い……何とか気付かせないと……あ。
「レティシア、魔法の矢を頼む!」
「分かりましたわ!」
レティシアは、大蛇に向かって指を構える。
「レティシアの名に於いて命ず、光の精霊よ、我が矢となりて敵を討て!」
レティシアの放った矢は、見事に大蛇の目に命中した。
「ナイス、レティシア!」
「あ、有り難う御座います!」
目を狙ったのは大正解だ!
大蛇は片目を失って、のた打ち回る……と言うか、その場でクルクル回ってる。ちょっと滑稽だな。
ある程度、痛みが治まったのだろうか。こちらに気付いた大蛇は、勢い良く向かってきた。
「改めて見ると……でかいな」
お、やっと尻尾の先が見えた。これ……長さ数十メートルとか有るんじゃない?
「クリス、遅延魔法を!」
「それは……ちと範囲が大き過ぎて効かぬじゃろ……」
「うそん……」
「じゃが…………大地と大気に彷徨う精霊達よ、我が敵になる者に無慈悲な枷を与えん! 重力魔法、重圧の気じゃ!」
大蛇は頭から尻尾の先まで、地面に押し付けられた格好になった。凄いぞ、クリス!
こうなれば、もうタコ殴りだね。
俺自身の攻撃力も上がっていたせいか、意外とあっさりと倒す事に成功した。
この大蛇にも、眉間に魔石が埋め込まれていた。魔石を破壊すると、灰の様になり消え去ってしまった。
「後数分遅かったら、魔法が解けてたのう」
「え……マジか、危なかったんだね」
さて、ここからが問題。あの大蛇が消えた事で、魔術結社は何かしら行動に出るだろう。
「あれ……?」
「どうかしましたの?」
「今回は調査って名目で、殺生も云々言ってたけど……」
「調査は建前じゃな」
「やっぱり?」
「討伐ですわね……」
あら、軽く騙されたか? まぁギルド自体には悪意が有ったとも思えないし、穏便に済ませる事が出来ればラッキー的な感覚か。
「こうなると、正面突破かな?」
「ですわね」
「敵の準備が微妙な内に叩くか、一日待って油断させて突入するか……勿論、一日待つ場合は、敵の守備が万全になる可能性が高い……」
「直ぐ突入しても、あの大蛇が比較的弱い部類だとしたら、敵の体制的には……同じですわね……」
どちらにしても、可能性の問題だから仕方がない。やはり、少しでも動揺している今がチャンスか……。
「よし……準備次第、突入だ!」
「分かりましたわ!」
一応、レティシアの能力をチェックだ。
〔名前:レティシア 種族:人〕
〔レベル:30〕
〔ギルドレベル:7〕
〔H P:739〕
〔その他:閲覧権限がありません〕
え? レティシアもいつの間にか、レベルが30になってる!
「凄いな、レティシア! もうレベル30なんだ!?」
「え! そうなんですか!? 自分では確認しておりませんでしたわ」
「え……一人の時とか確認しないの?」
「一人の時は、いつも蓮斗さんの事を思いながら……」
「こ、む、す、め!」
「はぅ…………何でも有りませんわ!」
「レーちゃん、また怒られたー!」
「くぅ……」
何だよ一体……。
それにしても、魔法じゃなくても良いんだけど、必殺技みたいに強いスキルが欲しいな……。
「ねぇ皆、スキルって教えて貰う事って出来ないの?」
「出来ますわよ?」
えー! マジか……。
「レティシアの剣技とか?」
「はい! 私程度の剣技で良ければ、喜んでお教え致しますわ!」
「頼むよ……」
こんな事なら、早く思い付けば良かったわ。
「蓮斗様、あたいのも教えようか?」
え!? 憧れの二刀流!? 短剣だけど。
「頼むよ!」
「いいよ! レーちゃんの時よりテンション高いね! 嬉しいなぁ!」
何て事を言うんですか!
「そんな事無いよ! どちらも覚えたいんだ!」
「ちぇっ、そうかー。ちょっぴり残念」
な、何とか収まったか?
「さぁ、行こう!」
イーメの遺跡に突入だ!
そう言えば、クリスは重力魔法が使えるって言ってたな……忘れてた。
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