第37話 続・女の戦い

 ついにイーメの遺跡まで後一歩、と言う所まで辿り着いた。


「今日はここで野営して、明日は遺跡の調査だな」

「そうですわね……」

「どうしたの?」

「いえ、何でも有りませんわ!」


 どうしたんだろ? 少し野暮かも知れないけど……。


「悩みが有るなら、打ち明けて欲しいな……」

「蓮斗さん!」

「何だい?」

「わ、わ、わ……」

「わ?」

「私を正妻にしてください!」


 えー……悩みって、そっちなの……。


「ごめん、まだ結婚とか考えて無くて……」

「レーちゃん、振られた?」

「振られたのう」

「そ、そんな…………うっうっうっ……」

「え、いや! 振ってない! まだ結婚自体を考えてないだけで……」

「そ、そうですわよね!」


 危ない……何か非常に危なかったと思うぞ。


 さて、テントを……あれ?

 話している間に、テントが出来ている……?


「テントは誰が?」

「テント? あぁ天幕なら、あたいが張ったよ!」

「ヴァージュか、ありがと!」

「お安いご用だよ、蓮斗様!」


 ヴァージュのやつ、何で急にテントを張ったんだ?

 まぁいいか……今日のご飯はなにかな?

 

「蓮斗、出来たのじゃ」


 そう、今日の夕食当番はクリスちゃん。

 遂にクリスちゃんの手料理を食べれる!


「では、いっただっきまーす!」


 んぐんぐ……これは…………。


「うっ……」

「わぁ……」


 レティシアとヴァージュが倒れる……。


「お主ら、どうしたのじゃ?」


 ヤバい……吐きそうだ……何と言う味……。しかし、絶対に吐かないぞ……うぉ……。


「蓮斗、どうじゃ?」

「う、うん……お、美味しい……よ!」

「そうか! では儂も……」


 クリスは食べ物?を口に入れたまま、固まってしまった。


「蓮斗……気を遣わず不味いと言うのじゃ!」

「だって……」

「酒で消毒じゃー!」


 結局、今日の夕食はパンだけになった。

 暫く酒の席に付き合う。


「だーかーらー! 蓮斗さんは誰が一番好きなんで、す、かー?」

「あたいだよねー?」


 えー……皆さん酔っ払い過ぎ……。


「愚か者! 蓮斗、儂じゃよな?」


 はい、クリスさん……って、この場で答えれないよ。でも嬉しい、えへへ。


「あの皆さん、そろそろ寝ませんか?」

「え? はい! 優しくお願いしますわ!」


 ……ん?


「この発情小娘が!」

「わーい、レーちゃん怒られたー!」


 さ……もう寝よう。俺達はテントの中に入り、結界アイテムを使った。


「蓮斗様はコッチね!」

「ずるいですわ、ヴァージュ!」

「そうじゃぞ、何故お主が仕切る!」

「ふっふっふーん。光の精霊よ、我を守りたまえ! 小型結界、光の方陣!」


 俺とヴァージュは、光の立方体に包まれた。


「さぁ蓮斗様、今日は寝かせないよー!」

 

 えー……そこまでする!?


「何て事ですの!」

「甘いわ、小娘! 闇の精霊よ、の障壁を崩せ! 結界解除魔法、壁散魔断!」


 俺とヴァージュを包んでいた光は、粉々に砕け散ってしまった。


「あらら、解けちゃった」

「やりましたわ!」

「一人占めしようとするからじゃ」

「え……クリス、それって……」

「良いからもう寝るのじゃ!」


 そして、ようやく就寝。

 ヴァージュ、股を枕にするのは止めて……。


 朝日がテント内を明るく照らす。

 ん……んん!?


「おはよー、そして、ご馳走様ー!」


 口唇に柔らかい感触が残る……。


「こ、こ、小娘!」

「なーにー?」

「儂の目の前で、何をしてるのじゃ!!」

「挨拶だよ?」


 いやいや、有り得ないでしょ……。


「あ、お早う御座います、蓮斗さん」

「おはよ、レティシア」


 危ねー。見られてたら……怖っ。

 気を取り直して、出発前の準備……ログインボーナスっと。


〔日課特典:スキルゲッター〕

〔スキルゲッターを獲得しました〕


 目の前に、サイコロの様な箱が現れた。

 それにしても、なんてネーミングセンスの欠片も無いアイテム名なんだ!

 一応、鑑定……。


〔鑑定に成功しました〕

〔スキルゲッター:ランダムでスキルを手に入れる〕


 ……そのまんまか。当然、使うよね?

 使うとサイコロの様な箱が転がり、5の目で止まった。本当にサイコロだったのか……。


〔スキル:弓技、五射必中を獲得しました〕


 ……ゆーみー! 意味ねー……。

 そろそろ、出発しようかな。


「レティシア、そろそろ行こうか?」

「はい!」


 さぁ、ラストスパートだ。

 小一時間ほど歩いただろうか、魔犬が一体現れた。


「あれ? 大きい魔犬だ……小型犬の取り巻きが居ない?」

「額に魔石が付いてますわ!」


 て事は、魔術結社絡みか……。


「レティシア、ちょっと一人で戦わせてくれ。自分の力を試したいんだ」

「分かりましたわ。少しでも危険だと感じたら、加勢を致しますわよ?」

「あぁ、頼むよ」


 さぁ……先ずは防御に徹しよう。

 魔犬は、早い速度で攻撃を仕掛けて来る……いや、仕掛けている筈だが……遅く感じる。

 何か、ダメージを喰らう気がしない。

 次は、こちらから攻撃を仕掛ける。

 一刀両断……魔犬はあっさりと分断されてしまった。


「凄いですわ、蓮斗さん!」

「自分でも驚いてるよ……」

「強くなったのう」

「あぁ!」


 間違いない……実感は無いけど、確実にレベルアップしてる!

 自分の中で、もっともっとレベルを上げたいと思った。特に意味は無く漠然とね。


 そして、遂にイーメの遺跡を視界に捉えた。

 さぁ、調査だ!




 テント内は、魔法禁止!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る