第36話 チート能力

 ガバードがニヤニヤと笑いながら、ゆっくりと近付いてくる。

 もう駄目なのか……。


「焦ったが、ここまでだな! さぁ、俺の経験値になるがいい!」

「くそっ……ここまでか!」


 次の瞬間、ガバードは血を吐き、前のめりに倒れた。


「誰……だ……きさ……ま……」


 そこには、両手に短剣を持った女の子が立っていた。


「やっほー! 蓮斗様!」

「ヴァージュ!」


 本気で忘れてたわ……。


「強かったね! クーちゃんも凄い召喚魔法だったねー!」

「まったく……この小娘は……」

「ここぞって場面で出た方が良いかなーっと思って!」


 兎に角、超助かったよ……。

 今回だけは、呪われて良かったと思うわ。


「れ、蓮斗さん……」

「レティシア、大丈夫か! これを飲んで!」


 レティシアにヒーリングポーションを渡す。


「……少し、楽になりましたわ」

「良かった……」

「レーちゃん、大丈夫?」

「えぇ……まさか貴女に助けて貰うとは……」


 夜も遅かったので、教会を出て近くの場所でテント設営、即、就寝となった。

 流石にあの教会で寝るのは嫌だと言う事で。


 翌朝、村に戻って村長を訪ねた。

 偶然、教会の魔物と遭遇して倒した、って事で報告。

 村長は土下座をしながら、感謝と謝罪をしてきた。俺も同じ立場だったら、あの時の村長の言動も分かる。

 せめて昼食だけでもって事で、昼食を食べてから出発となった。

 それまでは暇なので、各自、自由行動だ。


「私は少し休憩しておりますわ」

「あたいは……影に居るね!」


 結局、何もしないんだ……。

 俺は、ログインボーナスとか確認だ。


〔日課特典:時を刻む物〕

〔時を刻む物を獲得しました〕


 これって……。


〔鑑定に成功しました〕

〔魔刻の腕輪を獲得しました〕


 んー……どう見ても時計だな。

 今は十一時か……便利だな、普通に。

 ガバードからは、ドロップアイテムは無かった。所謂、ドラゴンブレスで吹き飛んでしまったのだろうか?

 んじゃ、レベル確認……。


〔レベル:48〕

〔ギルドレベル:8〕

〔能力値:一部閲覧権限がありません〕

〔H P:1892〕

〔M P: 136〕

〔攻撃力:423〕

〔防御力:358(+10)〕

〔魔 法:なし〕

〔法 力:なし〕

〔スキル:知識剣との絆〕

〔スキル:罪悪感緩和〕

〔スキル:パリイ=LV8〕

〔スキル:看破術=LV2〕

〔スキル:鑑定術=LV1〕

〔スキル:縮地術=LV8〕

〔スキル:転生者の記憶〕

〔スキル:経験値上昇〕

〔熟練度:剣技=LV10〕


 …………。


「はぁ!?」

「どうしたんじゃ!」

「どうされたのですか?」

「どーしたのー?」


 皆さん、ごめんなさい。

 声に出てしまいました。


「いや、レベルが……48に……」

「何じゃと!」

「流石、蓮斗さん! 凄いですわ!」

「蓮斗様、凄いね!」


 ちょっと、上がり過ぎじゃない?

 それに何だ……この転生者の記憶って。経験値上昇は、そのままかな? スキルを鑑定だ。


〔鑑定に成功しました〕

〔転生者の記憶:転生者を倒すと、その者のスキルをランダムで得られる〕

〔経験値上昇:取得経験値が十倍となり、既存の経験値も十倍になる〕


 キター!! これって、チート能力を奪取したって事? これが俺のチート能力か!

 能力取得の方法は辛いけど、かなり強力な能力だ! 神様、ありがとう!


「何か、嬉しそうじゃの?」

「そうかなぁ? えへへ……」


 自分でも、顔が緩んでいるのが分かるわ。


「何じゃと!!」


 珍しい……クリスが突然叫ぶなんて。


「どうしたの?」

「回帰術がレベル5じゃ!」


 何だって! 天使クリスちゃんと一日五時間も逢えるって事か!?


「おめでと、クリス!」

「うむ! 朝食と昼食に一時間、夕食からの酒盛りに三時間も使えるのじゃ!」

「よ、良かったね、クリス!」


 変身の基準は、ご飯とお酒ですか……?


「何じゃ……蓮斗は儂に会いたくないのかの?」

「逢いたいに決まってるよ! 毎日ベタベタしたいよっ!」

「え? あ……ん、まぁ……それなら良いのじゃ……」

「あたいもー!」


 ヴァージュ、話がややこしくなるから参加しないでくれ……。レティシアが寝てて助かった。


 昼食を済ませ、村長とのお礼の言い合いが終わり、調査地へ向かって出発する。


「あと山を二つ越える位かな?」

「そうですわね……」

「レティシア、体調は大丈夫?」

「お気遣い、有り難う御座います。身体は万全では有りませんが、夜伽くらいなら……」

「出たな、この発情小娘め!」

「夜伽ってなーにー?」

「この場合の夜伽とはの……」


 ヴァージュは興味津々だ。

 クリスさん、説明しなくて良いですよ?


「へー! レーちゃんって、意外とエッチなんだねー」

「そうなのじゃよ」

「な……何を説明してますの!」


 何か、これはこれで……平和で良いな。昨晩、死にかけたのが嘘みたいだ。


「そういやクリス、HPは回復したの?」

「儂が剣の状態じゃと……自動回復が働いておるのじゃ」

「そうなの!?」

「うむ……じゃから満タンじゃ!」


 良いなぁ……欲しいなぁ……。


「あー!」


 突然、ヴァージュが叫ぶ……影から声だけ聞こえてるから焦るわー。


「失敗した!」

「何がですの?」

「折角、教会に居たのに……」


 え? どう言う事?


「蓮斗様と結婚を誓えば良かった!」

「な、なんですって!?」


 何故、そうなった?


「レーちゃんも、クーちゃんも一緒に誓えば良かったねー!」


 はぁ!? 何を言っちゃってるの、この子?


「それも……有りですわね……」

「レティシアまで何を……」

「あたい、正妻ー!」

「それは譲れませんわ!」


 ん? ちょ、ちょっと待った!?


「まさか、この世界って結婚は同時に出来るの?」

「えぇ。一夫多妻制、重婚可能ですわ。蓮斗さんの以前の世界は……?」

「一夫一妻だね……」

「そうなんだ! 蓮斗様、この世界に居た方が良いんじゃない? 駄目でも付いて行くけどね!」

「わ、私が付いて行きますわ!」


 色々と考えちゃうな……。


「お主ら、蓮斗が帰る方法も分からぬ状況で、良くそこまで話せるのう?」


 その通りだ。クリスちゃん大正解。

 でも、重婚かぁ……ハーレム的な? えへへ。


「蓮斗、顔!」

「あ、ごめん……」


 斯くして、チートっぽい能力を手に入れた俺は、仲間と共に調査地を目指す。




 この世界は重婚出来るんだ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る