第39話 遺跡への突入戦

 入口……ここで殺される映画とか有ったなぁ……用心しよう。

 俺とレティシアは、入口の左右に別れて内部をゆっくりと覗いてみる。

 目立った物も見えなく、お互いに頷いて中に入る……。


 真っ暗で何も見えない。暗闇に目を慣らす為、少し待機……。 


 ……少しすると、大分見えてきた。

 レティシアに頷き、合図を送る。

 ゆっくりと前に進む……長い長い直線……少し先に開けているのが見える。

 広間の入口前で止まり、恐る恐る中を覗き込むと、フードを深く被りローブを着た者が二人、大きな扉を守る様に立っていた。

 先ず看破か。


〔名前:ラーニャ 種族:人〕

〔レベル:12〕

〔H P:309〕

〔その他:閲覧権限がありません〕


〔名前:サイ 種族:人〕

〔レベル:10〕

〔H P:289〕

〔その他:閲覧権限がありません〕


 人間か……。

 俺はレティシアに待機する様、手の平を動かし合図する。

 

「……うぐっ……」


 縮地術、口を抑え一撃……二回繰り返して、沈黙に成功。

 そして、小声でクリスに辺りの確認。


「気配は無いようじゃ……」


 さて……扉を開けると、嫌でも敵に気付かれるな。


「俺が扉を開けるから、レティシアは中の確認を」

「任せて下さい」


 俺はゆっくりと扉を開ける……重い。

 中から呪文の様な声が聞こえる……これは、結構な人数っぽいな。

 隙間からレティシアが覗く……。


「蓮斗さん、相手は気付いて無い様ですわ……」


 俺も中を覗き込む。

 奥に祭壇が有り、一人の魔術師らしき者が両手を上げ、祈りを捧げてる感じだ。

 その後ろにも二十人くらいの魔術師が、祭壇に向かって祈りを捧げている。

 つまり、こちらを背にしている訳だが……。


「いきなり後ろから虐殺とか、ちょっと厳しいな……」

「声を掛けて、全員を同時に相手にするのかの? 流石に厳しいと思うのじゃが?」


 ですよねー。

 要らない心配だった。相手は完全に気付いており、全員揃ってコチラを向いた……あちゃー。

 一番奥の高い所に居る、偉そうな奴が声を掛けてきた。


「大蛇を倒した連中か……何しに来た?」


 お、話が出来る! いきなり戦闘だと思ってたわ。


「お前達の目的は何だ? 魔物を強化してどうするつもりだ?」

「……お前、馬鹿だな? 目的を聞かれて、簡単に答える奴が居るか?」


 ……ごもっともです。質問を変えよう。


「ここにギルドメンバーが来た筈だ、そいつらをどうした?」

「安心しろ、私達の力となったわ!」


 どう言う事? 食べた? まさかね……。


「お前達、ギルドの犬か。どうせ死ぬのだから教えてやる。私達は人族を削減するのだ」


 お、教えくれた!


「先ずはお前達の様な、ギルドの連中からな!」

 

 一番奥の男が両手を挙げると、周りの魔術師達が悲鳴を上げて倒れていく。

 倒れた魔術師達の額の辺りから、魔石が浮き出し放出される。

 二十個以上の魔石は、祭壇の前へ飛んで行き、一番偉そうな魔術師の体の中へと埋め込まれていった。


「吸収した!?」

「ふははっ! また強くなったわ!」


 あいつ、人間か!?


〔名前:ザイア 種族:人〕

〔レベル:5〕

〔H P:192〕

〔その他:閲覧権限がありません〕


 え……何それ……レベルが低い?


「喰らえっ!」


 魔術師が杖を構えると、杖から閃光がほとばしる。


「ぐおっ……!?」


 い、痛い……何だ? HPが400以上減ってる!? レベルが低いのに、この威力は……これも魔術強化?


「クリス、重力魔法は……?」

「一日一回じゃ」

「じゃ、遅延魔法で!」

「承知じゃ!」

「レティシアは俺と攻撃を!」


 攻撃魔法が強いって言ったって、あのHPだからな! 瞬殺で終わらせる!


「遅延魔法は失敗じゃ!」


 くそっ、レジストしたか!?

 でも、縮地術には対応出来ない筈!

 俺が二回斬り付け、レティシアが三回の連続攻撃を当てた。


〔名前:ザイア 種族:人〕

〔レベル:5〕

〔H P:192〕

〔その他:閲覧権限がありません〕


「マジで!? HPが減ってない!」

「お前、HPが見れるのか……」


 しまった……思わず声に出てしまった。


「さぁ、我が僕達よ、我の力となれ!」


 魔術師が叫ぶと、何処からともなく魔術師達が集まり、悲鳴を上げながら倒れていく。

 そしてまた、魔石が魔術師の中に入って行く。

 HPとかは変わっていない……もしかして見えないだけで、上がっているのか?


「たぁ!」


 レティシアが隙を付き、突っ込んで行く。


「剣技、廻陣炎舞!」

「ぐおっ……この女め!」


 あ、攻撃中は魔法が使えないよな!

 もう、破れかぶれだ!


「ヴァージュ! 全員で連続攻撃だ!」

「あいよー!」

「くっ、何処から!?」


 強いと言っても、魔術師は魔術師。俺達の攻撃に手も足も出ず、体勢も維持出来ない。


「ぐぉ……お前ら!」


 その時、一瞬の隙を突いて離脱されてしまった。


「はぁ、はぁ……お前ら許さん!」


 あ、残りHP89! もう一押しだ!


「何を手子摺ってんだ、ザイア!」


 誰だ?

 祭壇の上から一人の男が飛び降りてきた。


「ギルドの人間如きで、まったく……」


 ん? 人間って言った?


「も、申し訳御座いません!」

「もうお前は用済みだ……消えろ!」


 魔術師は悲鳴を上げて倒れる。またしても魔石が浮き上がる…… 男は魔石に向かい、金属製の棍棒の様な物をかざすと、魔石は棍棒の中に吸い込まれてしまった。


「さて、お前らにも消えて貰うか……」


 消されたくないし。取り敢えず看破……。


〔名前:ユドック 種族:人〕

〔称号:転移せし者〕

〔レベル:51〕

〔能力値:一部閲覧権限がありません〕

〔H P:2657〕


「な、転移者!?」

「ほう……看破術を使えるのか。ま、何者が来ても、俺とバローラのコンビには勝てないけどな。そもそも、転移者に普通の人間が敵う筈がないだろ?」


 転移者が通常の人間より強いのは常識なのか……。

 あれ? あいつ、看破術が使えない?


「転移者と転移者なら、どうじゃろうな?」

「け、剣が……お前、剣の転移者か!」

「だったら何だよ!」

「ラッキーだぜ! メイスと剣、相性的に俺の方に分があるな!」


 そうか……武器の相性か。確かにメイスの方が強固なイメージだ。


「さあ! パーティーを始めようぜ! 行くぞ、バローラ!」

「イエス、マイマスター」


 悪の転移者か……何とか倒さないと!




 最近、強くなったと思うけど、更に強い敵とか勘弁して……。

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