第30話 プレゼント

 街に入った俺達は、ギルド会館を目指す。

 親切な事に、街の入口に掲示板が有り、地図が掲示されていた。

 お陰で迷う事は無さそうだ。

 それにしても、凄い人混みだな。


「さっき地図を見て、思ったんだけど……」

「何ですの?」

「この街ってさ……門から見たら、気持ちが悪いくらい左右対称なんだよね。シンメトリーってやつ?」

「シン何とか、と言うのは分かりませんが、確かにそうですわね……」


 この街の中心にも噴水広場が有る。この世界では、一般的な事なんだろうか?

 因みにギルド会館は、門から噴水を挟んで奥側になる。

 噴水が無ければ、一直線で行けるんだけどな……。


「着きましたわね」

「入ろっか」


 扉を開け中に入……開かない。

 え? お休み? んな訳無いか……?

 少し離れて、壁伝いに歩いて調べてみるが、壁は壁だ……やっぱり入口は、最初の扉しかないなぁ。

 その時、さっきの扉から人が出て行った。


「あれ?」


 直ぐ扉に戻り、開けようとするが……開かない。


「兄ちゃん、早くしてくれねぇかな!」


 もたつく俺達に、男に後ろから声を掛けられる。


「あ、すみません。お先にどうぞ」

「ありがとよ!」


 後ろからきた男達は、身分証を扉にかざす。すると、扉は自動的に開いた。

 そう言う方法か。俺達も同じ様に扉に身分証をかざし、中に入る事が出来た。


「都会だね……」

「そうですわね……」


 ちょっと、カルチャーショック的な。

 会館の中は……受付カウンター、飲み屋、道具屋……? 基本は変わらないな。

 先ずは、カウンターだ。


「あの、シウオの町から、呼ばれて来たんですけど?」

「あー、お待ちしておりました。奥の応接室までどうぞ」


 ここも奥に部屋が有るのか……。


「待っておったぞ、シウオの者達よ。まぁ、座ってくれ!」

「はい……」


 謎のおっさんが、煙草に火をつけながら話し出す。


「俺はギルドのサブマスター、バルダーだ」

「蓮斗です。こちらがレティシア。この剣がクリスです」

「おう! 宜しくな!」

「宜しくお願いします」

「早速だが、この後に検査を受けてもらう。場合に依っては、ギルドレベルの再付与をする」


 再付与? ギルドレベルが上がる可能性が有るのかな?


「そして、聞いてるとは思うが……魔術結社の調査に行ってもらう」

「俺達だけで、ですか?」

「今回はそうなる。だが、先発隊が何組か出発済みだ。現地で合流して、指示を貰ってくれ」

「分かりました」

「何か質問は有るか?」

「いや、特に無いです」

「よし、じゃあ検査だ!」


 前も思ったんだけど、検査って自分の中身を見られてるせいか、何か恥ずかしいんだよね。


「よし、結果は連絡するから、酒場で時間でも潰しててくれ」


 俺達は頷き、応接室を後にする。


「レティシア、お昼食べよっか?」

「そうですわね、私もお腹が空きましたわ」

「クリスは?」

「儂は晩に食すかの」

「りょーかい」


 さて、結果が出るまでに食べちゃうか。


「何にしようかな? ……いっつもだけど……メニュー見ても、殆ど分からん」

「蓮斗さん、ここは精力をつけましょう」

「発情小娘! 普通、精をつけるじゃろ!」

「は……本音が……」


 おいおい……。


「蓮斗さん、ウカリュード焼き物なんて、どうですか?」


 う……うか……何て? さっぱり分からん。


「それで良いよ」

「はい! 店員さーん! ウカリュードの焼き物セット二人前、お願いしますわ!」

「あいよ!」


 さて、何が出てくるやら……。

 ウエイトレスが、次々と料理を運んでくる。

 サラダ、スープ、パン……そして……これはステーキだ!


「旨そう!」

「ですわね!」

 

 これでパンがライスだったら、完璧だったな……って、早く食べてしまおう。

 

「蓮斗さーん、クリスさーん、レティシアさーん」


 お、呼び出しだ。急いでカウンターに向かい、そのまま応接室に行く。


「待たせたな。ギルドレベルだが……」

「はい……」

「蓮斗、クリス両名は、ギルドレベル8とする。レティシアは、ギルドレベル7とする。異存は無いか?」

「有りませんわ!」

「え、良いの? レティシア?」

「実力値で考えましたら、当然かと思いますわ」

「そうか……であれば、俺も構いません」

「まぁ……異存が有っても、変えられないがな」


 じゃあ、聞くなよな……。

 そのまま、調査依頼の内容を聞いた。

 北の山中に、イーメの遺跡と言うのが有り、そこがどうやらアジトの様だ。

 そこに向かい、調査を開始する。

 遭遇して戦闘になった場合は、殺生も辞さないとの事だ。

 今日のところは、準備、休養に充て、明朝出発してくれ……だって。

 

「では、失礼します」

「ああ、頼んだぞ!」


 準備か……道具屋に寄って、その後に武器屋かな?

 先ず、道具屋で適当に買い物をして会館を出る。


「レティシアの武器を買いに行かない?」

「そうですわね」


 さて、武器屋……


「こ、これは……良い剣ですわ!」

「どれどれ、魔法の剣じゃん!」


 流石、都会だな!


「えーと……金貨9枚!?」


 て事は……約九十万円!? あ……レティシア払ってるわ……。


「高いね……」

「魔法の剣ですから、仕方がないですわ。お陰で、お金が無くなってしまいましたわ」


 おー……使いきった訳じゃ……無いよね?

 

 暫く店を回ってみたが、他に目ぼしい物も無かったので、少し早目に夕食となった。

 取り敢えず、酒場か……お酒飲めないけど。


 着いた酒場は、朝日を望む亭……朝までやってるのか?

 席に着くと、もうクリスが人化していた。


「いつの間に……」

「店に入ると同時じゃが?」

「さいですか……」


 ウエイトレスさんに、一通り注文する。

 突然、レティシアが立ち上がり……。


「どうしたの?」

「ちょっと、お花を摘みに……」

「へ? はい……」


 何だ……突然?


「御手洗じゃ……」

「あ、そうなの?」

「いつも、発情発言しとる癖に……」


 ふーん……あ、そんな事よりチャンスだ。


「クリス、この前に手に入れた物、貰ってくれないかな?」

「何じゃ、改まって」


 俺は転移者の首飾りを、クリスに付けてあげた。渡そうかと思ったんだけど、スキンシップは必要だ…………いや、近付きたいだけです……。


「思った通り! すっごい似合ってる!」

「そ、そうかの……?」

「あぁ! 凄く可愛い!」

「わ、儂が……か、かわ……」


 俺はウンウンと頷いて、クリスを見ると……耳が真っ赤!

 何この可愛い過ぎる子!?

 そして、一応、アイテムの効果を説明する。


「蓮斗……あ……り…………ぅ」


 クリスは俯きながら、答えていた。

 そこにレティシアが帰ってくる……直ぐにクリスの首飾りに気付いた……やば……。


「わ、わ、わ……」


 げ……怒りつつ泣きそうだ……。


「小娘、これは転移者の首飾りと言ってな、儂か蓮斗しか付けれないのじゃ。男が付けるには派手じゃから、儂が貰ったのじゃ」

「そ、そうでしたの!」


 クリスか俺しか付けれない、ってのは嘘だけど、庇ってくれたんだな……クリス。

 それにしても、レティシアもよく納得したな……。


「では、宴じゃ!」

「そうですわね!」


 こうして俺は難を逃れ、夕食にありつけた。


 

 

 クリスって意外と空気読めるんだな。

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