第25話 静かなる女の戦い
消えた山賊……魔術が何か関係しているのは、間違いないと思うんだけど……。
ボスを倒すと全部消える? そんな事が……?
謎は深まるばかりだ。
「二人とも、どう思う?」
「私は……蓮斗さんをお慕い申しております……」
…………ん?
「この馬鹿小娘! さっきの山賊の話じゃ!」
「え? あ! きゃっ!」
えー……でも、嬉しい……えへへ。
「馬鹿小娘は放っておくのじゃ。儂は……やはり魔術じゃと思うの」
「やっぱり、そう思うのが自然だよね」
レティシアの方を見ると……耳を真っ赤にして俯きながら、独り言をぶつぶつと呟いていた。
こりゃあ……暫く駄目だな……。
「蓮斗、つけられておるぞ」
突然、クリスが小声で教えてくれた。 それとなく後ろを確認するが、全然分からん。
「クリス、どの辺?」
「後方、約百メートルじゃ」
百メートルか……少し遠いな。それにしても、よく気付いたなぁ。
「二人で内緒話かしら?」
突然、レティシアが大きい声で聞いてきた。
「む……気付かれた様じゃ」
「え! 近付いてる?」
「逆じゃ。逃げたかの?」
これって、やっぱりレティシアの声せい?
「この馬鹿小娘のせいじゃな」
「どう言う事かしら!?」
レティシアに、つけられていた事を説明すると、ひたすら謝ってきた。
「本当に、ご免なさい……」
「そんなに謝らなくても良いよ、レティシア」
「ですが……」
「そうじゃの、もう少し気を引き締めなくては駄目じゃの」
「くっ……」
「まぁまぁ、クリス……」
大変だよこれ……。
更に数時間進む。すると、クリスが何かに気付いた。
「また、つけられておるぞ。小娘、大声を出してはならぬぞ」
「分かってるわよ……」
俺達は、後ろにいるであろう追跡者を捕まえる為、歩きながら作戦を何パターンか考えた。
「どのパターンにする?」
「私は、この方法が確実かと思いますわ」
「そうだよね……」
「不本意じゃが、良いじゃろう」
さて、作戦実行! 上手く行けば良いな。
俺達は一旦休憩してから歩きだし、百メートルほど進んだ頃……
「うわー!」
「止まるのじゃ!」
「うぅ……」
見事、天使クリスちゃんが捕獲に成功。
どうやって捕まえたって? 方法はこうだ。
この辺は獣道になっていて、道の直ぐ横は、そこそこ背の高い雑草が生えまくっている状態。そこで、一旦休憩を装い、さりげなくクリスの剣を雑草の中に置いておく。後続者が来たところを、クリスが捕獲するって単純な方法。
見事に引っ掛かったけどね。
俺達が現場に到着すると、捕まっていたのは子供だった。
時間が勿体ないとの事で、クリスは早々に剣に戻る。
「えっ! 剣!?」
慌てる子供。大丈夫、皆そう言う反応だよって言ってあげたい。
「さて、どうして追いかけて来たのかな?」
俺が優しく話しかける…………無視かよ……。
「ぼく、どうして付いて来たの?」
「お腹が空いてたから……」
「そうか、そうか」
相槌を打ちながら、子供の頭を撫でた。
レティシアは、子供の扱いが上手いな。将来はきっと良いお嫁さんになるだろう。
うん、そうだ、そうに違いない!
「ぼく、これ食べる?」
「食べる!」
レティシアは、子供にパンを与えると、子供はパンを口一杯に頬張り、無我夢中で食べていた。
「食べながらで良いから、聞いて貰えるかしら?」
レティシアが話しかけると、首を縦に振りながらパンを食べ続ける。
「迷子なのかしら?」
パンを咥えたまま、横に顔を振る。
「じゃあ、家出かしら?」
今度は首を縦に振った! 凄いな!
パンを飲み込むと、喉が詰まってる様に見えた。水筒を差し出すと、すぐ奪われて一気に飲み始めた。
「ふぅ……」
「落ち着いたかしら?」
「うん……」
そうかぁ、落ち着いたか……水のお礼は聞いてないけどね!
「どうして、家出をしたのかしら?」
「辛いし、ご飯も食べれないから……」
辛い? 何で?
「もしかして、ぼく……背中を見せて貰えないかしら?」
「……うん」
ちょっと、渋ったな……。
子供は後ろを向き、着ている服を捲った。
これは……?
「奴隷の焼印ですわ……何故、こんな小さな子が……」
奴隷か……この世界には存在するんだな。
背中に焼印をするのは、自ら視認が出来ない状態にする事で、痕を消す行為や、消したかどうかの確認をしづらくする為だそうだ。
「ご主人様から逃げたい……」
本当に、切実な願いなんだろう。
あれ? 俺のイメージだと、焼印に魔力か何かが込められてて、裏切ったり、逃げたりしたら、罰みたいなのを喰らう……みたいな感じなんだけど……?
「焼印って、特別な効果とかあるの?」
「いえ、焼印には特別な効果ありませんわ……ただ……」
「ただ?」
「奴隷用の束縛アイテムが、存在しますわ……」
この子には、それらしい物は付いて無かった。
「ぼく、何か付けられた物とか……?」
「これ……」
そう言うと、袖を捲って腕輪を見せてきた。
腕輪には、魔法陣が彫られていた。
「これは何だ?」
「奴隷用のアイテムじゃな」
突然、腕輪の魔法陣が輝きだし、魔法陣からローブを着た男が現れた。
人が消えたり、現れたり、不思議な森だな。
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