第13話 リラフェブの谷

 朝か……あ、頭が痛いっ。

 こ、これが二日酔いか……高校生で二日酔いって、家だったら怒られるか呆れられるかな。

 今日は休みにして寝よう……


「起きよ! 蓮斗!」

「あと五分…………」

「何を言ってるのじゃ! ギルドの調査が有るじゃろ!」


 そうだった……眠たい目を擦り、無理矢理起き上がる。


「頭痛い……けど、頑張ろう!」

「う、うむ……」


 さて、まずはログインボーナスだな。


〔日課特典:鑑定眼〕


 お、これは良いんじゃないか?


〔スキル:鑑定術を獲得しました〕


 よし、早速試そう。

 魔袋の中を確認だな……あ、先立つ箱ちゃん……忘れてた。今はお金に困って無いし、貯金しておこう。他には……あ、あった。


〔短剣(?)〕


 町に着く前に、ゴブリンから手に入れたやつだ。では、早速…………


〔鑑定に成功しました〕

〔刃こぼれした短剣を獲得しました〕


 おー出来た! けど要らないな。ゴミ箱に入れるのも何だし、魔袋に入れとくか。


「よし、準備オーケー。行こうか?」

「だの」

「の前に、噴水広場の所でパンを買っていくわ」


 朝食はしっかり摂らないとね!


「儂の分も買って、魔袋に入れとくのじや」

「え? 腐らない?」

「魔袋の中は、時の流れがほぼ無いのじゃ。依って腐る事は無いのじゃ」

「へぇ、便利だね」


 噴水広場の売店でパンを購入し、いざ、リラフェブ谷へ!

 って、普通に話してたけど、パンはパンで良いんだな。


 途中、数体のゴブリンを倒したが、他にこれと言った事もなく、ひたすら歩いていた……数時間って言ってたけど、もう二時間は越えている。

 あと一時間くらい掛かるのだろうか。


「クリス、しりとりでもしない?」

「なんじゃ、その破廉恥な言葉は?」

「え、あぁ。しりとりってのは、物の名前の尻……最後の文字を繋げて、交互に物の名前言い合うゲームだよ」

「名詞という事かの?」

「そんな感じ」

「まぁ、良いじゃろう」

「それじゃ、俺からね! んー……んじゃ、りんご!」

「りんごとは、何じゃ?」

「……名詞が違いすぎるから、止めよう……」

「そうじゃな」


 ちょうど話しが終わるのと同時に谷が見えてきた。この辺がリラフェブ谷だろうか?


「この辺を巡回だね」

「魔物の気配が無いの……」


 うわ、それはそれで時間が掛かりそうだ。


 リラフェブ谷は、いわゆる渓谷だった。川が流れており、川上の方を見ると滝があった。


「滝まで行って終わりにしようか?」

「構わんぞ」


 今、思ったけど、一人じゃなくて良かった。剣とは言えクリスは話してくれるし。何より一人でこんな場所の調査って、つまらないし寂しくなるよね。

 

 更に小一時間、歩きましたよ……何にも会わないし。

 

「滝に着いちゃったね」

「そうじゃな」


 これ、どう報告すれば良いんだろう? 困っていたら、クリスが何かを発見した様だ。


「蓮斗、滝を見るのじや!」


 うーん、マイナスイオン? 気持ちが良いな。クリスは剣になっても情緒豊かだなぁ。


「気持ちが良いね!」

「違う! 滝の中じゃ!」


 目を凝らすと、滝の中に奥へと続く道が見える。よく映画とかで見る洞窟の様なものだ。


「入る……?」

「当然じゃ」


 ですよねー。

 洞窟の入口っぽいのは、結構上の方にあった。


「どうやって行こうか?」

「ふむ……」

「お前ら、あそこに行きたいのか?」


 どうしようか悩んでいると、突然、割って話し掛けてきた。全く気配に気付かなかった俺は、すぐに剣を構えて声の主の方を見た。

 その姿は、小さな男の子だった。


「誰だ?」

「ふふふ……」


 ただ、笑みを浮かべる男の子。


「蓮斗、こやつは人では無い」

「え!?」

「へぇ……インテリジェンスソードか。数百年ぶりに見たな」


 数百年……男の子の容姿だけど何歳なんだろう?


「で、お前らはあそこに行きたいのか?」

「行きたいけど、君は何者なの?」

「知りたいの?」


 何だこいつ……少しイラっとするな。でも、うまく行けば連れて行ってくれそうだし……。


「知りたい」

「仕方がないから教えてあげよう!」


 ……ムカつくな。


「僕はね……この谷の主だよ。正確には精神体だけどね」


 え……さらっと凄い事言った?


「僕の力で連れて行ってあげるから、お願いを聞いてくれるかな?」


 うーん、聞くだけなら良いか……。


「お願いとは何じゃ?」


 クリスに取られた……。


「あの洞窟の中の一番奥に、僕の本体が封印されているんだ。その封印を解いて欲しいんだ」

「……何故、封印されたのじゃ?」

「悪い魔物達が、僕を邪魔に思ったんじゃないかな?」

「ふん、まぁ良いじゃろう」

「やった! 契約成立だね!」


 そう言うと俺達は浮かび上がり、滝の裏側までゆっくりと移動した。外から見えた通り、滝の裏側には洞窟の入口があった。




 俺、途中から話してない……。

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