第12話 宴と報酬

 やっとの思いで町に戻ってきた。

 残りHPは6……危なっ! クリスと二人で昇天するところだったわ…………二人で昇天?……えへへ……。


「蓮斗! いい加減にその気持ちの悪い笑みをやめんか!」


 あーなんだろ? クリスに気持ちが悪いとか言われると、超へこむわ……妄想しない様に気をつけよう。


「クリス、そろそろ日も暮れるから、ご飯食べに行ってくるわ……」

「くっくっくっ……」


 うわ、何か笑ってるよ。どうしちゃったのクリスちゃん?


「今日の分は別と言う事かの!」

「へ? 何が?」

「回帰術が使えるのじゃ! てっきり明日からかと思ったのじゃが、今日から使えるとは粋な能力じゃ!」


 それは……もの凄く嬉しい!

 あぁ、神様ありがとう!


「蓮斗! 宴じゃ!」

「う、宴!?」

「冗談じゃ。食べ飲み出来れば良い」


 そう言うと、クリスは少女に姿を変えた。

 クリスちゃんキター!


「あれ? いきなりゴスロリだ」

「前回、剣に戻る寸前のままって事じゃな」


 そうか、ちょっと残念。


「時間が無い、急ごう!」

「うむ」


 昨日の店は……止めよう。

 あの大男、ゾルクだったか? あいつが居たら面倒だし。

 と、なると噴水広場付近の店か。


「噴水広場へ行こう!」

「良いぞ。旨い食べ物と酒が有れば、何処でも構わんぞ?」


 俺達は噴水広場に繰り出した。

 周囲を歩いて店を探す。意外と売店ばかりで、レストラン的な店が見当たらない。

 少し噴水広場から離れた所に、それらしい店が見えてきた。

 おっ、あれは……ピザだ! ピッツァだ!

 急いでクリスの手を引き店に入る。

 これは何とも香ばしい! 店の中はチーズの香りで一杯であった。

 早々と席に着き、ウエイトレスを呼ぶ。

 ウエイトレスはメニューを持って来てくれた。

 メニューを見ると……ペラ? ピザの事か?


「えっと……これとこれを一個ずつ、お願いします」

「あと、このワインも良いじゃろか?」

「いいよ」


 …………ワインは、ワインなんだ。

 ちょいちょい日本と同じ名詞と、全く違う名詞と有るな。

 よし、待っている間にステータスを確認しとこ。


〔レベル:7〕

〔ギルドレベル:1〕

〔能力値:一部閲覧権限がありません〕

〔H P:268〕

〔攻撃力:55〕

〔防御力:49(+10)〕

〔魔 法:なし〕

〔スキル:知識剣との絆〕

〔スキル:罪悪感緩和〕

〔スキル:パリイ=LV4〕

〔スキル:看破=LV1〕

〔熟練度:剣技=LV3〕


「ええっ!!」

「どうしたのじゃ、大きな声を出しおって」


 大声を上げてしまい、周りの客に冷たい目で見られてしまった。


「いや、レベルが7になった……」

「良かったではないか。何ぞ不満か?」

「無いけど、びっくりしたから」

「うむ、確かに早すぎるのう」


 早すぎる……そう、早すぎると思う。

 もしかして、クリスがいるだけでチート状態になるって事か? 何にせよ結果オーライってやつだ。

 数値も急に高くなっているな……これが普通なのだろうか?

 まぁ何にせよ、あと一歩であいつに並ぶぞ!

 

 喜んでいると、料理が運ばれてきた。


「お待たせ致しました。トルサックーナとビーカイのペラと、ヒクリトイとドルンのペラ、そしてシウオワインでございます」


 ト、トル…………はぁ? 取り敢えずピザだけど、ドルンってあの猪か?


「おぉ! 旨そうじゃの! やるではないか蓮斗!」

「えっ? あ、そう?」


 誉められちゃった、えへへ。


「乾杯じゃ!」

「かんぱーい!」


 乾杯は、乾杯なんだね。

 そしてペラと言う物を口に入れて頬張る。これは美味しい! このワインも美味しいなー……って、ワイン!?

 気付いた時には遅かった。

 頭がグルグルグル…………俺はそのまま気を失った。


「……蓮斗! 大丈夫か?」


 気が付くと、噴水広場で横になっていた。


「うん……う、き、気持ち悪い……」

「すまんな、蓮斗が下戸じゃったとは……」

「俺も調子に乗って、飲んじゃったから」


 それにしても、頭部の感触が柔らかくて気持ちが良いな……


「あまり動くでない。まだ剣に戻るまで二十分ほど掛かる筈じゃから、それまで横になっておれ」

「うん。ありがと、クリス」


 あれ? これって憧れの……ひ、ざ、ま、く、ら!!


「ほれ、暴れるでない」


 クリスが膝枕で、俺の頭を撫でてくれてる……   

 あぁ、ありがとう仏様!

 

「蓮斗、そろそろ時間じゃ。一人で戻れるか?」

「うん、もう大丈夫。迷惑かけてゴメン」

「気にするでない。今日も旨くて満足じゃった」

「そうじゃ、金は懐から抜いて払っておいたからの」

「了解、ありがとう」


 話し終わると、クリスは剣に戻ってしまった。

 至福の二十分だった。

 俺はゆっくり起き上がり、頭部に残る感触を思い出しながら、クリスを携えて部屋へと戻った。




 今日は神様仏様に感謝!

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