第11話 レベリング

 思わぬライバルが出現だ。

 勝手に大男がクリスに惚れてる、って思っているだけだけども。

 せめて、あいつのレベルを抜かなきゃ未来は無い! あいつのレベルが幾つなのかが問題。

 ふっふっふ、実は去り際に看破を使ってみたんだよね。

 どれどれ……。


〔看破に成功しました〕


 おっしゃー!


〔名前:ゾルク 種族:人〕

〔レベル:8〕

〔ギルドレベル:3〕

〔その他:閲覧権限がありません〕


 これだけ? しかも端折ってない?

 まぁ、目的のレベルを見れたから良しとするか。

 レベル8か……高いな。

 この人を吹っ飛ばしたクリスのレベルって……恐ろしい……。

 ギルドレベルは無視だな。


「よし!」

「なんじゃ、唐突に」

「レベル10を、目指す!」

「ほ、ほう……急にどうしたのじゃ? まだ0から1になったばかりじゃと言うのに」

「見ててクリス! 俺は強くなる!」

「よく分からんのじゃが……強くなる分には儂も嬉しいぞ」


 心踊るって、この事だね! 魔物を倒しまくってレベルアップだ!

 ……で、魔物は何処に?


 結局、魔物の位置を知らない俺達はギルド会館に戻り、付近の狩り場を教えて貰った。

 折角ギルド会館に戻ったので、少し気になっていた事を確認した。

 他の依頼を同時に受けれるのかを。

 結論、依頼は一つしか駄目との事だ。

 これもギルド員の安全確保の為だそうだ。


 さぁ! 今度こそレベル上げだ!

 村から少し離れた森へ向かう事にした。


 この森か……静かだな。

 森の中に入って暫く歩いているのだが、何者にも遭遇する事なく穏やかな状態が続いていた。


「遠足みたいだなぁ」

「遠足とは何じゃ?」

「お弁当を持って、皆で楽しく森とかを散策する事だよ」

「お弁当とは何じゃ?」

「携帯するご飯の事かな?」

「ほぅ。興味深い」


 え……そうなんだ。

 この世界には、お弁当とか遠足って無いのか。

 かなり歩いただろうか、魔物どころか動物にも会わない。

 目の前には小さな川があり、一旦休憩となった。


「これ以上は進まぬ方が良いぞ。帰れなくなりそうじゃ」

「そうだね……この辺で少し見回ったら帰るか……」


 この森に魔物がいるって話だったけど、道を間違えたのかな?

 川の水を飲もうとした時、藪の方でカサカサと音がした。


「蓮斗! 構えるのじゃ!」

「おう!」


 藪の中から一匹の犬が出てきた。


「え、犬じゃん?」

「愚か者! あれは魔犬じゃ!」


 え、何それ? とは思ったのだが、確かに犬から異様なオーラがゆらゆらと見える。

 取り敢えず、看破だ!


〔看破に成功しました〕

〔名前:ジマルク 種族:魔犬〕

〔レベル:7〕

〔その他:閲覧権限がありません〕


 ……格上だよ……よく看破が成功したな。そういや、大男も格上だけど成功だった。

 俺は剣を構える……クリスで斬るのかぁ……嫌だな。


「何をしておる! 集中じゃ!」

「お、おう!」


 魔犬は此方に向かって走り込んで来る。

 目の前でジャンプし、俺に襲いかかってきた。

 あれ? 空中じゃ避けられないんじゃない?

 と言うより、動きがゆっくりに見える。


「蓮斗、斬るのじゃ!」


 クリスの魔法か! 空中の敵も遅くなるって、どんなチート魔法だよ。

 俺は魔犬の首を目掛け、一気に斬りつけた。

 魔犬の首は血飛沫と共に、胴体と切り離された……相変わらず気持ち悪い。


「ふぅ……ありがとう、クリス。魔犬のくせに弱いんだね」

「魔犬は通常、魔力が備わった武器以外では倒すのに時間が掛かるのじゃ。儂自身が魔法の剣じゃからの」

「そうなのか……」

「ところで蓮斗、まだ終わりでは無いようじゃ」

 

 先程の藪の中から、新たに魔犬が二匹現れた。


「うそん……」


 この後、倒しては現れ、倒しては現れで、結局二十匹ほど相手をする事になる。

 勘弁してくれよ……。


「はぁ、はぁ……終わったか?」

「残念じゃの、蓮斗。最後の一匹らしいぞ」

「まじかー……」


 何故、クリスが最後の一匹って言ったのか、現れた魔犬を見て納得した。

 でかい……顔まで二メートルくらい有るんじゃないだろうか……。

 HPのゲージバーは……残り二割ぐらいか……。


「すまぬ蓮斗、先程の魔法は使用できぬ」

「え?」


 聞き返した瞬間、俺は既に魔犬の一撃を食らっていた。まずい、HPが残り一割くらいまで削れてる。


「このまま、攻撃を受け流し続けるのじゃ! 後は儂が何とかする!」

「わかったよ!」


 俺はギリギリの状態で、魔犬の攻撃をを剣で受け流し続ける。


「我と契約せし炎の精よ。今再び我の元にて、その姿を現し我の力となれ……」


 何か唱えてるけど…………痛っ!また食らった! HPが一割を切ってる!?


「我が剣に宿りて、その業火で敵を討ち滅ぼせ……」

「クリス! もう駄目だ!」

「待たせたの! 魔犬よ、食らうが良い!」


 一瞬の出来事だった。

 クリスが叫ぶと同時に、剣先より巨大な炎の輪が発生した。魔犬に向かい飛んで行くと囲う様に縛りつけた。

 魔犬は絶叫しながら、炎と共に消え去ってしまった。

 

「危なかったの……」

「うん……ありがとう、クリス」

「蓮斗に死なれては困るからの」

「それって……?」

「儂も死んでしまうし、旨い酒が呑めなくなるじゃろ?」


 あ、そっちですか。

 ボロボロになった俺達は、周囲を警戒しながら帰路についた。




 ボロボロなのは俺達じゃなくて俺だけか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る