第10話 ギルドのお仕事

 クリスが剣に戻り、やっと稽古が終了した。


「はぁ、はぁ……」

「だらしないのう……」


 休憩も無しで、ずっと稽古って……パワハラかよ。


「毎日一時間、みっちり稽古をつけてやるからの、覚悟するのじゃ!」

「えー……」

「ぬ、何か文句でも有るのかの?」

「い、いや……」


 くっそー……早くレベルを上げて、このスパルタ地獄から抜け出してやる……。

 寝不足の上に激しい稽古……。

 クリスが何か言っていたが、俺はそのまま寝てしまった。


「蓮斗! いい加減に起きよ!」


 う、うーん……?


「やっと、お目覚めかの?」


 あ、そうだ……俺、寝てしまったのか……しかも芝生の上だし。

 あれ? ステータス新着?


〔日課特典:守護の指輪〕

〔守護の指輪を獲得しました〕


 空中に指輪が現れ、それを手で受け取った。

 銀色の指輪で、側面には文字装飾が施されていた。


「なんじゃ、その指輪は?」

「守護の指輪だって」


 そういや、何で今になって日課特典なんだ?

 もしかして、寝ないと駄目なのかな? 寝て、起きて、ログイン的な?

 徹夜はしないようにした方が良いかも知れない。

 早速、指輪を付けよ……どの指にしようかな?


「指で迷っておるのか?」

「ん、まぁね……」

「剣を持つ手と逆にするのじゃ」

「なんで?」

「痛いじゃろ? 儂が」


 あーなるほど。

 んじゃ左手の中指とか……お、ぴったりだ。

 ステータスは……。


〔H P:70〕

〔攻撃力:15〕

〔防御力:12(+10)〕


 しまった、元々のステータスを確認してなかったんだ……恐らくこの+10が指輪の分かな?

 ほぼ倍じゃん! 凄いなこの指輪!

 そういや稽古の成果は……。


〔熟練度:剣技=LV2〕


 おぉ! 1レベル上がった……先は長いな。


「どうじゃった?」

「うん、結構良かったよ」

「良かったとは、どういう事じゃ?」

「あ、ごめん。防御力が10上がったよ」

「少し死に難くなったの?」


 えー……そりゃそうだけど、そんな言い方無いでしょ。

 何にせよ、レベルが低いのは事実だ。

 折角、宿を提供して貰った事だし、この辺でレベルを上げないと。


「よし、レベルを上げに行くぞ!」

「やる気じゃの。良い事じゃ」


 当然! 早くクリスに並ぶんだ! いろんな意味でね!

 ただ、稽古で疲れてるんだよね……でも、俺頑張るよ、クリスの為に! えへへ……。


「またニヤニヤしおって、気持ち悪い奴よのう」


 超へこむわ……気持ちを切り替えて行こう……。

 さて、その辺でひたすら魔物退治か、ギルドの仕事をこなすか。

 

「ギルドに行かぬのか?」

「よし、ギルドに行こう!」


 即答です。クリスさんの意見ですからね!

 

 ギルド会館に到着。事務員さんに話し掛けると、所謂、初心者用クエストの依頼書を何枚見せてくれた。

 因みに掲示板にも依頼書が貼られていたが、初心者には扱えない物だった。

 依頼内容は全部で三つで、どれも報酬は銅貨だ。


〔薬草ジャリニア草の採集:銅貨二枚〕

〔ドルンの牙の収集:銅貨三枚〕

〔リラフェブ谷の調査:銅貨五枚〕


 薬草は……ま、何処かで摘んでくるだろう。

 ドルンは、あの猪を狩って牙を持ち帰るって事でしょ……谷の調査って何だ?


「すみません、この谷の調査って具体的には何でしょうか?」

「そちらは現地に行って、魔物の生態を調べるお仕事になります。この町に近いせいか、皆さんの危機感も無いので、誰も調べてくれないのが現状です」


 だから、少し報酬が高いのかな?


「クリス、この谷のにしようと思うんだけど?」

「良いのではないか? 未踏の地は好きじゃ」

「よし、このリラフェブ谷のをお願いします!」

「ありがとうございます。こちらとしても大変助かります。ここから数時間の位置にございますので、明日の出発が宜しいかと思います」

「わかりました。明日中に調査して報告します」

「宜しくお願い致します。遂行条件は、数種類の魔物が判明すれば大丈夫ですので」


 俺は礼を言い、ギルド会館を後にした。

 そうなると、中途半端な時間が余る事になるんだけど。


「よし、討伐じゃ!」


 そうだよね、でも何処に魔物が生息しているのか?


「その辺の人に聞いてみよう」


 すぐ近くに大柄な男がいたので、聞いてみる事にした。


「あの、すみません……」

「あ? あ! お前は昨日の!」


 うわ、クリスがぶっ飛ばした男だ……ついてないわー。


「し、失礼しましたー!」

「ちょ、ちょっと待て!」


 あっさり肩を掴まれ、捕まってしまった。


「な、何でしょうか……?」

「昨日の嬢ちゃんは、何処にいる!」

「ちょっと、今は……」


 クリス、頼むから今は喋るなよ。


「そうか、じゃあ伝えておいてくれ。今度、一緒に酒を呑もうってな! わっはっは!」


 え? どういう事?


「じゃあな、坊主!」


 一方的に喋って行ってしまった。

 なんだったんだ……。




 もしかして、クリスに惚れたのか!?

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